レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

多変数の制御・解析・最適化に使える行列論

多変数の制御・解析・最適化に使える行列論

多変量解析や最適化の分野では,行列を用いて考えることが多く,できる限り行列を1つの単位とする行列操作が必要となる。本書では,動機づけを与える疑問を示し,そのうえで議論を進める。内容は実用上で重要なものに絞った。

発行年月日
2022/01/17
定価
5,060(本体4,600円+税)
ISBN
978-4-339-06124-6
在庫あり

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

読者モニターレビュー【かわひろ 様(ご専門:制御工学)】

掲載日:2022/01/13

本書では,行列の性質を幾何学的な観点から丁寧に説明しています.
導入では制御工学などでよく現れるブロック行列から解説を行なっており,行列の解析が必要となった方にとって取り組みやすい参考書でした.
特に定理などの解説では,定理の証明だけでなく解析の際の利用方法を踏まえた導出の理由まで解説があるため,自身の研究での利用シーンを考えながら楽しく学習を進められます.
私は、マルチエージェントシステムの解析で大きなブロック行列の性質を調べているのでじっくり読み進めていこうと思います.

読者モニターレビュー【よっしー 様(ご専門:制御工学・機械学習)】

掲載日:2022/01/11

本書は線形代数の力を底上げするような1冊であると感じました.
まえがきにもありますが実体験として制御・機械学習の分野で研究活動を始めた際に実際に用いるのは大学初年度の線形代数では取り扱わない内容がほとんどであるといえます.このような講義で得た知識と研究で必要な知識のギャップを埋めるために本書は大学初年度の線形代数で取り扱う内容は既知とするものの,実用上必要な正定値,ブロック行列の性質や特異値分解などについて詳細に説明してくれています.

読んでみて良かった点は話題となっている問題に対してのアプローチの説明がわかりやすいところです.
定義定理の後に平易な日本語でその意味を説明されている箇所が多く,定義を導入した理由や定理からいえることが理解しやすいです.また具体的な数値例が豊富にあるので手計算で性質を確認しながら読み進められるところが良かったです.このような理由から研究室の輪講などで活用すれば学生らの研究活動がスムーズになる有用な一冊だと感じました.

読者モニターレビュー【細田 和音 様 山口大学大学院(ご専門:制御工学)】

掲載日:2022/01/11

以前から同社の「システム制御のためのマトリクス理論(児玉慎三、須田信英)」や「システム制御のための数学 線形代数編(太田快人)」は愛読させていただいており、研究の際にも活用させていただいています。今回、浅井徹先生の研究室で輪読用に用いていた素材を書籍にされたということで、学生が研究をしていくための最低限の基礎事項を読みやすい形でまとめられた書籍になっているのではないかという期待から読者モニターに応募させていただきました。
本書の構成と特徴に関しての学生目線の感想を述べます。まず全体を通して具体的な例から必要な概念が導入されていく流れになっている点は、応用を扱う立場からは非常に理解しやすいと感じました。例えば、第2のように行列のランクや核空間といった概念からではなく、線形方程式という具体例からそれらの概念が導入されていくといった部分です。また、第3章など最適化問題を解く際に用いる行列の性質を線形代数の立場から体系的に詳細に論じている点は他の書籍にあまりなく非常に有用と感じました。また、第 8 章では多くの線形代数や行列論の教科書で扱われるノルムの議論にとどまらず、関数解析などの基礎部分とつながる範囲まで述べられている点などは、タイトルにもあるように最適化や制御を意識した結果といえると思います。研究室に配属されたばかりの学生など、考える土台を固めたい場合、また学生以外でも数学としてではなく応用指向で行列論を整理し直したい方などにはお勧めできる一冊であると感じました。