アンテナ工学 - 基礎理論から解析・設計・測定・評価まで -
アンテナ工学の決定版!理論に基づく設計・評価手法を学び、研究・実務に役立つ知識を修得
- 発行予定日
- 2026/12/中旬
- 判型
- A5
- 予定ページ数
- 264ページ
- ISBN
- 978-4-339-01509-6
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
無線通信を支えるアンテナ工学について,電磁気学の基礎から解析・設計・小型化・高利得化・測定・評価までを体系的に解説。理論と実践を結び付け,設計・解析に必要な知識を修得できる1冊。付録には理論式の導出や試作法も掲載。
☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます
ヘルツによるマクスウェルの方程式の検証実験や,マルコーニの無線通信の実現に使用されたループアンテナとモノポールアンテナは,用途や周波数は異なるが現在の無線通信にも利用されている。これまでに数多くのアンテナがさまざまな用途で使用されているが,その原理は無線通信の黎明期から変わることはない。近年は計算機シミュレーションで自由にアンテナの設計が可能となっているが,給電部付近の微細構造のモデル化や媒質定数が正確に得られていないため,計算と製作したアンテナに乖離が生じることがある。計算機の能力が今後も向上すれば,乖離を小さくすることは可能となる。しかし,そのために膨大な計算資源を用いなくても先人たちの残してくれた理論や近似式を使用すれば,瞬時に必要なアンテナに関の特性を推定することができる。このような先人たちの遺産を有効に活用してアンテナの原理を理解して設計することは,アンテナに携わる技術者にとって不可欠である。
1990年代半ば,携帯電話が急速に普及していく時期に,移動体通信時代を見据えて『新アンテナ工学』を執筆した。その当時と現在での相違点は,情報量の増大に伴う高周波数化であり,アンテナ素子においては微細な周期構造を利用して特性改善を図るものが注目されてきた。高周波数化されるとアンテナの高利得化が必要とされ,一時は衛星通信などに限定されていた開口面アンテナが改めて注目されるなど,歴史が繰り返されるのはアンテナの世界においても同じである。
未来予測をすることが目的ではないが,アンテナにおいては,ある時代に注目され精力的に研究開発が行われたものが,数十年といった年月を経て,新たな用途として着目されて脚光を浴びること事例にはことかかない。無線を利用したシステムが存在する限りアンテナは不可欠なものであり,今後もさまざまな用途に応じて新たな構造が見出されていくことだけは間違いない。したがって,過去から蓄積された知識を基礎から応用まで学んでいくことはアンテナ技術者に必要とされている。
本書は以上のような背景のもとに,アンテナの基礎から具体的な設計法について要点を絞ってまとめたものである。アンテナの理論はマクスウェルの方程式に基づくが,その前提として電磁気学を理解することが望まれる。電磁気学については多くの名著もあるが,その要点を物理的現象から説明して,式の意味を理解できるように1章の前半にまとめてある。電磁気学の復習も兼ねて目を通してもらいたい。また,アンテナの特性を定義する諸定数については1章の後半で示した。計算機シミュレーションでは,その原理やアルゴリズムの知識がなくても容易に使うことができる。しかし,得られた結果が物理的に正しいかどうかを判断するためにも,アンテナ解析法についての理解が必要なので,2章では代表的な手法として,モーメント法,物理光学法,幾何光学近似,FDTD法,有限要素法について解説している。そして,最も基本的な半波長ダイポールアンテナについては,古典的な近似手法ではあるが精度の高い起電力法の詳細も示している。
3章は基本的なアンテナについて,その動作原理を伝送線路の形状の一部を変形することでアンテナとして理解できることを明らかにしている。また,その基本特性を2章の解析法や高精度の近似計算によって示している。無線機器の小型化が図られる中,アンテナの小型化も必須である。
