レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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グラフ信号処理の基礎と応用 - ネットワーク上データのフーリエ変換,フィルタリング,学習 -
信号の定義域を,ネットワーク(グラフ)の頂点上に持つグラフ信号を解析するための信号処理技術の一群を指すグラフ信号処理について,グラフフーリエ変換を中心としたネットワーク上データの周波数解析技術などを解説する。
- 発行年月日
- 2023/01/23
- 定価
- 4,180円(本体3,800円+税)
- ISBN
- 978-4-339-01405-1
レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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読者モニターレビュー【 いかり 様(専門分野:心理統計学)】
掲載日:2023/02/09
読み進める上で不可欠となる知識は初等的なフーリエ解析や線形代数の知識である。それに加え、信号処理や統計的推定論についての知識があれば、より深い理解に繋がる。グラフ信号の基礎をなすグラフ理論については1章で必要な知識が用意されており、特段前提とはされていない。
副題には、「フーリエ変換・フィルタリング・学習」とあるように、グラフ信号処理の基礎を理解し応用する上で必要な知識が学習まで一気通貫に解説されている点は大きな特長である。7章まではグラフが既知の場面を想定して解説されていて、応用場面のようにグラフが未知の場合について推定方法を与えるのが8章である。本書を通じて応用までの一連の流れを把握することができる。
通読を挫折しないような工夫が施されているのも特長である。やや抽象的な定義が登場した後には、具体的な数値を用いた例が挙げられることが多く、読み進める上での配慮が行き届いている。また、数学的に複雑な箇所は深入りするのを避け、全体像を把握することを優先している。本全体を通し、その意味でバランスがよいと感じた。
そもそもグラフ信号処理の需要がなぜ高まっているのか、どういう応用が可能なのかという点にも記述が行き届いていて、読んでいて楽しい本であった。グラフ信号やグラフデータに関心のある全ての方におすすめしたい。
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読者モニターレビュー【 N/M 様 (ご専門:総合情報学(情報科学) )】
掲載日:2023/01/16
本書は,次世代信号情報処理シリーズ(全17巻)の5巻目に位置する書籍である.本巻では「グラフ信号処理」の分野についての記述がなされている.なお,本書はグラフ理論と信号処理を合わせた「グラフ信号処理」の分野の和書としては初の書籍である.初の和書という触れ込みの専門書を私自身読んだのが,本書で二冊目である(因みに,一冊目は学生時代に「ブレンディッドラーニング(eラーニングなどの教育工学の分野で,情報分野の応用として学んだ)」に関する(翻訳書を除いた)初の和書だったと記憶している).
本書の一つの特徴として,書籍のタイトルにも含まれているように「基礎と応用」と書かれている通り,基礎を固めたい読者にも,さらに応用を固めたい読者にも応じられるように,応用部分に関しても節を分けてあるので,取捨選択して読むことができるようになっている点である.さらに関連知識を深めたい読者にも応じられるように,引用・参考文献リストも洋書や各種論文が166編も取り上げられている点も魅力的であり,それだけ本書の内容が一次資料を基にした記述であることも感じ取ることができるであろう.
第1章では,本書の主テーマである「グラフ信号処理」を学ぶ前に「グラフ理論」とは何かという定義から始まり,身近なグラフの例,いろいろなグラフ,グラフの作用素として各種行列などの解説がなされている.
第2章〜第6章では,ディジタル信号,グラフ信号の各種信号処理の話から始まり,フーリエ変換・フィルタリング・サンプリングなどと徐々に本書籍の主テーマである「グラフ信号処理」へ導かれていくような構成になっている.
第7章〜第8章では,「グラフ信号処理」の応用・発展的な内容として,多スケール分解やグラフの推定と学習という少し難易度が高いテーマも扱っており,それらについての解説がなされている.推薦システムの分野で少し挙げるなら,「8.1.1
K近傍法」は,私が以前レビュさせていただいた『基礎から学ぶ推薦システム- 情報技術で嗜好を予測する -』(Ref:https://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339029284/)においても重要な概念の一つであり,いろいろな分野で扱われていることが理解できるだろう.
