プロジェクトマネジメントとは何か - 「計画の遂行」から「価値の生成」へ -

プロジェクトマネジメントとは何か - 「計画の遂行」から「価値の生成」へ -

  • 桑子 敏雄 コンセンサス・コーディネーターズ代表理事 博士(文学)

現在の予測困難な環境下におけるプロジェクトマネジメントのあり方について問い直す

ジャンル
発行年月日
2026/05/01
判型
A5
ページ数
192ページ
ISBN
978-4-339-05285-5
プロジェクトマネジメントとは何か - 「計画の遂行」から「価値の生成」へ -
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定価

2,860(本体2,600円+税)

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  • 内容紹介
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【読者対象】
本書は、プロジェクトマネジメントに携わる実務者、公共事業やまちづくり、合意形成に関わる行政・企業・地域関係者、ならびにプロジェクトマネジメントを理論的に捉え直したい研究者・学生を主な対象としている。
プロジェクトを計画どおりに進めることの意味をあらためて考え、プロジェクトの本質に向き合いたい読者に向けた一冊である。

【書籍の特徴】
本書は、著者の実践経験と理論的考察にもとづいて、計画や成果物の達成を中心とした枠組みが、多くのプロジェクトにおいてどのような課題を抱えているのかを明らかにする。目的・目標・成果物の関係を整理し、プロジェクトを通して価値がどのように生成されていくのかを描き出す点に、本書の独自性がある。

【各章について】
本書の前半では、ルーティンおよびプロジェクトの基本的な考え方を整理する。中盤では、プロジェクトマネジメントの構造を論じる。後半では、合意形成やステークホルダーとの関係に焦点を当て、価値がプロジェクトのプロセスの中で生成されていくという新たなプロジェクトマネジメントの姿を提示する。

【おもな目次】
第Ⅰ部 人間の行為を捉える枠組み―ルーティンとプロジェクト―/第1章 ルーティンとプロジェクトを理解する/第2章 ルーティンの安定性/第3章 ルーティンとリスク
第Ⅱ部 プロジェクトを立ち上げる/第4章 プロジェクトはなぜ始まるのか―その必要性と構想―/第5章 プロジェクトの構成要素
第Ⅲ部 プロジェクトを動かす/第6章 プロジェクトの推進体制―人と関係のデザイン―/第7章 プロジェクトを動かす中核的営み―コアマネジメント―/第8章 複数のプロジェクトをどう束ねるか―プログラムとポートフォリオ―
第Ⅳ部 プロジェクトマネジメント理論の歴史的展開/第9章 プロジェクトマネジメントの理論はどのように発展してきたか
第Ⅴ部 価値生成変動時代のプロジェクトマネジメント/第10章 価値生成のプロセスとプロジェクトマネジメント/第11章 危機の時代の価値生成型プロジェクトマネジメントの意義と役割

【読者へのメッセージ】
本書は、プロジェクトマネジメントの既存の知見と実践を確実な土台としながら、現場の経験と理論の往復を通して、現代のプロジェクトが直面する課題に応答する新たな視座を提示している。プロジェクトを計画や成果物の達成として捉えるだけでなく、その過程において目的が問い直され、関係者との相互作用のなかで価値が生成されていく営みとして描き出すことを試みた。プロジェクトとは何か、マネジメントとは何かをあらためて考えたい読者に、本書がプロジェクトについての思考を深めるための確かな手がかりとなることを願っている。

【本書のキーワード】
プロジェクトマネジメント/計画の遂行/目的と目標/成果物/合意形成/ステークホルダー/公共プロジェクト/まちづくり/PMBOK/価値創出/価値生成/

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

わたしたちは多様な行為を積み重ねながら生きている。毎日の行為を振り返ってみるときに気づくのは,行為には習慣として繰り返し行う行為と,まだ実現していない目標や目的に向かって行う行為という対照的なタイプがあるということである。

一般に,反復性と継続性をもち,日常の安定性と持続性を支えるものとして位置づけられる行為群は,「ルーティン」といわれる。他方,期限をもって特定の目的の達成のために向かうものとして,また,一回的な活動に属するものとして性格づけられる行為群は,「プロジェクト」という枠組みによって捉えられる。

「ルーティンとプロジェクト」によって捉えられる行為は性格を異にするが,排他的ではない。

たとえば,「脂肪の少ない食事をとる」という一つの行為は,それが日常の一部として繰り返されているのであれば,ルーティンとして捉えることができる。他方,それがダイエットという目標に向けて計画的に実行されているのであれば,プロジェクトのなかの行為として位置づけられる。このように,ルーティンとプロジェクトによって捉えられる行為の性格は,行為がどのような意図と文脈のもとに実行されているかによって違ってくる。

