レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

線形システム同定の基礎 - 最小二乗推定と正則化の原理 -

次世代信号情報処理シリーズ 3

線形システム同定の基礎 - 最小二乗推定と正則化の原理 -

線形システムに対象を絞り,初学者がシステム同定の基礎を理解できるよう構成。応用としてモデル選択,逐次同定をまとめ,発展としてカーネル正則化とスパース正則化を理論面,実装面から解説。MATLABでの実装例を付録に記載。

発行年月日
2021/08/16
定価
4,070(本体3,700円+税)
ISBN
978-4-339-01403-7
在庫あり

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

日刊工業新聞 技術科学図書(2022年3月30日)

掲載日:2022/03/30

読者モニターレビュー【しんくん 様(ご専門:数値解析学)】

掲載日:2021/09/08

私は今までシステム同定という分野に馴染みはありませんでした.しかし,時系列解析や数理統計学の基礎について,紙面の多くを割いて説明されている本書籍のおかげで,昨今流行りの深層学習の手法等と関連させながら,このシステム同定という分野を俯瞰できるようになりました.特に,結果だけでなく,数式による説明が適宜加えられるとともに,詳細に深く入り込みすぎない書き方が入門に最適であると感じました.また,入門的な内容のみならず,ベイズ統計による正則化の解釈,スパース正則化の最適化アルゴリズムにまで言及した和書は他に例を見ず,貴重であると思われます.ゆえに,線形システム同定論のみならず,時系列解析や機械学習を異なる視点から眺めることができるため,幅広い分野の研究者にとって,本書籍は持っていて損はない代物だと言えるでしょう.

読者モニターレビュー【 清水 元喜 様(理化学研究所、ご専門:計算論的神経科学)】

掲載日:2021/08/17

本書はシステム同定の基礎について、線形システムに焦点を絞り初学者にも読みやすく書かれた入門書である。評者は工学部出身ではないためそもそもモデリングやシステム同定とはなにか、という基礎概念・用語に対して馴染みが薄かったが、第1章にて簡潔かつわかりやすい概論が述べられた上で第2章・第3章にて特に線形システムに関する基本的な用語の定義やモデルの分類が導入されており、線形システム同定という分野の基礎概念について効率よく理解することができた。第4章からはいよいよ実際に観測値からシステム同定を行う手法の紹介が始まる。本書におけるパラメータ推定は基本的には予測誤差法、すなわち予測誤差を最小化するようなパラメータを推定する手法を用いており、その中でも解析的な取り扱いが容易な最小二乗法に基づく推定手法が重点的に解説される。この最小二乗法が統計学的に解釈すれば(独立同分布な)ガウス雑音を仮定した最尤推定に同値であること、(特定の条件下で)不偏性・一致性・有効性という「良い」条件を持つこと、がわかりやすく説明されている。統計学の既習者にとっては良い応用問題として読むことができ、またシステム同定という具体例を通じて統計的推定について学習しようという読者にとっても本書の記述は明確かつ丁寧なものだろう。第6章では逐次同定(昨今では「オンライン学習」という言い方で耳にすることのほうが多いかもしれない)が、第7章〜第9章では正則化項を設けた推定手法が紹介されている。正則化項(あるいは事前分布)を考慮した推定自体は決して珍しいものではないが、線形システム同定において具体的にどのような正則化項を用いるのが良いかについて詳細に触れられている点が本書の特長であり、実用家にとっては本書の白眉といえるかもしれない。第5章は適切なモデルがわかっていない状況での選択法について述べられており、全体の流れからはやや外れるがこちらも実用上は重要であろう。AIC・BIC・バリデーションについて簡潔に紹介がされている。巻末には簡潔にMATLABによる実装例まで付されている。
全体として、線形システム同定および統計的推定に興味がある幅広い読者に受け入れられる良書である。

