レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
-
本書の目的は,ポストを求めて出現する応募者の中から望ましい人を採用したいとき,利用可能な情報に基づく最適な採用方策を求め,その効果を調べることにある。多種多様な確率モデルが提唱され,興味深い結果が得られる。
- 発行年月日
- 2023/07/12
- 定価
- 4,510円(本体4,100円+税)
- ISBN
- 978-4-339-02840-9
レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
-
読者モニターレビュー【 N/M 様 (ご専門:総合情報学(情報科学) )】
掲載日:2023/07/10
本書は,「シリーズ 情報科学における確率モデル」(全18巻)の10巻目に位置する書籍である.本巻では「最良選択問題の諸相(しょそう)(=いろいろな姿,様子の意)」ということで,その中でも秘書問題 (Secretary Problem) とその周辺という応用(秘書問題の条件を拡張させたもの)についての詳細な記述がなされている.
前提知識としては,大学の学部レベルの微分積分学,確率論の知識がないと,数式を読み解くことが困難かと思われる.なお,刊行のことばにも記載されている通り『初学者を対象とした教科書というよりも,各分野の体系を網羅的に著した専門書の色彩が強い』ため,本書の内容を詳細には言及できないことを予め断っておく.
1章では,秘書問題とはそもそも何なのかについての解説があった後,秘書問題自身は,状況設定を用いた特別な最適停止問題だということ,古典的な秘書問題の構成要素を列挙し,それらを応用(拡張)していくと,4つのタイプの問題に分けられることが述べられている.それらの4つのタイプ問題をそれぞれ定義して証明するところまでが,この章で解説されている.
2章以降では,1章で分類した問題をそれぞれ展開した事項や,それらを拡張した応用について,詳細に述べられている.
最後に,本書には引用・参考文献が洋書・和書の論文や書籍が103本も紹介されており,これらの文献にあたることで,秘書問題をより網羅的に学べるだろうと思われる.
〔なお,余談だが,本読者モニタに応募する前に予め「秘書問題」とWebで検索した際に「結婚問題」,「お見合い問題」とも呼ばれていることから,『情報科学のための離散数学』(Ref: https://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339023299/)のグラフ理論の応用で出てくる「結婚問題」のことだと勘違いしていた・・・〕