4章はアンテナを小型化するときの理論限界値を示し,具体的な小型化手法について解説する。特にアンテナが設置される筐体を利用して,アンテナ素子を見かけ上小型化できる手法では,その理論的な裏付けとなる特性モード解析を解説する。一方,衛星通信などの長距離無線通信には高利得のアンテナが必要となる。また,ミリ波帯やテラヘルツ帯では伝搬損失が増加するため,アンテナの利得によって補償しなくてはならず,高利得のもの必要になる。5章では最も代表的なパラボラアンテナの動作原理と特性の理論値を詳細に説明し,レンズアンテナ,そして平面構造で高利得アンテナを実現するリフレクトアレーについても解説する。アンテナの高機能化するための手法として複数の素子アンテナを配列するアレーアンテナがあり,各素子の振幅と位相を制御し指向性を瞬時に最適なものに調整する。
6章では,アレーアンテナの基礎と所望の指向性を実現するためのさまざまな手法について解説し,アレーアンテナの給電法や応用例についても示す。そして,7章ではアンテナの特性を評価するために必要な測定法を解説する。アンテナの基本的な特性である入力インピーダンスと指向性の測定法の原理,また,測定空間を小型化する近傍界測定や,アンテナ用の測定端子を持たない無線機器の測定法も示す。
理論式についてはその導出が明確になるよう記載しているが,本文が冗長にならないように,詳細な式の導出は付録A.1にまとめてある。また,電磁波の解析に用いられるベクトル公式や各種法則,そして座標系によって表記が異なる波動方程式などは付録A.2とした。さらに,設計したアンテナを実際に試作してその電気的特性を評価するための基礎的な製作法について,実験室レベルでの試作の要点と試作事例を付録A.3にまとめた。アンテナの実用化には加工技術や製造ノウハウが不可欠であるが,そのような高度な製作技術の体系的な解説は本書の範囲外とし,本書では入力インピーダンスや指向性などの電気的特性を確認するための試作法に重点を置いている。
本書の出版にあたってご尽力いただいたコロナ社の皆さんに深謝する。なお,本書は読者が必要と考える章から読んでもらい,適宜関係する章を参照してもらうことを勧めたい。新たな無線システムに最適なアンテナの実現や,新しい構造のアンテナを見出すことに本書が役に立てば幸いである。
2026年11月
新井宏之
☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます
1.アンテナ理論
1.1 電磁気学の要点
1.1.1 クーロンの法則と単位
1.1.2 近接作用と電界,電束
1.1.3 磁界とは何か
1.1.4 アンペアの法則
1.1.5 ローレンツ収縮と電流間に働く力
1.1.6 ファラデーの法則
1.1.7 マクスウェルの方程式
1.2 平面波の性質
1.2.1 平面波の伝搬
1.2.2 平面波の境界条件
1.2.3 偏波
1.2.4 伝送線路内を伝搬する電磁波
1.3 アンテナの基礎理論
1.3.1 ベクトルポテンシャルによるマクスウェルの方程式の解
1.3.2 微小電流素子からの放射
1.3.3 微小磁流素子からの放射
1.3.4 アンテナの指向性
1.3.5 半波長ダイポールアンテナの指向性
1.3.6 アンテナの利得
1.3.7 放射抵抗と入力インピーダンス
1.3.8 実効長と受信開放電圧
1.3.9 受信断面積
コラム:マクスウェルの業績
2.アンテナ解析法
2.1 積分方程式による解法
2.1.1 境界条件と起電力法
2.1.2 モーメント法
2.2 等価定理と物理光学法
2.2.1 等価定理
2.2.2 物理光学法
2.3 幾何光学近似とGTD
2.3.1 幾何光学近似
2.3.2 GTD
2.4 FDTD法(有限差分時間領域法)
2.4.1 FDTD法のアルゴリズム
2.4.2 解析対象物のモデル化
2.4.3 励振法と入力インピーダンス
2.4.4 吸収境界条件
2.4.5 アンテナの指向性と電流分布
2.5 有限要素法
2.5.1 汎関数の導出
2.5.2 三角形要素と面積座標
2.5.3 辺要素による重み付き残差法
コラム:近似計算は必要?
