問題を解くことで学ぶベクトル解析 - 楽しみながら解くことを意識して -

問題を解くことで学ぶベクトル解析 - 楽しみながら解くことを意識して -

楽しみながら解くことを意識して多数用意した演習問題により,ベクトル解析を身につける。

ジャンル
発行年月日
2023/09/25
判型
A5
ページ数
192ページ
ISBN
978-4-339-06130-7
問題を解くことで学ぶベクトル解析 - 楽しみながら解くことを意識して -
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定価

2,860(本体2,600円+税)

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[対象とした読者]
理工系学部の1,2年生を想定している。そういった学生たちは、これから物理において学ばなければならない内容が無数にあるが、その基礎となる部分、特にベクトル解析にフォーカスした。実は本書自体が何かの分野の専門書、とは呼べないかもしれない。しかし広大に広がる物理の世界に踏み出す第一歩となるものを目指したつもりである。
こう書くと大真面目な書籍だととらえてしまうかもしれないが(実際真面目に書いてはいるが)、物理(というか学問そのもの)は真面目に考えることがすべてでもないと思っている。解いてみると楽しい、ただそれだけでも構わないのではなかろうか。力を抜いて物理数学に向き合うのも時にはよかろうと、問題のチョイスには趣向を凝らしたつもりである。ということで、物理数学の問題をパズル的に解いてみたいという方々にもページを開いてもらいたい。

[各章について]
1章ではベクトルや行列の基礎について述べる。単位ベクトル、内積、行列式、逆行列など、新たに現れる概念は本章が最も多い。いずれも基礎的なものであるが、その分ここがおろそかだと先に進めない重要な章である。2章では直線と平面を、そして3章では曲線や曲面を方程式で表現することを学ぶ。世の中にあふれる多様な図形というものを、少数の方程式で書けてしまう理路整然とした姿を堪能してもらいたい。4章では線積分・面積分・体積積分を取り上げた。身構えてしまうような内容かもしれないが、やっていることは高校までで学んだ積分の拡張である。5章ではガウスの発散定理とストークスの定理を取り上げた。4章で学んだ各種積分が美しい関係を構築しているのを見るだろう。6章・7章では座標変換を取り上げる。座標系といっても見慣れたデカルト(直交直線)座標系がすべてではない。問題設定によっては別の座標系を用いた方が良い場合も多数ある。そういった場合の積分などの工夫を見ることになるだろう。

概観としては以上になるが、本書では副題にもあるように「楽しみながら解くことを意識して」欲しいと思っている。本書には他の理学書ではあまり見かけないような問題も多数掲載されていると思う。それらは見た目が変わっていても、ちゃんと解こうとすると意外としっかりした理解が必要になる、そんな問題になるよう考えて作成したつもりである。分かってみれば面白いと思ってもらいたい。末筆になるが、コラムも充実させた(つもりである)。

物理数学はそれ自体が一つの学問分野というより,幅広い物理分野の学問の基礎となるものである。つまりこれを学べばあらゆる物理分野の入り口に立てるし,逆にわかっていないと何もできないという分水嶺的なものである。そして一口に物理数学といってもその内容は多岐にわたるのであるが,ここではベクトル解析を取り上げたい。これについては,積分の仕方など技術力を身につけなければならないことに加え,同時にどのような問題を考えているのか,空間的な想像力を養う必要性も意識しなければならない。ある程度は問題を解いて経験を積む必要があるだろう。

ここで,そもそもなぜベクトル解析を学ぶのか,という根本的な問いに立ち返ってみたい。一義的には上に述べたように「物理数学」の一環なのだから,まずは物理学を学びたいという希望があることは間違いない。そして物理学は大変裾野の広い学問分野であるから,それの発展として化学や生命科学,あるいは地球科学といった分野を学びたいという理由もあるだろう。加えて工学分野の勉学を考えている人にとっては,学んだことを現実世界へ応用したいというモチベーションがあるかもしれない。そしてこのような考えは,社会学などの分野の学生ももっているかもしれない。そういった(一見文系の)分野でも,近年では数理的取扱いと無縁ではないからである。すなわち多分野において,現実的に「役立つ」から物理数学をやるのだ,ということはもちろん正しい。

