レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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アナログ電子回路の入門として,トランジスタ増幅器の動作原理,アナログ信号処理の考え方,ノイズ理論等を中心に解説を行う。また,多数の回路設計例を示すことにより,読者が実用的な回路の設計能力を身につけることを目指す。
- 発行年月日
- 2022/03/18
- 定価
- 2,860円(本体2,600円+税)
- ISBN
- 978-4-339-00982-8
レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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『日本物理学会誌』 9月号
掲載日:2024/10/16
新著紹介「図書リスト」欄にて掲載いただきました。
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読者モニターレビュー【 JUY 様(ご専門:機械・電気設計)】
掲載日:2022/03/24
本書は物理現象をとらえる為の、今日常に発展を続ける多種多様なセンサにとって、不可欠な信号の低雑音増幅回路の設計知識を身につけることをゴールとしている。
基本的な構成要素の知識と回路構成の説明を押さえつつ、要所要所にコラムを挟み、前出の理論をイメージとして理解できるよう工夫してあり、物理実験をこれから試みる諸学生向けにとって教書となるよう基礎知識を与える前半部分は、極力シンプルに簡潔に書かれていて無駄がない構成になっている。
とくにユニークなのは、後半から検出器用のプリアンプの雑音の乗り方について、実際の回路設計例を示した上で、解説とともに、実用レベルの知識を詳しく紹介している点である。
その上で、回路の実装についても言及することで、実用を考える上でも抜かりのない構成になっている。
アナログ回路の設計ができる基礎知識を与えた上で、本書のテーマである物理実験に必要な低雑音増幅というテーマに取り組むという回路の実装方法についても言及しながら、物理実験に取り組む学生に包括的な知識を与える試みがなされている。
珍しい試みの書籍と思えた。
この点で非常にユニークな書籍となっている。
これから物理現象の検出に取り組む、大学・高専などの学生にお勧めしたい。
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読者モニターレビュー【 Ipce Akitovski(ご専門:センサ用アナログ集積回路設計)】
掲載日:2022/03/16
アナログ電子回路の入門書として、基礎的な解説や定義の導入から始まる。中でもパッシブプローブのインピーダンスの例題や伝送線路の記述は、計測に携わる初学者にとってイメージと計算を関係付けるよいきっかけになるだろう。4章までは、一般的なバイポーラトランジスタをベースとした他の電子回路に関する教科書と大きな差異はないと思う。
一方で、5章以降はノイズを考慮した設計手法として、等価雑音電荷というあまり見かけないパラメータを導入している点や、微小インパルス電流をセンサ出力として想定している点がユニークである(つまり、高速トランスインピーダンスアンプがモチーフ)。等価雑音電荷は、電子数単位でノイズを定量化できるため、物理的な意味を関連付けて理解を促すことができるが、著者らが指摘しているように、1/fのように色のある雑音を扱う際には理論と実測が一致しないという欠点がある。また、設計においても、重み関数と回路の伝達関数の関連付け(素子定数の設定)が容易ではないため、個人的には一般的な要求仕様(信号帯域=ノイズ帯域、ノイズフロア、ダイナミックレンジ等)から各種パラメータを決める方が効率は良いように思う。波形整形も、文脈を変えれば等価器(イコライザ)の設計と捉えることができるだろう。
本書は、他の和書に比べノイズについて非常に丁寧に解説がなされ、また、低ノイズな高速トランスインピーダンスアンプの設計に焦点が絞られている。そういった意味では、一般的なアナログ電子回路設計に関する入門書とは異なるが、実際の物理計測において、そのような用途で小規模な回路(ディスクリートにて実装)を検討している者にとっては参考になるだろう。一方、過去数10年に渡る集積回路(IC)の微細化や多くのアナログ回路技術の発展により、より高速・高性能・高機能な計測用ASICの設計も可能になっている。回路の設計自由度も非常に高いため、興味のある読者は、さらなる可能性探求のために、こういった方面を深堀りしてみるのも良いかもしれない。