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音楽情報処理

メディアテクノロジーシリーズ 2

音楽情報処理

音楽情報処理に関する基礎的な解説に加え,音楽の創作(自動作曲,作曲支援・即興演奏支援,楽器演奏支援)から音楽の鑑賞(自動採譜,音楽鑑賞インタフェース)に関する具体的な研究事例を交えながら,その考え方や手法を紹介する。

発行年月日
2023/08/31
定価
3,960(本体3,600円+税)
ISBN
978-4-339-01372-6
在庫僅少

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

読者モニターレビュー【 中村賀与子 様 (業界・専門分野:マルチメディア・音楽・映像)】

掲載日:2023/09/26

テクノロジーの発展と共に音楽は目覚ましい進化を遂げている。本書は、コンピュータを使用した音楽の革新的な研究が網羅されている。研究者や専門家だけでなく、音楽家、音楽指導者、電子音楽に興味を持つ人などにおすすめの一冊である。興味のある研究テーマから読むのも楽しいが、「音楽情報処理とは何なのか?」という初歩的な疑問を知るべく、体系的にわかりやすく書かれた第1章―音楽情報処理の基礎―を読んでから、様々な研究事例のページを開くと理解もより深まると思われる。自動作曲、作曲支援・即興演奏支援、楽器演奏支援、自動採譜、音楽鑑賞インタフェースとテーマは幅広いが、どの事例も音楽の概念そのものを拡張する研究だと感じた。

第2章―自動作曲―では人工知能を用いた自動作曲の事例などが紹介されている。著者がMagentaを使って生成された音楽の特徴など詳しく述べられていて大変興味深い。本章の初めに自動作曲の歴史として、モーツァルトの音楽のサイコロ遊びについて書かれているが、これは現代音楽のジョン・ケージが提唱した「偶然性の音楽」や「不確定性の音楽」と通じる。ケージもまたサイコロやラジオ受信機を用いて音楽に偶然性を取り入れた。機械学習を用いた自動作曲も偶然性に寄与するところが多いと思われるので、作曲に興味のある人は人工知能で生成されたフレーズを組み合わせて音楽を創るのも面白いと思う。

第3章―作曲支援・即興演奏支援―この章では、音楽知識のない人でも作曲できるシステムや楽器の演奏ができない人でも即興演奏ができる研究事例が多く紹介されている。即興演奏は音楽家にとってもあらゆる専門知識が要求される非常に難易度の高いパフォーマンスと言えるが、このような誰でも即興演奏できる支援があれば、音楽によるコミュニケーションが今までとは違った形で表現できるのではないだろうか。言葉の代わりに即興演奏で気軽にコミュニケーションを楽しむことも可能だと思う。

第4章―楽器演奏支援―プロジェクション・マッピングを用いたピアノ学習支援など楽器演奏を習得するための事例が書かれている。まず、プロジェクション・マッピングを使用すると聞いただけで、個人的には「楽しい練習」と推察するので、初めからモチベーションが上がると思う。運指学習など、子供たちに最初にきちんと教えると無意識で正しい運指による演奏をする場合が多いが、大人が独習する場合は本章に書かれているような丁寧な運指学習支援があれば大きな助けになるだろう。ピアノ学習支援として様々な事例が紹介されているので、音楽学習の裾野を広げる力強い研究だと思う。視覚、聴覚を用いた支援が多いが、演奏家にとっては触覚も演奏時に大きな役割を果たしているので(楽譜を見て弾いているときは指の感覚で5度や8度など音程を把握している)さらなる研究を期待したいものである。

第5章―自動採譜―この自動採譜研究はコンピュータが得意とする分野だと思われる。研究が進めば人工知能を用いた大量の音楽分析、楽曲分析が可能になるので非常に注目している。キー推定だが、手作業では楽譜の左に書かれた調号の数(シャープやフラットなど)を確認して、主音を探すために最初と最後の小節を見てキーを判断することが多いと思う。また、伝統的な作曲は一定のルールのもとで作られているので、ディグリー・ネームでコード進行(IV-V-IやII-V-Iなど)を確認して楽曲分析をするが、キー推定やコード推定の研究が進めば、数秒でこのような分析結果を導き出してくれると推察する。大量の音楽分析によって、音楽史に埋もれた名曲や作曲家が発掘される日を心待ちにしている。

