レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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耳で聞こえる音を一般的に「音」と呼び,「音波」と呼ぶ場合は,発生原因や波としての過程を考えている。音をさらに学びたいときに専門書は数式が難しく読み物は簡単すぎる。よって,高校数学で理解できる程度で音の本質を解説した。
- 発行年月日
- 2026/07/08
- 定価
- 2,530円(本体2,300円+税)
- ISBN
- 978-4-339-01505-8
レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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読者モニターレビュー【 松岡 大輔 様 (業界・専門分野:プログラマー)】
掲載日:2026/07/07
本書は「音」全般に対する入門的書籍として、波の原理から音の諸現象まで幅広く扱っている。しかし、事典的にテーマを総ざらいしているという印象ではないところが特徴である。扱うテーマはさまざまだが、きちんと基本的な内容が厳選されている。それゆえに、ひとつひとつのテーマに対して数理もふまえた物理学の記述に踏み込むことができている。いわゆる一般書としての入門書とは毛色が異なり、全体像を概観しながらひとつひとつのテーマの物理・数理的側面へと導入する意図が読み取れる点が、教科書として好感が持てる点であると思う。
高校程度の数学と物理の知識をベースに、大学理工系の物理学への橋渡しのようなレベル感で、本書で興味を持ったらより専門的な書籍に進むという方針がはっきりしている。たとえば高校で習う断熱過程が疎密波の伝搬にも当てはまるか、という疑問から出発し、まず疎密波における変位と圧力の位相のズレを説明したうえで、熱の移動の原理から音の伝搬が断熱過程であることを導く。高校程度の知識から発想を一歩進めて、それに数理的・物理学的な基礎理論を適用する、という書き方が特徴的である。
個人的にパソコンや電子機器を使った音響合成に取り組んでいるのだが、最近はツールやプログラミング言語がリッチになった分、素朴な波の物理や振動の側面を見ずに済ませている傾向がある。パソコン上で合成した音をヘッドフォンで聴いているという状況が、音・音響の豊かな要素をかなり取りこぼしている可能性がある、と改めて感じた。
音響は波が単独で存在して成立するものではない。空気などが媒質として振動するという物理的な現象が伴い、さらにはそれを聴覚が知覚する、という多層的な成り立ちをしている。空間やメディアそのものを巻き込んで、知覚現象全体をデザインするような発想が必要である。パソコンで簡単に音が鳴る時代だからこそ、音響デザインという広い視点を持つべきであるという示唆があるように思う。
本書は、抽象度の高い基本原理を押さえることから始めることによって、工学的なテーマから生物の聴覚へ、さらに幅広い波の現象へと、無理なく接続する構成になっている。理論と現象が密接に関係している物理学の面白さも感じられる。ぜひ巻末の参考書を使って勉強を深めたいと思う。
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読者モニターレビュー【 田中 裕己 様 (業界・専門分野:ソフトウェア工学)】
掲載日:2026/07/07
本書は音の物理に関する入門書として、高校物理の波動分野で習う基本的な内容の復習(音速の式、定在波、ドップラー効果など)から始めて、自然現象・工学における様々な波動現象(音階の仕組み、人の聴覚、クジラの鳴き声、超音波の医療への応用等など)が紹介されています。主に音=空気を伝わる可聴域の波動を扱っていますが、超音波や、地震波・水面波等の広い意味での波動現象がカバーされています。
本書の一番すてきな点は、短いページ数の中で多くの身近な物理現象が豊富な写真・波形グラフとともに紹介されている点であると思います。人が「ありがとう」と発声したときのスペクトログラムとか、超音波洗浄機から発する騒音のスペクトルなど、他所であまり見かけない図表が色々と掲載されており眺めているだけでも面白いです。同時に、現象の羅列というわけではなく、波動現象の観点で丁寧に解説がついており、物理好きな読者には是非お勧めしたいです。
数学については、本書ではほとんど高校数学範囲を超えないように配慮されています。例えば音のスペクトル分解との関係でフーリエ級数について言及がありますが、フーリエ級数のグラフが収束していく様子を示すに留まっています。大学生以上の読者であれば、本書で物理現象への定性的理解を養いつつ、振動・波動論や物理数学(特に、波動方程式の一般解)などの学習に接続するのも良いと思います。