MathWorks 「MATLAB/Simulink 関連書籍」線形システム同定の基礎

掲載日:2021/08/10

MathWorks 様にプロモーション用ページを制作いただきました。

読者モニターレビュー【Hernia Baby 様(業務内容:車両制御・信号処理・振動騒音開発等)】

掲載日:2021/08/10

本書は線形システム同定について理論的な導出から発展した内容までを網羅的に解説した入門書である。
3つの大きな流れで章が分かれている。
1~3章において線形システムの基本的な部分を学ぶことができ、4~7章では線形システムの同定に必要なパラメータ推定の基礎を説明している。
そして8~9章では発展的な内容が書かれており、これが本書の大きな特徴である。
最先端の内容が議論されており、論文などから学ばざるを得なかった部分を簡潔・丁寧に紹介している。
本書に強調されている通り、線形システム同定を対象としてここまでわかりやすく説明されている物は殆どない。

かなり簡単には書いてあるが、難易度としては大学数学レベルの知識が必要である。
基本的な数学を学ぶには、次世代信号情報処理シリーズ1「信号・データ処理のための行列とベクトル- 複素数,線形代数,統計学の基礎 -(コロナ社)」を用いると親和性が良いと思われる。
また本書は手法等を説明した後に統計的な性質や関連性を述べている点も興味深い。
これは昨今ブームであるAIの基本的な部分であり、機械学習を学ぶものにも有用である。

MATLABによる実装例は最後に付録として掲載されている。
使い方としては一通り本書を読んだ後に実装してみるといった感じである。
実装部分を増やしてほしいところだが、ページ数的には今の厚さがちょうどいい。
持ち運びやすさに対して必要最小限のコードが書かれているのだと思う。
実装抜きにしても非常にわかりやすく、初学者と先端技術を結ぶ素晴らしい本であるといえる。

読者モニターレビュー【つかなか 様(ご専門:制御工学)】

掲載日:2021/08/10

私は今年度の修士課程の講義で,今年度システム同定の基礎を学んだ状態であり,以下のレビューはその前提で執筆されていることをご留意ください.
本書はシステム同定の基礎知識(2~4章,7章),システム同定の応用上欠かせない知識(5~6章),そしてシステム同定の最新の議論に関する知識(8~9章)によって構成されています.序盤の基礎部分は理解に必要な説明はなされていると言え,なおかつエルゴード性などとやや抽象的概念についてはかみ砕いた説明が付されており,大変理解の助けになりました.中盤の5章以降については,やや応用的な内容の解説になりますが,あまり行間を読むことを求められることはなかったように感じます.むしろ補足説明が頁下に適宜追加され,そちらの読み応えが多いようにも感じます.なお,巻末の付録にはMATLABのサンプルコードが用意されており,自身で適宜パラメータ等を変化させながら試すことが出来る点は有難いと感じました.
全体として,初学者から最新知識を求める読者まで幅広く対応する著作であると思います.

読者モニターレビュー【ヤマダ 様(ご専門:IT分野)】

掲載日:2021/08/05

本書は次世代信号情報処理シリーズ3として,線形システムに対象を絞り,その理論的基礎から発展的な内容まで,初学者でも議論を追えるような構成で解説したものである.
本書の大きな特徴としては,システム同定の枠組みで正則化最小二乗法(カーネル正則化,スパース正則化)に関する最新の議論を理論・実践面双方からまとめており,この点本書でも強調されている通り,現時点で他の和書ではほとんど見られない.システム同定に一定の知見があり,より発展的な内容を知りたい読者にとっては一読する価値があると思われる.
とはいえ,完全に玄人向けというわけではなく,この分野が初めてという読者に対しても,特に2~4章を中心に線形システムとは何か,シンプルかつ丁寧に解説されているため,置いてけぼりにはならずに読み進められる.実際,私は機械学習,時系列解析から入った人間であるため,システム同定については専門家レベルではないが,最後まで読み進めることができた.(例えば,P35のコーヒーブレイクでは時系列解析の文脈で少し記述がなされているなど,理解の助けになる箇所もあった.)
最後にはMATLABによる実装例もついており,理論で学んだことを実装することで,より理解が深まるのではないだろうか.願わくばもう少し実装面にもページを割いて頂きたかったが,実装例抜きにしても非常に勉強になるし,この次の学習として参考文献や関連書籍を読むなどすることで,本書に挙げられたテーマを深く学ぶことができると思われる.