レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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メディア学大系 3
アニメ,ゲーム,映像等のメディアコンテンツの産業構造と,シナリオライティング,キャラクターメイキング,演出等の具体的なコンテンツ制作技術を解説。本改訂では,各種制作支援システムを公開し,事例や実践的な解説を追加した。
- 発行年月日
- 2023/03/23
- 定価
- 2,970円(本体2,700円+税)
- ISBN
- 978-4-339-02799-0
レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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読者モニターレビュー【 DHMO 様 (専門分野:ビジネス:IT/学術研究: 心 理 学 )】
掲載日:2023/03/22
本書はコンテンツクリエーション(以下、CC)実践知を体系化する試みであり、工学的な分析に基づいて形式知化する研究を教科書化したものの改訂版である。
リニアコンテンツ(映像等)を素材に各論を展開する構成だが、後述する通りの特徴を備えるため、他の形式のコンテンツに携わる立場でも読み替えによって得るものがある。
基本はCC全体を概観する流れではあり、各工程を個別に深く解説したものではない。
しかし、各工程に触れる際には、目的や概念、支援するフレームワークや道具立ての紹介が行われ、深入りしすぎない程度にデータや具体事例を通じた腹落ちを企図した工夫が見て取れる。これにより、重要な考え方、ツボのようなものを理解することが容易である。
されば、CCにおけるどこかの工程をこれから学びたい立場には、その工程の導入に十分な情報が提供され、またCC全体の流れから自身の携わろうとする工程の前後で行われる事柄が具体的に想像できる。一方、既に特定の工程に携わる立場に於いても、我流の理解との差分を確かめたり、集団的かつ流れを持った営みであるCCにおける俯瞰した視座を提供する。そのため、クリエリターのキャリア段階を問わず座右の書として機能するものと考えられる。
また、本書の目的からは外れるかもしれないが、コンテンツの受け手の立場で本書を通読すると、普段目にするコンテンツの理解や楽しみが立体的になると感じ、その意味では消費者(製作者も、制作以外の場面では他者が制作したコンテンツを嗜むため、これも含む)までコンテンツのライフサイクルに関与する全ての立場で、得るものが有る良書と言える。
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読者モニターレビュー【 N/M 様 (専門分野:総合情報学(情報科学))】
掲載日:2023/03/22
本書は,メディア学大系シリーズ(全19巻)の3巻目に位置する書籍の改訂版である.本巻では「コンテンツクリエーション」,つまり,各種コンテンツ制作についての記述がなされている.
第1章では,コンテンツ制作に入る前に,本書における「コンテンツとは何か?」という定義から始まり,コンテンツを制作する際に必要な専門的な職種,制作工程,制作に当たり資金調達の方法,各種コンテンツ産業の実態などについて触れられている.普段,何気に視聴しているドラマやアニメ,映画,ゲーム等が,どのような職種の方々が関わっているかということが改めて考えるきっかけにもなるだろう.また,それらの映像作品やゲームなどのエンディングの際に字幕で表示されるクレジットの職種の意味も,この章を読むことで同じく理解できるだろう.
第1章と第2章で,コンテンツクリエーションの各工程での大まかな制作に関する全体像について触れられている.その後の第3章〜第6章では,第1章と第2章で登場した制作工程をさらに詳しく取り上げた解説がなされている.
また本書は,『コンテンツクリエーションのための支援システムの説明を加えるとともに,支援システムやテンプレートを公開してコンテンツクリエーションの演習を実施しやすくした。本書をもとにした制作体験を通じて,コンテンツ制作の基礎を習得できることを狙っている』とまえがきにもある通り,2014年発行の初版の書籍(https://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339027853/)から支援ツールが充実している点が挙げられる.
具体的には,一般公開されている関連資料として,第3章で使用するプログラミング言語
PHPを用いたWebアプリ「シナリオエンジン」(名前,メールアドレス,パスワードの登録が必要),第4章で使用するPowerPoint(pptx形式)の「キャラクターメイキングテンプレート」,第5章で使用するオートデスク社製の3DCG作成用のソフト「3dsMAX」で動作する「ロボットデザイン原案制作支援システム」,第6章で使用する「LightingScrapBook(HTML版)」と「回避カット設計支援システム」等が用意されている.
私自身,学生ではないのと,コンテンツクリエーション技術に関しては情報科学の分野の一部としての概論的な知識なので,これらのツールの使い方としての知識は,本書で得られたが,実際にモノを制作するというクリエイティブな面での有効的な使いこなし方は,残念ながら分からなかった.さらに,私自身,macOSユーザであるため,手元に自身が使えるWindowsマシンと該当アプリを所持していないため,exe形式のWindowsアプリ,3dsMAXファイル,「LightingScrapBook(HTML 版)」はWindows版のWebブラウザ EdgeでIE (InternetExplorer) モードでないと動作できないため,実際に試すことができていない.可能ならば,Windowsだけではなく他のOSやWebブラウザでも試せると,さらに便利になるのではないかと思われる次第である〔それらに加えて,個人的には「シナリオエンジン」のプログラムの中身(PHPプログラムのソースコード)が気になるところではあるが・・・〕.
最後に,各章末には,コンテンツクリエーションの分野についての簡単な設問,実際にコンテンツを制作するような,学んだことを演習・実習形式で身につけていくような演習問題が用意されている.