強誘電性液晶の構造と物性
著者が院生らと10数年間行ってきた研究成果を踏まえ,ネマティックから話を始めて,実際に実験を計画し,結果を解析するのに最低限必要な事項を,わかりやすく解説しようと試みられている。
- 発行年月日
- 1990/05/25
- 判型
- A5
- ページ数
- 462ページ
- ISBN
- 978-4-339-00558-5
- 内容紹介
- 目次
著者が院生らと10数年間行ってきた研究成果を踏まえ,ネマティックから話を始めて,実際に実験を計画し,結果を解析するのに最低限必要な事項を,わかりやすく解説しようと試みられている。
1. 序章:強誘電性液晶における双安定状態間のスイッチング
1.1 はじめに
1.2 ネマティック液晶とスメクティック液晶:N相,SA相およびSC相
1.3 TN型光バルブ
1.3.1 TN型とGH型光バルブ
1.3.2 マトリクス電極方式
1.3.3 能動マトリクス電極方式
1.3.4 STN(SB)型光バルブ
1.4 クラーク─ラーガーヴァル型強誘電性液晶光バルブ
1.4.1 強誘電性液晶
1.4.2 双安定状態間のスイッチング
引用・参考文献
2. 液晶の分類,構造および強誘電性
2.1 液晶の分類
2.1.1 S相の詳細な分類
2.1.2 命名小史
2.2 液晶の構造:X線回折
2.2.1 ボンド配向秩序とヘキサティック状態
2.2.2 S1相とSF相との違い:層内の6方晶格子と配向ベクトル(分子長軸)の傾く方向
2.2.3 矢筈模様構造
2.2.4 分子の会合とリエントラント現象
2.3 強誘電性液晶
2.3.1 対称性に基づくマイヤーの分子設計
2.3.2 圧電効果と分子の傾き
2.3.3 フレクソエレクトリック効果と螺旋構造
2.3.4 強誘電性であることを裏付ける実験
引用・参考文献
3. 連続体理論
3.1 流体力学変数とゴールドストーンモード
3.2 NおよびN*相の連続体理論:配向ベクトルの変形自由エネルギー密度
3.3 SA相の連続体理論
3.4 ScおよびSc*相の連続体理論
3.4.1 局所座標系による表現
3.4.2 座標系によらない表現
3.4.3 適当なベクトル場の発散(div)として記述できる項について
3.4.4 フレクソエレクトリック効果
3.4.5 NおよびN*における連続体理論の援用
3.5 連続体理論と粘性
3.5.1 Iso相における流動:ナヴィエ─ストークスの式
3.5.2 N相における流動と回転粘性
引用・参考文献
4. 欠陥と組織:転位・転傾とフォーカルコニックス
4.1 はじめに
4.2 転位・転傾とフォーカルコニックス
4.2.1 ヴォルテラ過程による転位と転傾の生成
4.2.2 焦面が焦線に縮退してしまうような変形とフォーカルコニックス
4.3 N相の欠陥と組織:配向ベクトル場n(r)における転傾
4.3.1 楔転傾とねじれ転傾:シュリーレン組織と糸状組織
4.3.2 転傾の配向歪エネルギー
4.3.3 点欠陥と面欠陥(壁)
4.4 SA相の欠陥と組織
4.4.1 フォーカルコニックス:多角形組織と扇状組織および配向状態へのはめ込み方
4.4.2 転位と転傾
4.5 N*相の欠陥と組織
4.5.1 λ線、τ線およびχ線
4.5.2 多角形組織と扇状組織
4.6 ScおよびSc*相における欠陥
4.6.1 N相やN*相との類似点
4.6.2 フォーカルコニックス
4.6.3 ジグザグ欠陥
4.6.4 ScおよびSc*相に特徴的な欠陥
引用・参考文献
5. 分子論
5.1 はじめに
5.2 分極率と永久双極子モーメントおよび誘電率と自発分極
5.2.1 反磁性感受率と秩序パラメータ
5.2.2 屈折率と誘電率および分極率と永久双極子モーメント
5.2.3 自発分極
5.3 分子間相互作用の起源
5.3.1 ファンデアワールス引力と剛体的斥力
5.3.2 マイヤー─サウペの引力ポテンシャルエネルギー
5.3.3 グーセンスによる自発的ねじれ力の説明
5.4 分子間相互作用:モデルポテンシャルエネルギーによる取り扱い
5.4.1 N相のモデルポテンシャルエネルギーと平均場近似
5.4.2 SA相の秩序パラメータと平均場近似
5.4.3 Iso-N,N-SA,Iso-SA相転移理論の改善
5.5 Sc相の分子論
5.5.1 傾きの起源と分子間相互作用引力ポテンシャルエネルギー
5.5.2 モデルポテンシャルエネルギーによる考察
5.5.3 分子長軸まわりの回転状態および永久4重極子間の相互作用ポテンシャル