ルーティンは,プロジェクトの遂行を支える基盤をなす。規則正しい生活や準備の行為は創造的な挑戦のための土台である。他方,プロジェクトは,ルーティンに新たな目的と活力をもたらす。挑戦が習慣を変え,日常の行為に新しい意味を与えることもある。ルーティンとプロジェクトは互いに補完し合いながら,わたしたちの活動にリズムと緊張感を与えている。

本書『プロジェクトマネジメントとは何か』は,「ルーティンとプロジェクト」という行為理解の枠組みを基盤として,現代におけるプロジェクトのあり方を根本から問い直すことを目的とする。

すなわち,ルーティンとプロジェクトという二つの概念は,互いに対照的でありながら補完し合うものであり,個別にではなく一対のセットとして人間の活動を捉えるときに,わたしたちの行為を深く捉え,意味づけ,方向づける力を発揮する。それらは行為を理解するカテゴリーであるとともに,わたしたちが自らの行為をデザインしていくための思考のツールである。

本書は,このツールを活用しながら,危機の時代におけるプロジェクトマネジメントの構造と実践を明らかにしようとする試みである。

現代では,人間の重要な活動の多くが「プロジェクト」として捉えられている。企業では,新商品の開発,とくにITプログラムの制作,また,行政機関では,インフラの整備や災害の復興を行う公共事業など,どれもがプロジェクトである。めざす目的を達成するために何をなすべきか,いつまでに達成すべきか,どのような手段や資源(リソース)が必要か,プロジェクトチームの組織はどのようなもので,そこにはどのような人材が必要とされるのか。プロジェクトを遂行しようとするときには,これらの点を踏まえて,プロジェクトを実行しなければならない。

さらに,そうしたプロジェクトを効果的,効率的に遂行するための知的な技術として,「プロジェクトマネジメント」が20世紀中頃から議論・研究され,また実践されてきた。プロジェクトを遂行するためには,プロジェクトマネジメントの手法を踏まえることがいまや不可欠になっている。

しかし,21世紀になって,プロジェクトマネジメントは20世紀に想定されていたのとは異なって,安定した環境のもとで技術的に進行を管理する手法ではありえなくなった。自然災害,感染症,社会の分断,制度の硬直化,国家のありよう,国際関係の緊張や対立・紛争,さらには戦争,そして予測困難な技術の進化。そうした危機の時代において,プロジェクトはしばしば,環境や社会的枠組みの動揺に直面する。

予測不能な変化は,目的の再定義や計画の再構築を迫る。そのとき,プロジェクトマネジメントは固定的に働く管理技術を超えて,行為そのものの再設計の思想と実践へと転じていく必要がある。

本書を構想するに至ったきっかけは,前著『社会的合意形成のプロジェクトマネジメント』(コロナ社,2016年)の出版である。

わたしはこれまで,河川や道路整備,まちづくりといった多くの公共プロジェクトの現場において,対立や紛争を含む状況で,社会的合意形成を中心とするプロジェクトの設計と実施に携わってきた。そこで直面したのは,「計画ありき」で進行する従来型プロジェクトの限界であった。固定化されたプロジェクトの目的に向かって突き進むプロセスが対立・紛争,ときには裁判に直面していたのである。

対立・紛争の解決という仕事を通して気づいたことは,プロジェクトをあらかじめ固定された計画として考えてはならないということ,むしろ,プロジェクトはダイナミックな変化のなかで進行するプロセスであるべきこと,プロジェクトはそのような柔軟なプロセスとして設計・推進しなければならないということであった。

本書は,ルーティンとプロジェクトの考察を通して,わたしたちの行為を危機の時代にふさわしいものとして捉え直すための枠組みを提供する。この考察を通じて,「プロジェクトマネジメントとは何か」という問いに対し,理論と実践の両視点から「計画の遂行」から「価値の生成」へと向かうことで答えようとするものである。

本書は,わたし自身がこれまで多数の公共プロジェクトに携わりながら蓄積してきた実践経験と,並行して行ってきた理論的研究,そして各地の自治体や企業・大学などでの研修・講義活動を基礎としている。

わたしが本書の読者として想定しているのは,プロジェクトとは何かを基礎から理解したいと願う人びと,すでにプロジェクトに携わった経験を持ちながら,その構造や本質を改めて問い直したいと考える実務者,あるいはプロジェクトの困難さを実感し,より深くマネジメントを学び直そうとしている人びとである。

