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ベイズ画像処理の基礎

ベイズ画像処理の基礎

マルコフ確率場と呼ばれる確率的グラフィカルモデルに基づく画像処理の入門書。微積分と線形代数の知識を前提とし,必要となる確率・統計やグラフ,数値最適化等の様々な知識を網羅し、扱った内容にはできるだけ具体例を紹介した。

発行年月日
2026/01/23
定価
5,280(本体4,800円+税)
ISBN
978-4-339-02955-0
在庫あり

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読者モニターレビュー【 N/M 様(業界・専門分野:総合情報学[情報科学])】

掲載日:2026/01/26

本書は,マルコフ確率場 (Markov Random Field; MRF) と呼ばれるグラフィカルモデルの一種を用いた,ベイズ画像処理の基礎についての解説がなされている.

まず私自身,数学的な数式を読み解くことに苦手意識があるため,本書の数式が意味するところの深い理解はできていないように個人的には感じる.そのため,本レビュでは概略的に気になる点を中心に記述させていただく.

1章では,本書の守備範囲である画像処理 (Image Processing) についての概略が記載されており,これらの分野をすでに知っている方への復習という意味合いでの解説がなされている.

2章〜7章では,ベイズ画像処理の専門分野に入る前に前提として必要な知識についての解説がなされている.具体的には,2章ではグラフ理論,3章では数値最適化法(数値解析やオペレーションズ・リサーチ等の分野で扱う手法),4章〜7章では確率・統計の分野より,必要な前提知識についての詳細な解説がなされている.

8章〜11章では,本書のメインテーマであるベイズ画像処理に焦点が当てられ,数学的な理論を基にした詳細な解説がなされている.

ただ,まえがきにもある通り,『時間的問題や分量的な問題により,本書では画像処理の問題としてノイズ除去問題しか扱うことができなかった.ベイズ的扱いについても,半ベイズ的な扱いにとどめ,完全なベイズ的扱いまでを紹介するには至らなかった.マルコフ確率場に基づく画像処理の方法はさまざまな画像処理問題に応用されている.その他の画像処理問題への応用については,巻末の引用・参考文献にその一部を挙げている.』とある.

個人的な希望としては,今回紹介しきれなかったその他の画像処理の問題についても,ぜひ続刊にて詳細な解説がなされることを願っている.本書が『ベイズ画像処理の基礎』という名称であるので,『ベイズ画像処理の応用』のような名称で,兄弟書・姉妹書が出版されることを期待したい.

最後に,学生時代に離散数学の分野でグラフ理論を学んだことがあるが,その理論がベイズ画像処理の分野においても活用されている点について,本書を拝読し驚きと発見があった.数式を完全に追いきれずとも,このように既知の知識と最先端の技術が結びつく面白さを実感できたことが,個人的な一番の収穫であった.

読者モニターレビュー【 いたち様(業界・専門分野:評価装置メーカー)】

掲載日:2026/01/22

私の読んだ感想を一文にすると、いい本で難しい本でした。

本書の読書層としては、専門の方、これから専門としていく方に特化して書かれた本だと思います。
ノイズ除去に対するベイズ画像処理および関連の知識について、幅広く且つ、例も混じえて分かりやすく書かれています。
専門の方が、本棚に並べておく1冊としてとてもいい本だと思います。

私は知識の幅を広げるために読んだ読者でして、私のような方がお読みになる時は、1章、5章と8章以降を読んでいただいて、再度1から読むと目的と基礎知識ツールが頭に入りやすいと思うのでオススメです。

読者モニターレビュー【 松岡 大輔 様(業界・専門分野:プログラマ)】

掲載日:2026/01/22

本書は確率モデルに基づく画像処理の数理的基礎を扱っている。本書における画像処理とは、画像に数値的な計算操作を施して必要な情報を作り出す手続きである。そこでなぜ確率モデルが必要かというと、不確実性が存在するからである。たとえばノイズや類似物体の存在といった不確実性が存在する画像から必要な情報を抽出する際に、確率モデルを用いることで、不確実性を数理的に取り扱うことができる。

さらに、本書のタイトルであるベイズ画像処理とは、上記のような画像処理をベイズ推定の枠組みで考えるということである。つまり、画像処理が与えられた画像から知りたい情報を抽出することであるとすると、それは与えられた画像から知りたい情報を事後分布に基づいて推定することに相当する。

本書は技術的なことよりむしろ数理的な基礎に多くの記述を割いており、大学初年度程度の微積分と線形代数の知識を前提にした初歩的な数学から始めて、段階的に必要な数学を学んでいく構成になっている。ゴールは不確実性のもとでの画像処理の数理である。8章以降、ノイズ除去を事例にしながら、二値画像処理から始めて、8ビット画像、そして最終的に確率変数の実現値を離散値から実数全体に拡張したモデルを提示している。

画像処理という工学的なテーマを扱いながらも、どちらかというと数学書としての面白さの側面もある。たとえば個人的に読んでいて面白かったのは6章である。5章までに学んできた内容をもとに、ここで大きく展開して、確率分布の無向グラフ表現を導入する。つまり、無向グラフの頂点集合と確率分布の確率変数を同一視することで、確率分布をグラフ構造を用いて視覚的に表す、確率的グラフィカルモデルである。そして、マルコフ性の議論を介してイジングモデルが導入される。さらに、マルコフ確率場が無向グラフによる確率分布の表現であるのに対して、確率分布を有向グラフで表現したものがベイジアンネットワークである、という形で展開していく。このあたりの展開の堅実さとすばやさがとても面白かった。

そして、このグラフ理論と画像処理の実装を結ぶのがKL情報量である。これを介してモデルを用いた近似計算を行い、パラメータを収束させるアルゴリズムが、本書で提示されている方法論である。

もちろん、数理の解説自体が目的ではない。本書の目的は数理によるモデル化と計算法である。それを確率分布の無向グラフ表現を軸にした簡潔な数理で、ポイントを絞りながら段階的に構成している。そして、その一連の議論を大学初年度程度の数学知識を前提にして順次的に説き起こしているというあたりが、類書に対する特徴であり、本書の教育書としての姿勢であるだろう。