5.5.4 剛体斥力に起因する排除堆積効果の異方性
5.5.5 おわりに
引用・参考文献
6. 現象論
6.1 はじめに
6.2 分極の現象論
6.2.1 分極と分極電荷
6.2.2 反電場
6.2.3 C-配向ベクトルの曲がり変形と分極電荷
6.3 ランダウ─ドゥジャン理論
6.3.1 ランダウ理論
6.3.2 常誘電─強誘電相転移
6.3.3 Iso-N相転移に関するランダウ─ドゥジャン理論
6.3.4 揺らぎ現象
6.3.5 臨界指数
6.4 Sc(Sc*)への相転移
6.4.1 ピーキン─インデンボウムの理論
6.4.2 ドゥジャンのモデル
6.4.3 チェン─ルーベンスキーのNACモデル
6.4.4 オルドエレクトリック効果とSA-Sc相転移
6.5 混合液晶の相転移温度
6.5.1 理想溶液
6.5.2 正則溶液
引用・参考文献
7. 強誘電性液晶材料と配向制御法
7.1 強誘電性液晶材料
7.2 配向制御法
7.2.1 [層⊥基板]セルと[層∥基板]セル
7.2.2 [層⊥基板]セルの配向制御法
7.3 界面分子配向機構:N相の場合
7.3.1 異方性基板との電気的相互作用
7.3.2 表面形状効果
7.3.3 排除体積効果
7.3.4 分子論による考察
7.4 界面分子配向の評価方法
7.4.1 表面張力(接触角)
7.4.2 界面の微視的配向制御力の評価
7.4.3 減衰全反射法(Attenuated Total Internal Reflection:ATIR法)
7.5 アンカリング強度の測定法
7.5.1 機関長と外挿長
7.5.2 楔形セル法
7.5.3 フレデリックス転移法
7.5.4 強い電場法
引用・参考文献
8. 強誘電性液晶のおもな材料定数
8.1 重要な材料定数と応用研究
8.2 熱物性
8.2.1 相転移温度と相の同定
8.2.2 相系列と分子構造
8.2.3 相転移温度と分子構造
8.2.4 材料の混合の効果
8.2.5 その他の熱物性
8.3 構造物性
8.3.1 層構造
8.3.2 傾き角
8.3.3 螺旋ピッチと螺旋の掌性
8.4 電気物性
8.4.1 自発分極
8.4.2 誘電率
8.5 力学物性
8.5.1 弾性定数
8.5.2 粘性係数
8.6 光学物性
8.6.1 屈折率
8.6.2 複屈折
引用・参考文献
9. 強誘電性液晶の薄膜化と表面安定化状態
9.1 薄膜における分子配向:表面安定化状態
9.2 2種類の臨界セル厚
9.3 臨界セル厚と材料定数
9.3.1 計算方法
9.3.2 計算結果
9.4 表面安定化状態間の境界
9.5 プレティルトの存在とスメクティック層の「く」の字構造
9.5.1 単純なSS状態モデルの破綻とプレティルトの導入
9.5.2 「く」の字層構造とジグザグ欠陥
9.5.3 4×4行列法を用いたねじれ状態の色の計算法
9.5.4 ねじれ状態の色
9.5.5 薄いセル中でのねじれ状態の色
引用・参考文献
10. 表面安定化状態のダイナミクス
10.1 静電場下での表面安定化状態
10.1.1 連続体理論による考察
10.1.2 三角波電場によるスイッチング
10.2 パルス電場によるスイッチングの一般論
10.2.1 連続体理論による考察
10.2.2 パルス電場による光応答
10.3 ドメイン生成を伴うスイッチング
10.3.1 ストロボスコープによる観察
10.3.2 ドメイン生成を伴うスイッチング機構
10.3.3 ジグザグ欠陥と舟形ドメイン
10.3.4 アブラミ理論による取り扱い
10.4 ドメイン生成を伴わないスイッチング
10.4.1 波数ゼロのゴールドストーンモード
10.4.2 光応答に対する誘電異方性の影響
10.4.3 表面が取り残される場合
10.5 その他の興味ある系でのダイナミクス
10.5.1 強い非対称性を示すスイッチング
10.5.2 Sc*相以外でのスイッチング
引用・参考文献
11. その他の興味ある物性
11.1 螺旋構造中の光の伝播
11.1.1 4×4行列法
11.1.2 S*相における固有モード
11.1.3 螺旋構造による光の集光,発散効果
11.2 自己保持膜
11.2.1 自己保持膜からの光散乱と粘弾性定数
11.2.2 自己保持膜を用いた2次元系における相転移の研究
11.3 反転電場による光散乱
11.4 リエントラント現象
11.5 非線形光学効果
11.6 電気力学効果
11.7 電傾効果
11.8 反強誘電相
引用・参考文献
索引