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分子分光学のエッセンス - 量子化学の基礎から機器分析の実際へ -

分子分光学のエッセンス - 量子化学の基礎から機器分析の実際へ -

本書では初めに量子化学を簡単に解説し,その延長として電子スペクトル,続いて振動スペクトル,回転スペクトル,磁気共鳴の順に解説する。この順序は光の波長に対応している。遷移エネルギーと電磁波の波長の関係についても述べる。

発行年月日
2022/01/21
定価
2,310(本体2,100円+税)
ISBN
978-4-339-06659-3
在庫あり

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amazonレビュー978-4-339-06659-3 分子分光学のエッセンス

掲載日:2023/09/13

読者モニターレビュー【子豚のオリバー 様(ご専門:薬学)】

掲載日:2022/01/13

本書は、第1章の電磁波、スペクトルの説明にはじまり、第2章でのシュレディンガー方程式やボーアの振動数条件、磁気モーメントなどの本書を読むにあたっての分子分光学の基礎となる概念の説明がなされた後、それ以降「電子遷移」「振動遷移」「回転遷移」などと各分光別に原理を説明するという章立てになっている。

本書の1つめの大きな特徴として、A5サイズで154頁と比較的コンパクトな書籍なので、鞄がかさばることなく持ち運びが非常にしやすいことである。そのため、電車などでの移動中にも気軽に読むことが出来る。
2つ目の特徴として、仮に数学や物理学が苦手でも、大学受験レベルの数学や物理学さえ抑えておけば容易に読むことが出来る点である。特に現在機器分析学を学んでいて、数式を用いて学びたいが、分厚い専門書に取りかかるには億劫だという方には非常に最適な書籍である。そして本書を読み終えた後により原理を詳しく勉強したければ、物理化学や量子化学などの書籍などに取りかかることで理解を深めていけば良いと思う。
本書籍で1つ残念な点があるとすれば、各分光分析機の構成概略図が載っていないことである。本書では、各分析機や測定用セルの写真は出てくるが、分析装置の構造も併せて載せた方が読者、特に初学者にとっては、より分光分析について具体的なイメージがしやすく学習しやすいのではないかと思った。とは言え分光分析装置の構造について気になれば、適宜分析化学の教科書を確認すれば良いし、本書の携帯性から考えるとこれで良いのかもしれないのかもしれない。

長々と書いたが、本書「分子分光学のエッセンス」は、
・厳密性をある程度省いてはいるものの、一般的に用いられる分光分析法の原理が載っており、持ち運びが非常に容易なためどこでも気軽に読める書籍である
・本書の対象とされている化学系の学生だけでなく、定量的なことを知りたい理工系以外の学生でも容易に読み進めることが出来る

分光分析の原理を少しでも数式を用いた形で理解したい方、あるいは復習したい方ならば、一度は手に取って読んでみてはいかがであろうか。

読者モニターレビュー【理系大学生 様(ご専門:化学)】

掲載日:2022/01/11

「分子分光学のエッセンス」は量子化学の基礎 (水素型原子のシュレディンガー方程式など) をもとに機器分析の手法 (IR,吸光分析,NMRなど) について述べたものである.

量子化学と機器分析の関連がよくわからないという方にこの書籍はおすすめできると思う.
また,量子化学の基礎と機器分析の原理などが一体となっているためはじめて機器分析を行うかた (大学初年度生や高校生) にとっても親切な書籍であると思う.

ただし,書籍は150ページ弱とコンパクトにまとめられているため量子化学の分野における計算過程は省略されている.
そのため,書籍の内容をより詳しく理解するためには「分子分光学のエッセンス」に加えて他の書籍を参照する必要があるのではないかと感じた.

以上に述べたようにコンパクトが故に詳細な議論は省略されているが,分子分光学の要点は揃えられていており,機器分析の原理を理解できるようになっているよい書籍であると感じた.