最後に,各章末には章末問題がついており,各章で学んだ知識をチェックできるようになっている.この章末問題の難易度がちょうどよく,理解を深める上で最適だと感じた.少なすぎず,多すぎずの最適な分量ではないだろうか.
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読者モニターレビュー【 アマサイ 様(専門分野:電子工学)】
掲載日:2023/01/16
グラフ信号処理技術は、SNSやセンサーネットワークからの信号を効率的に分析するため技術である。第1章は、グラフ理論を知る上、必要最低限の用語を説明している。第2章は、グラフ信号とグラフフーリエ変換について説明している。高速フーリエ変換についての知識があれば、ここまでは容易に理解できるはずだ。著者は次に、第3章でフィルタリング、第4章でサンプリングをいくつもの図で解説してくれている。理工系出身者であれば、ウェーブレット、フィルタ設計など、よくなじんだ用語が出てくる。それに、「グラフ」がついただけ、とは言い過ぎかもしれないが、どこかで見た定義が多い。これは筆者のペンが雄弁なだけで、もしかしたら、グラフ信号処理技術はもっと難解なのかもしれない。そういう読者にとっては、160もの引用・参考文献一覧はありがたい。グラフ信号処理技術はまだ新しい技術である。本書によって基本をマスターし、著者とともに、グラフ信号処理技術の大海に向かおうではありませんか。
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読者モニターレビュー【 ヤマダ 様(専門分野:IT)】
掲載日:2023/01/16
本書はグラフ信号処理に関する基礎と応用を解説した和書であり、専門の学部生が理解できるよう丁寧に解説されているのが特徴である。
また少ないながらも各章には解答付きの章末問題が付されており、都度内容の理解の手助けをしてくれるため、この分野における一通りの知識が身につく設計となっている。
本書でのグラフ信号処理とは、信号の定義域をネットワーク(グラフ)の頂点上に持つ信号(グラフ信号)を解析するための信号処理技術の一群を指すが、
まず第一章でグラフに関する定義、説明を行い、第二章において基盤となるグラフフーリエ変換を数式とともに解説、第三章から五章において、
フィルタリングやサンプリングといったグラフ信号処理の基盤技術を説明したのち、以降の章で発展的な技術について解説を行っている。
参考文献リストが豊富なのも本書の特徴の一つであり、更に理解を深めたい読者はそちらをあたると良いと思われる。
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読者モニターレビュー【 つじもん 様(専門分野:無線通信 信号処理)】
掲載日:2023/01/11
本書「グラフ信号処理の基礎と応用」は、グラフ信号処理の基礎から応用まで学べる日本語で書かれた書籍である。最近、筆者の専門分野である無線通信システムの研究開発領域でも、グラフ信号処理を扱う例を見かけるようになっている。そのため、個人的に本書のように基礎からグラフ信号処理について学べる書籍を待望していた。
本書では、1章でグラフの定義を行い、2章から6章でグラフ信号処理の基礎としてグラフフーリエ変換、フィルタリング、サンプリング、グラフウェーブレット等についての説明がなされ、そして、7章、8章で発展的内容として多スケール分解やグラフの推定と学習に触れられている。
本書では、グラフ信号処理に関する奥深い内容が本書を読むだけでグラフ信号処理について一通り学ぶことができるように構成されている。豊富な参考文献が引用されているため、詳しく知りたい場合はそちらを参照することができるようになっている。また、本書では一般的な信号処理と対比する形で書かれており、信号処理が身についている読者であればより理解が深まると推測される。画像処理等の応用例も説明されている章がある点が嬉しい。また、章末問題を解くために手を動かして考えることでグラフ信号処理が手になじむ感じがした。
グラフ信号処理がいろいろな分野に応用されつつあるため、今後、グラフ信号処理をプログラミングしながら身に着けられるような、より実践的な書籍の登場も期待している。