レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

香料化学 - におい分子が作るかおりの世界 -

香料化学 - におい分子が作るかおりの世界 -

においを題材とした系統的な化学の教科書であり,基本的な有機化学をもとに人がにおいを感じる仕組みを説明する。また実際のにおい分析の様子や,分子の構造とにおいの関係などのテーマについて,著者の研究例をもとに解説する。

発行年月日
2021/06/10
定価
2,090(本体1,900円+税)
ISBN
978-4-339-06657-9
在庫あり

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

「AROMA RESEARCH」2022年9月号(フレグランスジャーナル社)

「AROMA RESEARCH」2022年9月号(フレグランスジャーナル社)

掲載日:2022/08/30

「読売新聞」夕刊READ&LEAD(2022年3月19日)

掲載日:2022/03/19

『日本味と匂学会誌』28巻2号119頁

『日本味と匂学会誌』28巻2号119頁

掲載日:2021/12/17

本書は、「においとは何か。」という問いかけから始め、においを題材とした化学テキストを想定した書籍である。においを理解するためには、有機分子として捉えることが重要であると説き、まず第1章では高校の化学の内容から始めて、大学での初等の有機化学の立体化学を解説することで、においを三次元の分子で捉えるように工夫がみられる。また、においの有機化合物としての化学的及び物理的性質、その構造解析方法を解説して、分子レベルでの理解を求めている。続いて第2章では、素材からにおい成分を取り出す具体的な手法と一般に使用される分析機器及びその測定方法を解説している。におい素材の対象はさまざまであるところから始め、ヘッドスペース法、有機溶剤抽出、水蒸気蒸留などの手法と特徴を解説している。得られたにおい成分はガスクロマトグラフィー及びガスクロマト-質量分析計による分析に加えて、におい嗅ぎ装置を用いた人の嗅覚でにおいを検出する方法を解説している。また、核磁気共鳴法を用いたにおいの分析の例をあげ、具体的な分子の部分構造まで解析している点がユニークである。一方で、得られたにおいは人の嗅覚による官能評価が重要であることを説き、実際の評価方法ならびに注意点まで言及している。最終的に、機器によるにおい成分分析結果と人の感覚による官能評価の相互関係を検討することが重要であると結論づけている。第3章では、人がにおいを感じる仕組みについて解説し、におい分子の認知において、におい受容体が重要な役割を担っており、応答の仕方によって違うにおいと判断される理由や、複合臭のメカニズムまで言及している。特に、複合臭に関しては、におい分子の構造の類似性が重要であると説き、嗅覚のメカニズムをもとに複合臭のにおい特性の解明へのアプローチについて説明している。その解析手順において、機器による成分分析、人による官能評価に加えて、におい分子の構造や物性が重要であることを強調している。さらに、具体的な複合臭の解析例として、スターアニス、パチュリ、茶の分析例を示している。第4章は、白檀、乳香、スターアニス、食品飲料(茶、日本酒)などの具体的な素材を例に挙げながら、著者の研究成果や一般的事実をもとに解説を行い、より実践的な内容へ展開している。第5章では、におい分子の構造(骨格、位置、官能基、幾何、立体)とその特徴の相関に関する知見を有機化学的観点から繰り返し述べており、第1章の理解力がより一層のにおいの分子が作るかおりの世界の解明に重要であることを再認識させる内容となっている。

なお、文中にはコラムがたくさん散りばめられており、読み手に飽きさせない工夫が見られ、著者の私見と思いが込められている。私自身、においを有機化学的観点から捉えて研究を行なっている者として、研究の背中を押されたような大変心強い書籍だと思う。こういった書籍が増えることが、曖昧であったにおいの科学をエビデンスに基づいた理解につながる推進力になると確信する。大学学部1年生を念頭に執筆されたということではあるが、生活の中でにおいを趣味として扱う、あるいは興味を持つ、普段は化学とは無縁な方々への入門書としても有用な書籍ではないだろうか。

山口大学大学院創成科学研究科 赤壁善彦
(日本味と匂学会 著作物利用許諾 令和3年12月16日)

Chem-Station(ケムステ)化学書籍レビュー

掲載日:2021/10/18

レビューが掲載されました。上記リンクからご覧ください。

「現代化学」2021年8月号(東京化学同人)

「現代化学」2021年8月号(東京化学同人)

掲載日:2021/07/19

「化学」2021年7月号(化学同人)

「化学」2021年7月号(化学同人)

掲載日:2021/06/15

読者モニターレビュー【化学系大学生様】

掲載日:2021/05/27

この本はにおいに注目して,有機化学の基礎(分子の相互作用,立体配置など)を学んだ後,実際の香料化学の研究例を紹介したものである。前半は大学初年度レベルの有機化学の講義で取り扱われる事項とNMRなどの有機化学測定法の概略が説明されていた。後半ではにおいの研究手法や様々なにおいに関連する物質の解析例が紹介されていた。

読者のレベルとしては有機化学の概略を知りたいと思っている大学生 (文理問わず) や高校生であるのではないかと思う。高校生が本書を読んだとしても大まかに内容を理解できるぐらい本文は平易な表現が用いられていると感じた。また文中のコラムなども興味のそそられる内容が多かった。有機化学の概略とにおいの研究手法について知りたいという人にとってはよい本であるのではないかと感じた。