しかしそれだけでもないのではないかとも思う。それとは別に,ただ面白い問題を解いてみたいという,ある意味では無意味な欲求に従って学ぶというのもよいのではなかろうか。物理数学の練習問題だと,例えば適当に曲面と関数を与えて面積分せよというような,若干無機質なものもあるだろう。もちろんこれでも十分練習にはなるのだが,面白み・楽しさには欠ける。しかしある意味遊び心をもった問題ならば,ただ楽しく解いてみるという動機づけが成立するだろう。つまり上述のように何かの役に立つという理念がなくとも構わない。見ようによっては「無駄」ともいえる考え方も重視し,力を抜いて楽しんでもらうような問題集があってもよいと思う。

ここに挙げた両者はある意味で真逆な考え方である。しかし,無意味でも楽しければ前者のように「何かの役に立つかもしれない」という発想が出てくるだろう。逆に応用を目指して学んでいても,進めているうちに物理数学そのものの楽しさに気づくかもしれない。両者は共存できる考え方なのである。パズルを解くような感覚が味わえる問題や,現実世界で見られるような設定の問題を通して,楽しみながらベクトル解析を学んでいただきたい。

本書はいろいろな分野に今後進んでいく学生のためということも考えて,例えばベクトル量の取扱いなど,基礎的な内容に重きを置いた面もある。また問題を解くことにも主眼を置いたため,定理の証明などを直観的な説明で終わらせて厳密性を若干犠牲にした部分もある。実際,それを使う上ではそれで十分という考えもある。ただ,やはりきちんとした説明を知りたいという人もあるだろう。そのような人はまた一歩踏み込んだ専門書を開いてもらいたい。

なお,本書の内容は著者が行った授業を基にしている。そしてその授業の構成には前任の先生方の資料を参考にさせていただいた。感謝の意を表したい。加えて末筆ながら,適切な助言により出版まで導いてくださったコロナ社にも深く感謝の意を表する。

2023年7月
著者

1. ベクトルの基礎
1.1 一次独立・一次従属
1.2 内積
1.3 単位ベクトル
1.4 正規直交基底ベクトル
1.5 行列と行列式
1.6 行列の固有値・固有ベクトル・対角化
1.7 極座標・円筒座標
章末問題

2. 直線と平面の方程式
2.1 外積
2.2 直線・平面の方程式
章末問題

3. 曲線と曲面の方程式
3.1 曲線と曲面の表し方
3.2 2次曲面
3.3 微分演算
3.4 場と勾配・発散・回転
 3.4.1 場の概念
 3.4.2 勾配・発散・回転
 3.4.3 ポテンシャル
3.5 接平面
3.6 ベクトル場と流線
章末問題

4. 線積分・面積分・体積積分
4.1 線積分
4.2 面積分
4.3 体積積分
章末問題

5. ガウスの発散定理とストークスの定理
5.1 ガウスの発散定理
5.2 ストークスの定理
章末問題

6. 座標変換(1)
6.1 ヤコビ行列とヤコビアン
6.2 計量テンソル
6.3 一般的な直交曲線座標系でのラプラシアンの計算
章末問題

7. 座標変換(2)
7.1 座標系の回転
7.2 等速回転座標系
7.3 テンソル
章末問題

引用・参考文献
章末問題解答
索引

鈴木 岳人(スズキ タケヒト)

2007年東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了(博士(理学)取得)後、東京大学と青山学院大学において地震学をはじめ摩擦物理や非線形動力学の研究に従事する。趣味は野鳥観察など。また高校・大学時代にクイズ研究会所属だった経験もあり、それが物理数学の問題作成にも生きているように感じている。

掲載日:2023/12/04

電気学会誌2023年12月号

掲載日:2023/11/07

日本機械学会誌2023年11月号

掲載日:2023/11/02

電子情報通信学会誌2023年11月号

掲載日:2023/10/16

情報処理学会誌2023年11月号

掲載日:2023/09/01

電子情報通信学会誌2023年9月号

掲載日:2023/08/17

「数理科学」2023年9月号