第6章―音楽鑑賞インタフェース―本章では、人間の音楽の聴き方を受動的聴取から能動的聴取に変える画期的な研究事例が書かれている。音楽の作り手にとっては、驚愕以外の何ものでもない。何故なら、聴き手がいきなり楽曲のサビの部分ばかり3回聴いたり、間奏を飛ばしたり、ベースのパートだけを聴いたり、自由自在に好きな方法で好きな箇所だけを聴くのだから。しかし、楽器演奏学習者が難しいフレーズだけを何十回も聴いて練習したり、合奏練習のためにあるパートだけを抜き出して一緒に演奏できれば、それは非常に有益な聴き方と言える。また、紹介されているように演奏と共に楽譜のどの部分を演奏しているのか表示が出るなどのインタフェースは非常に便利である。逆に聴きたい楽譜の箇所をクリックして、その部分の音楽を聴く事ができるのであればなお重宝しそうである。このような音楽鑑賞インタフェースを使った聴き方は、聴き手が従来の聴き方から解放され、自由を手にして、音楽を提供する側と対等に渡り合う、とでも言うべきだろうか?非常に興味深い研究である。

「音楽は人類の共通言語である」と米国詩人ヘンリー・ワズワース・ロングフェローは書いた。その共通言語は、音楽情報処理の発展で驚くべき進化を遂げるであろう。煌めくような研究事例をワクワクしながら読んでほしい。

読者モニターレビュー【 sonido 様 (業界・専門分野:IT・ソフトウェア開発)】

掲載日:2023/09/19

研究事例について、実際にWEBサイトで体験したり聞いたりできる情報も掲載されていて楽しみながら学べました。冒頭ではカラーページで、本の中で紹介されているインターフェースやシステムの配色を確認できた点も良かったです。

音楽情報処理という分野についての導入や研究の分類について、用語定義や分かりやすい図も活用し、体系的に学べるように構成されていました。手法についても古典的内容から機械学習、そして音楽ならではの用語や理論の解説も必要に応じてあり、「本分野についてもっと学びたい」と感じられる1冊だと感じました。

各章に分かれた、自動作曲、作曲支援・即興演奏支援、楽器演奏支援、自動採譜、音楽鑑賞インターフェースを理解するための基本情報を網羅でき、研究事例も古いものから最近のものまでピックアップされているので、研究トピック探しや関連研究調査にも役立つと思います。

読者モニターレビュー【 山口 直彦 様 東京国際工科専門職大学(業界・専門分野:情報学)】

掲載日:2023/09/19

本書のタイトルである「音楽情報処理」の研究は、日本国内では主に情報処理学会音楽情報科学研究会(SIGMUS)にて議論が行われています(私も会員のひとりです)。本書はSIGMUSで活躍される、精鋭5名の先生方によってまとめられた決定版の研究ガイドブックといえるでしょう。

一口に音楽情報処理といっても広範なサブテーマがありますが、本書は現在精力的に研究が進められている主要5分野(自動作曲、作曲・即興演奏支援、楽器演奏支援、自動採譜、音楽鑑賞インタフェース)にフォーカスしています。理解のために必要な最低限の前提知識と、基礎技術が読みやすくコンパクトにまとめられており、これから音楽情報処理を勉強しよう、チャレンジしようと思っている人におすすめできます。

特筆すべき点として、本書内で紹介されている各種手法やアルゴリズムについて参考論文がたくさん示されており、その多くが英語文献です。日本人にとって、英語の文献を探して読む事は非常にハードルが高い事ですが、本書を参考に論文をたどっていくことで、自分が必要としている情報により早くたどり着くことができるでしょう。

新しい音楽体験を作り出そうとしている人に(もちろんすでに研究に取り組んでいる人も)、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。

読者モニターレビュー【 陣内悠人 様 (業界・専門分野:音楽愛好家)】

掲載日:2023/09/19

ボカロが世間を賑わしている。 
本書は、ボカロも使用可能な自動作曲、自動演奏、自動採譜等に関するテクノロジーについて詳説している。
文章の分野でいえば、AI によるChat GPTが筆頭にあげられる。文章を作成する、文章を読み上げる、文字起こしを行う。Chat GPTの台頭に伴い、ある懸念が叫ばれている。AIが人間の仕事を奪うのではないかということである。
これについは、音楽の世界で証明した先人がいる。イエロー・マジック・オーケストラ。彼らは、音楽制作にコンピュータを取り入れた。コンピュータに頼るだけではなく、自ら演奏をすることにより、テクノロジーとの共存をはかったといえる。
音楽制作は、テクノロジーの進歩により、より簡単になった。ボカロがDTM で曲をつくることができるのは、その恩恵にあずかっているからである。本書で取り上げられている技術は、進化の賜物である。
本書を読み、音に関するテクノロジーを知る。それを自分の感性と共存することにより新しいものを作り上げる。
そう思わせてくれる1冊である。