レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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oTreeではじめる社会科学実験入門 - Pythonのインストールから実験の実施まで -
本書は,経済ゲーム実験などに用いられるoTreeというPythonで書かれたフレームワークを用い,社会科学におけるオンライン実験の方法と意義およびその課題,インストールからプログラミングまでを初学者向けに解説する。
- 発行年月日
- 2024/12/27
- 定価
- 3,520円(本体3,200円+税)
- ISBN
- 978-4-339-02948-2
レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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読者モニターレビュー【 Kotora 様(業界・専門分野:知識科学)】
掲載日:2025/01/07
社会人学生になって最初にぶつかった壁が、調査とその分析方法でした。学士課程では社会科学とはまったく別の分野を学んでいたので、データの集め方や分析の仕方が全然分からず、何から手をつければいいのか迷うばかり。講義やゼミで雰囲気は掴めても、自分の研究にどう活かすかまでにはいたりません。
そのような私にとって本書は、実験のやり方やその意義を知るだけではなく、実験設計の全体像を理解する手助けをしてくれる内容となっています。 オンライン実験特有の注意点や工夫についても触れてあり、オンライン実験の意義から、実際のやり方、さらには応用までが丁寧に解説されています。oTreeに関する情報は公式チュートリアルやブログでも手に入りますが、一冊にまとまっていることの強みを感じました。
また、Python初心者や環境設定に不慣れな人でも対応できるよう、ある程度詳しく書かれているのも私にとって大きな魅力でした。自分で調べながら進められるような配慮が随所に感じられますし、公式ホームページなどでのフォローアップも今後期待できそうです。
社会科学の実験やオンライン調査に興味がある人にとって、大きな味方になってくれる本書。特に、実験経験が少ない方や初心者には、研究を形にしていくための道筋を示してくれる一冊だと思います。
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読者モニターレビュー【 Manny-Lab 様(業界・専門分野:公設試験研究機関・機械 > 学習や深層学習を用いた統計モデリング)】
掲載日:2024/12/27
本書の特徴を、一言でまとめるとすれば「oTreeを利用したいとき、最初の最初に読むべき本」と言えます。
最初にお断りすると、評者の専門は、社会科学系では「ありません」。これまで、時系列データを中心に、機械学習や深層学習を用いた統計モデリングに従事してきました。その延長線上で、社会科学実験の存在を知り、興味を持ったところです。
このような評者が感じた、本書の特徴は大きく3つあります。
(1)社会科学実験の「概要から注意点まで」を含めた初心者向けの記載が詳しい。
(2)手を動かして実験をするための「実践的な事例」が複数記載されていて楽しい。
(3)筆者のこれまでの実践上の「ノウハウ」が細々と書かれているので助かります。
社会科学実験初心者の評者にとっては、(1)のように記載があることは非常に嬉しいです。興味を持ったテーマとしても、勘所が掴めなくて何から手を付けて良いか分からない中で、この本があれば最初の一歩を十分に始められるのは最高です。(2)、(3)は、実践するうえでは言わずもがなの記載で、これも満足させて頂きました。
最後に、本書後の今後の要望を、幾つかあげさせて頂きたいと思います。まずは、oTreeのアドバンスドな解説が欲しいです。評者個人としては、ボットを使った事例が知りたいです。二つ目は、付録でクラウドを利用した説明があります。「クラウド破産」という言葉もあるように、クラウド利用には注意も必要です。是非、料金などを含めて、様々なクラウドでの事例提供を増やして頂きたいと思います。
以上のような、初心者向けの特徴や今後の展開への期待も含めて、非常に価値の高い一冊になっている本です。是非、お勧めいたします。
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読者モニターレビュー【 中田 星矢 様 東京大学(業界・専門分野:社会心理学)】
掲載日:2024/12/16
本書は、oTreeを用いて社会科学実験を実施するための、実践的な解説書です。
1章や9章では社会科学実験の概観のみならず、実際に実験をする際に注意すべき点や、プレレジ・レジレポについても紹介されています。参考文献も挙げられているので、社会科学における実験研究について学びたい方には有用な導入となるでしょう。
メインの内容であるoTreeの基本的な使い方については、もちろん公式レファレンスで学ぶこともできますが、本書では参加者間マッチングの具体的な方法、作成した実験をサーバへアップする方法、プログラミングのための環境構築など、初学者がつまずきやすそうなポイントも押さえています。
実際に実験プログラムを作成していると本書だけでは解決できないトラブルにも直面するでしょう。そんなときに、oTreeのtipsをどうやって検索したらいいのかという情報も書かれています。さらに学びたい方は、著者によるサポートページも参照するとよいでしょう。
非常に教育的な書籍ですので、oTreeを用いた社会科学実験の基本を学びたい人、教えたい人におすすめです。