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昆虫工学 - 新しい価値を創造する「昆虫の知能」の解明と応用 -

昆虫工学 - 新しい価値を創造する「昆虫の知能」の解明と応用 -

全生物種の50%以上を占める昆虫の知能は,自然と協調した,未知の課題解決法の宝庫。昆虫の知能を支える感覚・脳・行動のしくみと,それらを応用した技術や研究の最前線を紹介。新しい学問的視座と価値創造の可能性に触れる。

発行年月日
2026/07/17
定価
4,620円(本体4,200円+税)
ISBN
978-4-339-06766-8
在庫あり

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

読者モニターレビュー【 mochi 様 (業界・専門分野:IT)】

掲載日:2026/09/09

本書は、バイオミメティクスのように昆虫や植物の機能を「模倣する」のではなく、昆虫が持つ機能そのものをシステムとして捉え直し、再現・応用することを目指す新分野「昆虫工学」の全体像を示す一冊である。

本書でとりわけ印象に残ったのは、「第1部 基礎編」において、昆虫の行動から神経基盤、感覚器に至るまでを、全体の半分以上という紙幅を割いて丁寧に解説している点である。概説書にありがちな最新の研究成果の紹介にとどまらず、昆虫そのものが持つ行動の魅力や、感覚器の構造・機能、情報処理の仕組みにまで踏み込んでおり、まえがきで投げかけられる「なぜいま、昆虫なのか」という問いに応えるかのように、昆虫が秘める可能性を読者に感じさせる構成になっている。

本書が意図するところとは異なるかもしれないが、昆虫の神経回路について詳しく学びたい読者にとっても、格好の手引きとなるだろう。

一点惜しまれるのは、昆虫を用いた研究がはらむ倫理的な課題について、もう少し言及がほしかったところである。特に近年では、行動実験や神経基盤の研究が進むにつれ、哺乳類などと同様に昆虫にも情動と呼びうる状態が存在するのではないか、という議論も見られるようになってきた。本書は昆虫の行動や神経系をこれほど丁寧に描き出しているだけに、こうした昆虫の「内的状態」をめぐる知見も踏まえたうえで、研究対象としての昆虫をどう位置づけるかという倫理的な視点まで踏み込んだ議論を読みたかったように感じる。

新刊書籍「昆虫工学」(神﨑亮平 監著)のご案内

掲載日:2026/09/04

日本応用動物昆虫学会ホームページでご紹介いただきました。

読者モニターレビュー【 みと 様 (業界・専門分野:電池)】

掲載日:2026/07/02

本書は、小さな身体という限られた資源の中で驚くほど高効率に機能する昆虫の仕組みを解き明かし、その知見をロボティクスや群知能アルゴリズムなどの工学へ応用する最前線の研究を紹介した一冊である。昆虫は、哺乳類のような冗長性やロバスト性に依存するのではなく、極めて限られた計算資源やエネルギーで環境に適応する独自のシステムを進化させてきた。そのため、省電力・高効率な人工システムを設計するうえで、昆虫から学ぶ意義は非常に大きいことが、本書を通じてよく理解できた。特に印象に残った点は三つある。
第一に、「好蟻性」をはじめとする昆虫の生態に関する多くの事例である。例えば、アブラムシとアリは共生関係を築くことで知られる一方、植物の栄養状態など環境条件によってはアブラムシがアリの捕食対象となることもある。このように、生物同士の関係が固定的ではなく、環境に応じて柔軟に変化するという事例は非常に興味深く、昆虫の世界にはまだ知らない現象が数多く存在することを実感した。
第二に、スーパーコンピュータを用いてショウジョウバエなどの知覚・行動を再現しようとする「昆虫全脳シミュレーション」である。視覚や嗅覚といった複数の感覚情報が、飛翔や歩行などの行動とどのように結び付いてモデル化されるのか、大きな関心を持った。この研究は、複数の情報を統合して判断を行うマルチモーダルAIとの接点も大きく、今後のAI研究への応用可能性にも期待がもたれる。
第三に、「昆虫サイボーグ」の研究である。これは昆虫型ロボットではなく、生きた昆虫を電気的・化学的手法によって制御する技術であり、狭隘空間の探索や災害救助などへの応用が期待されている。実用化には課題も多いと思われるが、将来的に人命救助など社会課題の解決に役立つ技術へと発展することを期待したい。
本書は、昆虫の巧妙な仕組みを知ることから始まり、それが次世代のAIやロボティクス、機械設計へどのようにつながっていくのかを考えるきっかけを与えてくれる。