レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

マクロ交通流シミュレーション - 数学的基礎理論とPythonによる実装 -

マクロ交通流シミュレーション - 数学的基礎理論とPythonによる実装 -

マクロ交通流シミュレーションの基礎から応用までを解説し,原理原則,数学的理論,それらの実装法を理解する。また,シミュレータの実装を通して,数学的理論をプログラムとして具現化し,実社会の問題解決に役立てる面白さを学ぶ。

発行年月日
2023/10/20
定価
3,740(本体3,400円+税)
ISBN
978-4-339-05279-4
在庫あり

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

読者モニターレビュー【 もこ 様 (業界・専門分野:交通流シミュレーション(ミクロ))】

掲載日:2023/10/24

交通流の理論パートについては,基本事項が端的に解説され,主要な用語には英訳語も付記されており,交通工学・交通流シミュレーションの初学者が学びを進める際の一助となりうると感じた.一方,交通流シミュレーションに関する記述については,各論の理解・解釈がミクロシミュレーション屋のそれとは随分乖離があるように感じられた.とはいえ,どちらが正しい/正しくないというものでもないと考える.学習者には,本書だけを唯一の教科書とするのではなく,多数の文献に触れ,交通流シミュレーションを多角的に捉えながら探究していくことを勧めたい.

読者モニターレビュー【 大魔神 様 (業務内容:道路交通関連のコンサルティ ングとシステム開発)】

掲載日:2023/10/11

交通工学という学問は、現代社会では日常生活と切り離せない道路交通を対象にしているにもかかわらず、我が国では欧米に比して、その現象や理論について深く理解している専門家が少ないと感じられる。いろいろな理由が考えられるが、その一つに大学をはじめとする教育機関で、交通工学を体系立てて教えているところが少ないことがあると思っている。

本書はマニアックなタイトルではあるものの、工学系の専門課程にいる大学生、大学院生が交通工学の、特に交通流の解析やモデリングに必要不可欠な理論を、初歩的な知識から理論の体系づけまで深く理解することができる良書である。これは、最後にシミュレーションプログラムを作るという、プラグマティックな目標を据え、そこに至るためのステップアップを解説していくという、著者の工夫によるものだろう。理論の解説に微分や積分を含む数式が多用されているが、受験問題のようにそれを解くことを求めているのではなく、「積分=ある量を足し合わせる」、「微分=ある量の変化を見る」といった解釈を充てて、本来の意味を理解することに努めれば、自ずとプログラムのコードが思い浮かぶようになるのではないかと思う。

冒頭の話に戻ると、道路交通の非効率化、すなわち渋滞に起因する社会問題は、時間損失のみならず、環境、エネルギーあるいは物流効率低下、ドライバー不足など多岐にわたり、その解決には専門知識を有したエンジニアの活躍が不可欠である。本書のような教科書を通して、交通工学に触れ、この分野にとどまる若者が増えることを願っている。