レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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本書は,複数の主体が関わる状況に対して,主体の協力によって得られた価値を主体間で分配するための考え方の一つである協力ゲーム理論の入門的な内容である。自学自習ができるように,複数の問と章末問題、その解答も掲載した。
- 発行年月日
- 2024/08/08
- 定価
- 4,840円(本体4,400円+税)
- ISBN
- 978-4-339-02841-6
レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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読者モニターレビュー【 DHMO様(業界・専門分野:心理学)】
掲載日:2024/08/06
本書は、複数の主体が関わる意思決定問題に興味があり、主な知的道具立てを揃えたい場合に推薦できると思われる。
導入では、細かく問(章末問題とは別に)と例が挟まれ読者が思考することを通した理解が促される点、代表的な問題と解や特徴の紹介では様々ある議論や深入りした証明は参考文献を指定してそちらに譲る形をとっている点など、「いったん理解する」にあたって寄り道を最小限に進められることを意図したものと思われ、それらに好感が持てる(読み手の立場によって好みは分かれるかもしれないが)。
全体に、現実場面の数学的表現に関わる話題は抑えている印象で、上述のことからもある程度の総覧的理解に向いている。そのような位置づけと読めるため、紹介している応用的トピックにも「次に当たる文献」へ適切に案内がなされていることもありがたい。
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読者モニターレビュー【 ヤマダ様(業界・専門分野:IT関係)】
掲載日:2024/08/06
本著はゲーム理論における協力ゲームの基礎理論から始まり、基本的な解であるコア、シャープレイ値、仁を説明した後、割り当て問題や資産分配問題などの応用例について解の解説を行っている。
ゲーム理論を扱った書籍の中でも、特に協力ゲームに関する数学的な解説を含む専門書は少ないと感じられる中、文中の豊富な問や章末問題で読者の自学自習を助ける本書のような書籍は貴重である。
ただし、筆者もまえがきで指摘しているように、本著は現実の問題を協力ゲームとしてモデル化することではなく、あらかじめ特性関数型の協力ゲームの解析を行い、解を示すことに焦点を当てているため、前者を期待して読まれる方は留意されたほうが良いだろう。また、著者の前著「確率的ゲーム理論」(コロナ社)から続く形で8章が記載されていることもあり、モデルの定式化に関しては前著と併せて読まれるのがよかろう。
(前著はゲーム理論において古典的な非協力ゲームを取り扱っており、本著とは兄弟のような位置関係にあるため、ゲーム理論を総合的に学習されたい読者にもおすすめである)
更に近年研究が進んでいる確率的特性関数型の協力ゲーム(提携の成員が協力することで得られる価値が確率変数として扱われる)についても若干だが触れられており、豊富な参考文献とともに次の学習の道しるべとなっている。