レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

人工衛星・惑星探査機のための宇宙工学

人工衛星・惑星探査機のための宇宙工学

天体運動の基礎から,気象衛星や観測衛星に代表される地球周回衛星や,惑星,衛星などを探査する宇宙探査機の地上からの打上げ,目標軌道への投入などを題材に,基礎となる数学・物理がどのように宇宙工学につながるのかを解説した。

発行年月日
2024/06/28
定価
5,500(本体5,000円+税)
ISBN
978-4-339-04689-2
在庫あり

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

読者モニターレビュー【 天ぷら 様(業界・専門分野:制御工学、強化学習)】

掲載日:2024/08/20

本書では、宇宙工学を学ぶ際に必要な工学・物理学・数学・天文学的知識が紹介されています。
自分は全く専門外なのですが、聞き覚えのあるケプラーの法則から始まり各天体の知識、ロケットの打ち上げから地球および各天体の軌道まで、数式も交えながらとても詳しく述べられている印象でした。
本文最後の7章では、それまでの章でも必要とされるような数学・物理学的知識が記されているため、もしわからないところがあれば適宜参照するような形でも良さそうです。
門外漢の自分も読むだけで宇宙工学に興味を抱く、大変魅力的な書籍だと感じました。

「読売新聞」夕刊READ&LEAD(2024年7月16日)

掲載日:2024/07/16

読者モニターレビュー【 佐藤 実 様 東海大学理系教育センター(業界・専門分野:宇宙エレベーター,物理教育研究,科学映像教材)】

掲載日:2024/07/04

人類が誕生してからずっと、天は見上げて想いを馳せる対象でした。それがようやく、出掛けていって旅する場所になりました。いままさに、特別な人ではなくても宇宙を渡り、星を巡ることのできる時代が、幕を開けようとしています。すでにひと足先に、人類がおくり出した探査機たちは、冥王星を含めすべての惑星を訪ね、この瞬間も太陽系を飛びまわっています。なかには太陽圏をとび出して、星間空間をつき進んでいるものさえいます。

いま世界は、宇宙に開かれています。情熱とチャレンジ精神さえあれば、誰もが宇宙に挑戦できる時代がやってきました。『人工衛星・惑星探査機のための宇宙工学』は、そんな時代にふさわしい、太陽系の歩き方を案内する完璧なガイドブックです。
ガイドブックといえば名所案内。この本では、惑星や衛星、小惑星など、太陽系内のさまざまな天体の概要が網羅され、紹介されています。カラー口絵をはじめ図版が豊富で、写真を眺めているだけで、この景色が見たいあの場所にも行ってみたいと、わくわくしてきます。
交通案内も万全です。地球周回にしろ惑星探査にしろ、どのようにすればそこにたどり着けるのか、その行程についても懇切丁寧に記されています。図に描かれた軌道を追うだけで、こんな方法があるのかあんな経路もとれるのかと、どきどきしてきます。

地球周辺や太陽系内の移動には、ニュートン力学が欠かせません。万有引力を受けながら三次元空間を運動する物体の運動を示すには、どうしても数式の助けが要ります。でも大丈夫、読者が迷うことないよう、要所要所に的確な解説が用意されています。著者に手を引かれるまま進んでいけば、いつの間にか宇宙空間を旅していることに気づくことでしょう。
しかも最後の章には、この本で使われている数学や物理の解説まで付いています。この章だけで、教科書一冊分の価値があります。なんて至れり尽くせりのガイドブックなのでしょう。

わたしたち自身が実際に宇宙を旅することができるようになるには、もう少し時間がかかるかもしれません。けれども、想像の翼を広げることはできます。皆さんもぜひこの本を手に、太陽系を旅してみてください。それはきっと、いつかやって来る未来ではなく、皆さんが自ら手繰り寄せる現実となることでしょう。

読者モニターレビュー【 napo 様(業界・専門分野:IT業界)】

掲載日:2024/06/24

本書は、太陽系の惑星の特徴からロケット方程式、人工衛星の軌道設計まで幅広くカバーしています。
数式を理解するためには大学レベルの微分積分、線形代数、物理学の知識が必要ですが、第7章で基本的な概念が解説されており、専門知識がなくても挑戦可能だと思います。
専門外の方には数式が難解に感じられるかもしれませんが、すべての数式を追う必要はなく、内容は丁寧に説明されています。
私自身、知識が不足し、また忘れている部分もありましたが、理解に支障はありませんでした。
数式と理論だけでなく、適用された実際のミッションの例も記載されており、理解や知識を深めるのに役立ちました。
宇宙業界に関わりたい方、すでに関わっている方や、宇宙自体に興味がある方に特におすすめの一冊です。

【書評】JAXA宇宙科学研究所 澤井 秀次郎 教授 (JAXA SLIMプロジェクト プロジェクトサイエンティスト)

掲載日:2024/06/19

本書は、軌道力学やロケット工学の基礎をわかりやすく整理しており、これから学ぼうとする学部学生や、人工衛星や探査機の現場で研究開発に取り組むエンジニア、更にはこれから天体探査ミッションを検討しようとする研究者等にも是非とも手に取ってほしい一冊である。
本書の大きな特徴のひとつとして、宇宙工学を題材として現場の研究開発と基礎的な数学や物理がどのように結びつくのかを平易に解説している点がある。たとえば、有名な公式の導出を丁寧に解説しており、学生諸氏にとっては、これまで自身が取り組んできた数学や物理の知識がどのように宇宙開発の現場で役立っていくのかを実感できる良書である。式の展開が続く教科書は全体像がわかりにくくなりがちであるが、本書では随所に具体的・現実的な問題設定に基づく「例題」があって、数式遊びになることはない。
本書の例題やコラムは現場に即しているため、軌道力学の数式を正確に暗記していない分野外のエンジニアにとっては、これらを見るだけでも大いに助けになるはずである。また、特に若い読者の中には、本書で必要な基礎的な数学や物理に精通していない方もいるかもしれない。本書はそういう読者もないがしろにしない。第7章には必要な基礎が平易に整理されている。
また、軌道力学・ロケット工学としての教科書としては異例であるが、第2章では太陽系天体の概要やそれらへの探査の歴史がまとめられている。本書を学ぶモチベーションを大いにかき立てられると同時に、ひとつの独立した読み物としても迫力がある。