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CG数理の基礎

メディア学大系 12

CG数理の基礎

本書は,CGの原理を理解するための基礎固めとなる技術に焦点をあて,広い範囲をカバーしながらもトピックは絞り込み,それぞれを深く掘り下げて解説した。初学者だけでなく,技術系・制作系クリエイターを志す方にも最適。

発行年月日
2022/09/22
定価
3,190(本体2,900円+税)
ISBN
978-4-339-02792-1
在庫あり

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読者モニターレビュー【 N/M 様 (ご専門:総合情報学(情報科学) )】

掲載日:2022/09/12

本書は,メディア学大系シリーズ(全19巻)の12巻目に位置する書籍である.本巻では「CG数理の基礎」について,コンピュータグラフィックスの分野についての記述がなされている.

第2〜3章では,CGの基本となる線分を描画する「ブレゼンハムのアルゴリズム」という基本的なところから,三角形の塗りつぶし(ラスタ化),アンチエイリアシング,そして
CGを学ぶ上で重要な「座標変換」という「幾何学」という分野の数学的な見方が必要なので,数学的なモノの見方が苦手な方には少し難しく感じるかもしれない.

第5章では,CGアニメーション技術の基礎として,高度な,或いは先進的なCGの手法や技法についてはあえて触れられておらず,それらを学ぶ上で必要となる知識概念を中心に解説がなされている.実際に,何かCG作品を作る際に必要となる,レンダリング技術(光源,照明,シェーディング,テクスチャマッピング,光線追跡,経路追跡など)については,本書で学んだことをベースに,他書籍やWebサイトを参考にする必要がある点には注意されたい.

また,本書はCGの全体像から始まり,CGの基となるディジタル画像の基礎から,RGBの色表現など,無理のないように順番を追って解説されているので,本書のWebサイト内の[内容紹介]のタブに記載されている『高校の情報の授業でディジタル画像やCGに興味を持った理科系の生徒たちにも読んでもらえれば幸いです』とあるように,高校生でもディジタル画像やCGについて興味を持った方に,今年2022年4月からの新(教育)課程の高等学校情報科目である『情報Ⅰ・Ⅱ』の参考文献としても最適ではないかと個人的に思った.

それらに加えて,関連資料として,プログラミング言語 Processingや,POV-Ray,MATLAB,Adobe
Illustratorなどのサンプル(プログラム)が用意されている.実際に本書を読んでいく際に数多くの図表がある.それらを描画(実行)させる演習を行うことで,よりCG技術やそれらのプログラミングに関する知識や理解が深まるようにも感じた.

最後に,各章末には,学んだことを再確認・応用するような,いろいろな形式の演習問題が用意されている.おそらく,本書を講義で使う際のレポート課題としての意味で記載されていると思われる.ただ,穴埋め問題,正誤問題の形式の基本的な演習問題も一緒に記載されていれば,知識の確認・定着という意味で良かったのではないかと,個人的には思った次第である.