レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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環境工学とは,私たちが自身の生存基盤を脅かすほどに地球に与えている負荷に対して,科学と工学の視点から具体的な解決策を見出していく学問である。本書では,社会の文脈に合わせて最も適切な選択肢を導き出す社会実装力を養う。
- 発行年月日
- 2026/10/30
- 定価
- 2,970円(本体2,700円+税)
- ISBN
- 978-4-339-06679-1
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読者モニターレビュー【 北山 匡史 様(業界・専門分野:電力システム)】
掲載日:2026/10/21
地球温暖化や資源枯渇、化学物質汚染など、現代社会が直面する環境問題は複雑化の一途を辿っている。これらの課題に対し、環境負荷低減、LCA、再生可能エネルギーといった概念をもとに論じる機会は多いが、根源的には素材の選定や化学反応など、材料・プロセスに関わる技術課題を避けて通ることはできない。
しかし、システム面からのトップダウン的な視野だけでは、肝要であるこれらの物理化学的・材料工学的な知識が不足しがちになる。一方で、ミクロな化学的要素にのみ集中するボトムアップの視点では、それらが社会や地球全体に対してどのようなインパクトを持つのかが、ともすると見えなくなってしまう。本書『環境化学工学』は、まさにこのミクロとマクロの間に生じるギャップを埋め、現象の本質と全体像を包括的に結びつける一冊である。
本書の最大の特長は、各種環境技術が要請された歴史的プロセスと、それを裏付ける工学的必然性の体系的な融合にある。高度経済成長期の公害問題や水系感染症の克服、最終処分場の逼迫、エネルギー資源の制約といった歴史的背景から、現行の環境法規制や技術体系が成立した論理的文脈を提示。その上で、CO₂の分子振動モードによる赤外線吸収メカニズムや、水銀のメチル化反応機構、排煙脱硫・脱硝における反応工学など、事象の根底にある理論を定量的かつ厳密に解き明かしている。単なる要素技術の暗記にとどまらず、なぜその技術が必要であり、化学的にどう作用するのかという工学的根拠を明確に示している点が優れている。
全7章からなる内容として、地球の物質循環(炭素・窒素・硫黄)に始まり、公害史と環境汚染対策、高度浄水・汚水処理、廃棄物管理・循環型社会(3Rやサーキュラーエコノミー)、エネルギー(S+3E原則、水素・アンモニアキャリア、CCUS等)、放射能・放射線管理、そして持続可能なプロセス設計の指針となるグリーンケミストリー/エンジニアリングまで網羅されている。LCAによる影響評価やPFAS等の最新規制動向も押さえられており、基礎原理から先端的な産業応用までをシームレスに架橋している。
要素技術のミクロな原理理解と、社会実装に向けたマクロなシステム思考を横断する本書のアプローチは、複雑な制約下でデータに基づいた最適解を導き出す思考力を養ってくれる。工学系を学ぶ学生や研究者はもちろん、新素材・新プロセスの開発、エネルギー・環境プラントの設計、あるいはESG・環境マネジメントに携わる多くのエンジニアにとっても、自身の取り組む技術の位置づけとインパクトを再認識させてくれる価値ある必読の書である。








