レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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材料力学の知識を前提に,各種問題における支配方程式の導出と,その境界値問題における解法の説明に力点をおいた。また,昨今の設計や開発の現場を鑑み,有限要素法を初めとする数値解析とのつながりが明確になるように心掛けた。
- 発行年月日
- 2021/06/15
- 定価
- 3,300円(本体3,000円+税)
- ISBN
- 978-4-339-04673-1
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読者モニターレビュー【ろぼ様(ご専門:情報工学,CAE)】
掲載日:2021/06/24
私は情報工学科を卒業したあとCAEソフトの販売代理店に入社した。ソフトウェアや数値計算についてはある程度知っていたが材料力学や有限要素法については一から独学する必要があった。有限要素法の概念やCAEソフトの操作にはある程度習熟できたと思っているが,理論と実際のソフトの操作との間にギャップを感じていた。そこで,それらのギャップを埋めるために,材料力学の有名な問題について支配方程式を導出して,それを自分でプログラミングし,数値計算をしたい,そういうアプローチの本があればいいと思っていた。
そういうわけで弾性力学の本に今回初めて挑戦してみたが,上記の目的に限って言えば材料力学をきちんとマスターすることが先決で,弾性力学はやや高度すぎると感じた。
ただ,弾性力学を一通り履修した人が,内容を確認するにはよくまとまっていていい本だと思う。私は機械工学を独学しているのでこの本だけで弾性力学を理解するのは難しいように感じた。しかし,エッセンスはつかめたように思う。
なお,数値解法へのつながりについては,軽く述べられているにとどまり,これだけで即数値解法に応用するのは大変だと思う。
この本が理解できる読者であれば,ねじりや曲げといった基本の問題について,支配方程式をプログラミングしたり,CAEソフトで解析して,それらの解を比較すれば理解が深まるだろう。
本の内容としては,1~3章で,弾性力学の支配方程式の導出に必要な数学的基礎が説明されている。このあたりは学部2,3年までの内容で理解できるはずなので,これから弾性力学に挑む人にとってはよい復習となるだろう。4章では材料力学の基本であるひずみと応力について述べられている。5章からが本題であり,弾性力学の支配方程式やエネルギー原理について述べられている。7章で有限要素法との関係について軽くまとめてあり,8章以降で具体例が多数登場する。ここでは棒の曲げ,ねじり,平板の曲げ,引張などを扱っている。また,異方性体や2次元弾性論についても軽く述べられている。14,15章では破壊力学について述べられている。
これからも,この本を傍らに置きながら材料力学を始めとする機械工学の独学を続け,いつか弾性力学を理解できるようになりたい。