たとえば,大学などでPBL(プロジェクトに基づく学習)に取り組む学生や教員,企業で新規事業や変革推進に従事するビジネスパーソン,また公共的プロジェクトに携わる行政職の方がたなど,本書が多様な現場での思考と実践の触媒となることを願っている。

読者のみなさんには,本書を通じて,プロジェクトマネジメントとは何かという問いに,改めて深く向き合っていただければ幸いである。

本書が,危機の時代に未来を構想しようとする読者の思索と実践の一助となることを願っている。

2026年3月
著者しるす

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

第Ⅰ部 人間の行為を捉える枠組み─ルーティンとプロジェクト─

1.ルーティンとプロジェクトを理解する
1.1 生活に埋め込まれたルーティンとプロジェクト 
1.2 ルーティンとプロジェクトの補完関係 
1.3 ルーティンとプロジェクトの関係にかかわる問題 
1.4 行為を理解するための4段階のアプローチ 

第Ⅱ部 ルーティンを支えるものと崩すもの

2.ルーティンの安定性
2.1 繰り返しのなかに宿る意味─ルーティンとは何か─ 
2.2 習慣は人をつくる─個人の性格形成─ 
2.3 組織文化・組織風土という無意識の構造 
2.4 ルーティンを健全に保つ知恵─ルーティンマネジメント─ 
2.5 効率化と標準化 
2.6 ルーティンのもろさと更新 

3.ルーティンとリスク
3.1 内からの揺らぎ─個人の内部リスク─ 
3.2 外からの影響─個人の外部リスク─ 
3.3 組織をむしばむ構造的リスク 
3.4 巨大リスク(メガリスク)の到来 
3.5 ルーティンの転換─プロジェクトシフトの要請─ 

第Ⅲ部 プロジェクトを立ち上げる

4.プロジェクトはなぜ始まるのか─その必要性と構想─
4.1 プロジェクトを要請する条件とは 
4.2 発案者のまなざし 
4.3 プロジェクトとプロジェクトマネジメントとは何か 
4.4 プロジェクトを宣言する 

5.プロジェクトの構成要素
5.1 プロジェクトのスタートとゴール 
5.2 目的,目標と成果物の位置づけ 
5.3 価値を提供するプロジェクトへ 
5.4 プロジェクトの視野と射程としてのスコープ 
5.5 プロジェクト達成のための作業(タスク)の分解と再構成 
5.6 WBS(作業分解構造)という思考技術 
5.7 時間をデザインする─スケジュールとガントチャート─ 
5.8 マイルストーン 
5.9 スケジュールとマイルストーンの連携 
5.10 プロジェクトの変更と向き合う─スコープ・クリープとスコープ・リープ─ 
5.11 プロジェクトの制約条件 

6.プロジェクトの推進体制─人と関係のデザイン─
6.1 プロジェクトを構成する人びと 
6.2 プロジェクトメンバーの選出と招集 
6.3 プロジェクトマネージャの役割と責任 
6.4 プロジェクトリーダーのもつべき実践知 
6.5 プロジェクトマネージャとプロジェクトリーダーの関係 
6.6 プロジェクトアドバイザーと外部知の導入 
6.7 プロジェクトチームの構造 
6.8 心構え(マインドセット)のプロジェクトシフト 
6.9 協働と信頼のマネジメント─リーダーシップとは何か─ 

7.プロジェクトを動かす中核的営み─コアマネジメント─
7.1 プロジェクトの中核となる12の領域 
7.2 リソースマネジメント─資源の最適配置─ 
7.3 スケジュールマネジメント─時間の構造化─ 
7.4 コストマネジメント─予算の制約への対応─ 
7.5 調達マネジメント─外部資源の戦略的活用─ 
7.6 品質マネジメント─価値の達成度─ 
7.7 ステークホルダーマネジメント─関係性の構築と調整─ 
7.8 合意形成という知的実践─対話と意思決定の技法─ 
7.9 コミュニケーションと情報のマネジメント 
7.10 プロジェクトマネジメントの倫理 
7.11 倫理的価値のマネジメント 
7.12 リスクとともに歩む─リスクマネジメントの核心─ 

8.複数のプロジェクトをどう束ねるか─プログラムとポートフォリオ─
8.1 スケールの拡張─プロジェクトからプログラム,ポートフォリオへ─ 
8.2 プログラムマネージャの視座 
8.3 戦略的全体像としてのポートフォリオ 
8.4 複合的リスクの管理へ─ポートフォリオのリスクマネジメント─ 

