レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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新コロナシリーズ 63
従来から土壌汚染などの環境汚染対策は埋立てや焼却,化学処理などが主流であった。微生物による環境修復技術はこれらよりも低コストで環境への負担が比較的小さい。本書では微生物の生態から利用のしくみまで,基本が理解できる。
- 発行年月日
- 2017/07/06
- 定価
- 1,320円(本体1,200円+税)
- ISBN
- 978-4-339-07713-1
レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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読売新聞夕刊 READ&LEAD 10月17日付
掲載日:2017/10/12
読売新聞夕刊10月17日付けのREAD&LEADコーナーにて書籍紹介が掲載
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木村俊範 北海道大学名誉教授
掲載日:2017/09/04
人間社会の発展と共に環境汚染が深刻化し、それが地球全体の問題となっていることに誰も異論を唱えないであろう。しかし、我が国の高度成長期にもあったように、環境保全対策は利益を生むものではなく、金食い虫と見なされ、後回しにされるのが今日なお発展途上国などにおいて普通だと言えよう。その克服には、初期投資やランニングコストが低く、かつ安定した機能を持続できる技術が必要とされる。
本書の著者も同様な理解に立っているようであり、現状では反応速度が遅く、不安定で再現性も高くはないという欠陥はあるが、技術の熟成によっては克服要件を具備できると思われる微生物機能を活用する環境修復技術を取り上げて紹介している。
本文1において環境汚染の現状を示した上、2においては主要な環境修復技術、取り分け3においては微生物を用いた環境修復技術のあれこれを平易に解説しており、初心者にも理解しやすい。次いで4では、著者らが実際に取り組んだ、あるいは取り組みつつある新しい環境修復技術の開発や実用化について比較的詳しく例示しており、技術資料としても参考にできるものと思われる。最終章の5においては、当該技術の課題と今後の展望などが述べられているが、著者が挙げている4つの課題の②が開発技術の実用化に不可欠な論点であろう。如何に技術の持つ性能が高いとしても、コストの妥当性がないと実用化、商業化レベルの持続性は保持できず、間もなく消えゆく運命を辿ることになる。
本書を読み終えて感ずるのは、著者が自身の活動を手前みそに述べるのではなく、技術の弱みやコストについてしっかり目配りされていて、公平性の高い内容であり、好感の持てる入門書の一つであると言えるようである。
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今井伸二郎 東京工科大教授 博士(医学)
掲載日:2017/07/11
今年世間を騒がせている社会的問題に関連して土壌汚染問題がクローズアップされている。日本の工業化は一段落し、工場の移転も多くなってきた。工場の種類によっては土壌汚染の程度が深刻であり跡地の利用は担当者にとって頭痛の種であろう。工場移転跡地に限らず、我が国国土の土壌汚染は深刻な状況に陥っている。まさに高度成長時代のつけを払わされている現状だ。土壌を入れ換えたとしても廃棄した土壌が汚染している事に変わりは無い。安価に効率的に汚染物質を無害化する方法が求められている。この問題を解消できる唯一の方法は微生物パワーであろう。本書はタイトルのとおり環境汚染対策に微生物が如何に有効に働くかを解説した良書である。本書は環境汚染の克服を目指す土木技術関係者に限らず、一般の読者の方々にも微生物の有用性を知っていただくために有用な一冊と思いここに推薦する。