レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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電子情報通信レクチャーシリーズ A-3
21世紀に入って急速に進んだ情報化による社会の変化について考えながら,情報社会の基盤である情報セキュリティの全体像を技術・法制度・管理経営・倫理などの面から把握できるように記述した一般学生・社会人向けの総合的入門書。
- 発行年月日
- 2012/03/16
- 定価
- 3,300円(本体3,000円+税)
- ISBN
- 978-4-339-01803-5
レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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「電子情報通信学会誌」 2012年8月号
掲載日:2012/08/29
電子情報通信学会誌 「図書紹介」欄に、下記の書評が掲載されました。
※当書評文は、電子情報通信学会ならびに書評執筆者の方の許可を得て掲載しております。
ネットワークインフラの急速な整備により,大量の情報がディジタル化されネットを行き来するようになった.ネットでの情報流通は,社会のあり方そのものを変えるぐらいの勢いで新しいサービスが次々と出現し,利用されている.このようなネット社会は,情報が何の障壁もなく行き渡るといった便利な面もある反面,個人の情報がネットという公衆の面前に何の前触れもなくさらけ出される危険もある.ネットのほう芽期では一部の専門家から,そのような危険性について警鐘が鳴らされていたが,情報に携わる技術者ですらそれほど強く意識していなかった.しかし,昨今では,一般の人でも情報の安全ということが強く意識されるようになってきているため,実際,社会に強く影響を与えるような問題が生じている.本書は,このような情報セキュリティの草分け的な存在である著者が,暗号などの技術要素だけにとどまらず,情報倫理や情報社会での情報への接し方など社会科学的な要素まで含んだ内容を分かりやすく解説したものである.実際,情報セキュリティの分野は,とっつきにくいところがある.特に暗号理論の部分に関しては,情報に携わっている技術者ですら難しく感じるところが多々あり,その技術の核になる部分を分かりやすく説明してくれる書籍の出現が望まれていた.本書の著者はそのような要望に応える形で,理論には余り深入りせず,暗号理論の骨子を具体的な例を挙げながら読者が興味をそらさないように丁寧に解説してくれているところがありがたい.また,本文の間に挿入されているコラム形式の「談話室」で読者の興味をそらせないような工夫も施されており,今まで情報セキュリティの予備知識がなかった読者でもすんなりと読み進むことができるであろう.更に,広く技術以外の情報社会での倫理についても公平に俯瞰しており,情報セキュリティ分野の専門家以外の一般の読者にもお薦めの書である.情報のリスク管理については,どのように対処すればよいか問題点が曖昧でとかく腫れもの扱いされがちであるが,本書を一読することでおおよその問題点がはっきりとすることであろう.ぜひ,多くの方に一読することをお薦めしたい書である.
(紹介者 苗村昌秀 正員 日本放送協会放送技術研究所)
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