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異種接合材の設計のための破壊力学

異種接合材の設計のための破壊力学

異種接合材において,き裂のような欠陥による応力が無限大となる場合は,通常の応力集中と異なり理解が難しい。本書では,材料組合せをパターンとして表すことで理解の便を図り,実務的な専門書となるように解説した。

発行年月日
2023/11/16
定価
4,950(本体4,500円+税)
ISBN
978-4-339-04685-4
在庫あり

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

読者モニターレビュー【 鈴木 靖昭 様 鈴木接着技術研究所(業界・専門分野:構造接着,接着継手の破壊条件,信頼性・耐久性評価,寿命予測)】

掲載日:2023/11/28

本書で取り上げられている代表的な接着継手として,重ね合せ継手および突合せ継手があるが,両者とも接着層端部に大きな応力集中すなわち応力特異性が生じるため,接着強度を正しく評価することが困難である。両接着継手の破壊条件としては,これまで最大主応力基準,最大主ひずみ基準,最大せん断応力基準,von Misesの相当応力基準,などが検討されてきた。しかし,それらの研究では,応力特異性が正確に考慮されていない。
評者は過去において,本書で検討されている突合せ継手の接着強度と接着層厚さとの関係の自身の実験結果を,応力特異性を示す接着端に一定の大きさの境界層を設定する方法(Neuberの有効容積理論または中西の境界層理論と同様の古典的方法)を用いて説明した。しかし,この境界層の厚さは,実験結果に適合するように決めるというもので,理論的な正確さを欠くものである。

ところで本書の主体的テーマである特異応力場の強さISSFは,まさに前記の問題を正確に理論的に説明するものであり,突合せ継手のみならず重ね合せ継手など,すべての接着接合材に適用できる,非常に有用な指標である。全ての材料組合せに適用できる精度の高い図表や数値が豊富に記載してあるため,接着技術者にとってお薦めの一書である。

読者モニターレビュー【 宮崎達二郎 様 琉球大学(業界・専門分野:機械工学)】

掲載日:2023/11/21

本書では,異種接合材のき裂問題の考え方から最新の研究成果までわかりやすく解説されています.縁界面き裂の特異応力場は界面端部による特異応力場とき裂による特異応力場が重なったものであり,その理解には界面端部による特異応力場が重要であるなど学ぶ上で重要な点や均質材のき裂問題との同異点が明瞭に書かれており,異種接合材のき裂問題を初めて学ぶ読者にも学びやすくなっています.本書の終わりには,異種接合材の強度評価に対する破壊力学的アプローチとしてISSF法,仮想き裂法が紹介されています.き裂がない場合や材料組合せや接合形状が異なる接合材を統一的に取扱いたい場合の強度評価が最新の研究成果や実例を交えて解説されており,非常に興味深い内容になっています.既刊のハンドブック等にも載っていないさまざまなSIF,ISSFが数値や図で多数収められていますので,異材接合の勉強だけでなく,問題が生じた際にも味方になってくれる心強い一冊だと言えます.