3.基本アンテナ
3.1 線状アンテナ
3.1.1 ダイポールアンテナ
3.1.2 折返しダイポールアンテナ
3.1.3 バランとスリーブアンテナ
3.1.4 モノポールアンテナとイメージ法
3.1.5 ループアンテナ
3.2 ホーンアンテナ
3.2.1 導波管の伝送モード
3.2.2 方形導波管の基本モードとH面ホーンアンテナ
3.2.3 角錐ホーンアンテナの指向性
3.4 マイクロストリップアンテナ
3.4.1 マイクロストリップアンテナの動作原理
3.4.2 伝送線路モデルによる入力インピーダンス
3.4.3 方形マイクロストリップアンテナの指向性
3.4.4 磁壁空洞モデルによる入力インピーダンス
3.5 スロットアンテナ
3.5.1 スロットからの放射
3.5.2 導波管スロットアンテナ
3.6 広帯域アンテナ(自己補対アンテナなど)
3.6.1 自己補対アンテナ
3.6.2 対数周期アンテナ
3.6.3 無指向性広帯域アンテナ
コラム:アンテナの名称
4.小形アンテナ
4.1 アンテナの小型化手法
4.1.1 モノポールアンテナの低姿勢化
4.1.2 小型化手法の分類
4.2 小型化の評価指標
4.2.1 下限Q値
4.2.2 アンテナの電気的体積
4.3 小形アンテナの実例
4.3.1 板状逆F型アンテナ
4.3.2 整合回路
4.3.3 誘電体アンテナ(チップアンテナ)
4.3.4 設置地板を利用した小形アンテナ
コラム:小形アンテナとは
5.開口面アンテナ
5.1 開口面アンテナの概要と解析手法
5.2 ホーンアンテナ
5.2.1 円形開口からの放射
5.2.2 指向性の近似モデル
5.3 反射鏡アンテナ
5.3.1 反射鏡アンテナの構造と分類
5.3.2 パラボラアンテナ
5.3.3 複反射鏡を有するアンテナ(等価パラボラ)
5.3.4 反射鏡アンテナの効率
5.4 レンズアンテナ
5.4.1 レンズ形状の決定
5.4.2 各種レンズアンテナ
5.5 リフレクト(トランスミット)アレーアンテナ
5.5.1 リフレクトアレーアンテナの動作原理
5.5.2 リフレクトアレーアンテナの放射効率
コラム:反射鏡アンテナの起源
6.アレーアンテナ
6.1 アレーアンテナの基本特性
6.1.1 アレーファクタと可視領域
6.1.2 アレーアンテナの特徴
6.1.3 共相励振条件
6.1.4 アレーオブアレー
6.1.5 平面アレー
6.1.6 連続波源分布
6.2 指向性合成
6.2.1 二項分布
6.2.2 チェビシェフ分布
6.2.3 テイラー分布
6.2.4 指向性合成法
6.3 マルチビームアンテナ
6.3.1 カージオイド指向性
6.3.2 平面内4方向切替アンテナ
6.3.3 バトラーマトリクスと4方向指向性形成
6.4 アレーアンテナの給電回路
6.5 アレーアンテナの応用例
6.5.1 スーパーゲインアンテナ
6.5.2 到来方向推定法
6.5.3 Van-Attaアレー
6.5.4 八木・宇田アレーアンテナ
コラム:図面の目盛り
7.測定・評価法
7.1 入力特性の測定
7.1.1 反射係数の測定
7.1.2 スミスチャート
7.1.3 Sパラメータの測定
7.1.4 平衡給電アンテナの測定とSパラメータ法
7.2 近傍・遠方界測定
7.2.1 近傍・遠方界の基準値
7.2.2 遠方界測定
7.2.3 偏波特性の測定
7.2.4 利得測定
7.2.5 近傍界測定
7.3 OTA測定
7.3.1 OTA測定の評価量
7.3.2 OTA測定法
7.3.3 簡易型放射電力測定法
コラム:測定誤差
付録
A.1 本文中の式の導出
A.1.1 ベクトルポテンシャルの解
A.1.2 座標系単位ベクトルの変換
A.1.3 起電力法による入力インピーダンス計算
A.1.4 ループ状波源からの放射
A.1.5 Q値と帯域の関係
A.1.6 マクロストリップアンテナの無負荷Qと放射効率η
A.1.7 微小ダイポール間の相互結合
A.1.8 の計算
A.2 ベクトル公式と電磁界の成分表記法
A.2.1 ベクトル公式
A.2.2 勾配,発散,回転とスカラ波動方程式の成分表示
A.3 アンテナ試作法
A.3.1 誘電体基板によるアンテナ試作
A.3.2 銅板によるアンテナ試作
引用・参考文献
索引








