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基礎から学ぶ制御工学と基本コンバータ回路

シリーズ 基礎から学ぶスイッチング電源回路とその応用 3

基礎から学ぶ制御工学と基本コンバータ回路

コンバータの制御に多用されている古典制御について基礎的なレベルから説明し,各種コンバータの動作確認,伝達関数,動作の安定性,さらにスマホなどに搭載されているバッテリーに必須な技術であるリップルベース制御を解説した。

発行年月日
2024/09/30
定価
3,850(本体3,500円+税)
ISBN
978-4-339-01453-2
在庫あり

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読者モニターレビュー【 Jin 様(業界・専門分野:制御工学)】

掲載日:2024/09/18

本書はシリーズ第3巻で、制御工学とコンバータ回路について書かれた、大学院生や技術者向けの書籍です。
第1章から第5章までは、制御工学の基礎が解説されています。一般的な古典制御の書籍に比べページ数は少なめですが、図や例を多用し、簡潔に説明されているため、実用レベルに達するには十分な内容となっています。特に、ボード線図が他の書籍に比べて多く登場し、その重要性を理解できるでしょう。ただ、システムの安定性に関する説明については、外乱やノイズに対する議論がもう少し深く解説されていれば、さらに良かったと感じました。また、PID制御に関しては、周波数解析だけでなく、シミュレーションを行う例題があった方がより理解が深まるでしょう。
第6章ではコンバータの概要が説明されており、電気回路の知識があれば、コンバータに詳しくない人でも理解できる内容になっています。
第7章から第11章までは、これまでの内容を踏まえ、コンバータの制御手法が紹介されています。電圧モード制御や電流モード制御に加え、近年注目されている固定オンタイム制御やヒステリシス制御についても学ぶことができます。ここでも、回路図やボード線図が多用されており、視覚的にわかりやすいです。ヒステリシス制御については、通常の制御の説明に加え、そのデメリットも解説されており、さらにその改良版も紹介されているため、非常に理解しやすい内容となっています。ただ、電圧モード制御の説明で突然「極零相殺」が出てくるので、この内容については制御に関する章で詳細に説明されていれば、さらに良書になったと思います。
総じて、本書は図や例を多用し、簡潔かつ明快に解説されているため、数式が多い書籍が苦手な方にもおすすめです。また、このシリーズの本を初めて手に取りましたが、他の巻も読んでみたいと思えるような、知的好奇心をくすぐる内容でした。

読者モニターレビュー【 ΦAΦ(ファイ) 様(業界・専門分野:総合電機、制御)】

掲載日:2024/09/09

シリーズの第三巻に当たる本書は、刊行にあたりにも書いてあるとおり、大学院生や企業の技術者に向けた実践的な内容を想定しています。

その宣言通り、第1章は電気回路のステップ応答波形から幕を開け、10頁では既に制御に最適な極配置の話に至ります。
第3章の序盤、40頁程度で制御工学そのもの理論的な話をまとめ、第4章の根軌跡、第5章の産業界で多用されるPID制御を挟んだ後、第6章以降は本格的にコンバータとその制御方法について触れていきます。

コンバータの種類(第6章)、パワー段の伝達関数(第7章)、ループ補償回路(第8章)、電圧モード制御(第9章)は触れている書籍はよく見かけますが、電流モード制御(第10章)、リップルベース制御(第11章)について踏み込む書籍は珍しいのではないでしょうか。

個人的には実務で使用している電流モード制御について、ピーク電流モードと平均電流モードの波形を出しつつ、メリット・デメリットについても解説があったのは助かりました。

昨今は大電力化に伴い電流モード制御を取り入れるにも一筋縄でいかない部分が多く、これらの制御に対する経験の浅いメンバーへの解説や、各自の復習にも役に立ちそうです。このシリーズの他の巻についても手に取ってみようと思います。

強いて要望を挙げるならば、書籍に記載された回路の動作を確認できるシミュレーションファイルなどがあれば良いなと思いました。