第Ⅳ部 プロジェクトマネジメント理論の歴史的展開

9.プロジェクトマネジメントの理論はどのように発展してきたか
9.1 日本におけるプロジェクトマネジメントの発展とその背景 
9.2 欧米における理論の系譜 
9.3 ウォーターフォール型という古典的枠組み 
9.4 アジャイル型という柔軟な実践知 
9.5 ハイブリッド型という調和の試み 
9.6 価値創出型への理論的展開 
9.7 価値創出型プロジェクトのマネージャ 

第Ⅴ部 価値基盤変動時代のプロジェクトマネジメント

10.価値生成のプロセスとプロジェクトマネジメント
10.1 危機の時代がわたしたちに突きつける問い 
10.2 プロジェクトマネジメントと基底的価値 
10.3 地球の危機と価値の臨界 
10.4 価値生成の構造 
10.5 危機の時代のプロジェクト実践者像 
10.6 価値生成型プロジェクトマネジメントと合意形成技術 

11.危機の時代の価値生成型プロジェクトマネジメントの意義と役割
11.1 危機の時代におけるプロジェクトの役割 
11.2 価値の物象化と「失われた三〇年」 
11.3 プロジェクトマネジメントの内部構造から発生するリスク 
11.4 危機の時代のプロジェクトシフト─価値生成型マネジメントへ─ 

参考文献
著者が従事した主要な公共プロジェクト一覧
おわりに
索引

桑子 敏雄(クワコ トシオ)

【著者紹介】
哲学の研究をベースにしつつ、公共事業やまちづくり、環境・インフラ分野のプロジェクトにおいて、合意形成とプロジェクトマネジメントの実践と研究を長年にわたり行っている。
国や自治体のプロジェクトに関わるなかで、計画どおりに進めることが必ずしも現実の課題解決や価値の実現につながらない場面を数多く経験し、プロジェクトを単なる計画の遂行としてではなく、関係者との相互作用のなかで価値が生成されていく営みとして捉え直す理論を構想してきた。
現在は、一般社団法人コンセンサス・コーディネーターズ代表理事として、実務の現場と理論の往復を続けている。 

【略歴】
群馬県太田市生まれ。
1975年に東京大学文学部哲学科を卒業、1980年に同大学院博士課程単位修得退学。東京大学文学部助手を経て、1994年に博士(文学、東京大学)の学位を取得した。
1981年に南山大学文学部講師、1984年に同助教授、1989年に東京工業大学工学部助教授、1996年に同大学院社会理工学研究科教授を務めたのち、2018年より東京女子大学現代教養学部教授を務め、2022年に退職した。
この間、1983〜84年にケンブリッジ大学客員研究員、2002〜03年にフランス国立社会科学高等研究院客員教授、2009〜11年に大連大学客員教授として研究活動を行っている。

哲学研究と並行して、公共政策や社会的実践の現場に深く関わり、これまでの研究・実践の成果である「社会的合意形成技術」と「プロジェクトマネジメント技術」を統合する形で、2014年に一般社団法人コンセンサス・コーディネーターズを設立した。
研究・著作活動と並行して、河川、海岸、道路、森林管理、農村インフラ整備、都市計画など、公共政策に関わる事業を中心に、行政と市民の間に立って対立や紛争を解決するコンサルティング活動に従事し、その理論化と方法論化にも取り組んできた。

【著作】
著書には、『エネルゲイア アリストテレス哲学の創造』(東京大学出版会、1993年)をはじめ、『気相の哲学』(新曜社、1996年)、『空間と身体――新しい哲学への出発』(東信堂、1998年)、『環境の哲学――日本の思想を現代に活かす』(講談社学術文庫、1999年)、『西行の風景』(NHKブックス、1999年)、『感性の哲学』(NHKブックス、2001年)、『理想と決断――哲学の新しい冒険』(NHKライブラリー、2003年)、『わたしがわたしであるための哲学』(PHP研究所、2003年)、『風景のなかの環境哲学』(東京大学出版会、2005年)、『空間の履歴――哲学エッセイ集』(東信堂、2009年)、『生命と風景の哲学』(岩波書店、2013年)がある。
また、社会的実践に関する著作として、『社会的合意形成のプロジェクトマネージメント』(コロナ社、2016年)、『わがまち再生プロジェクト』(KADOKAWA、2016年)、『何のための「教養」か』(ちくまプリマー新書、2019年)、『風土のなかの神々』(筑摩選書、2023年)などを刊行している。