レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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近年さまざまな領域で用いられているゲノム配列情報解析についての入門書。特色として,必要となる生物学の知識とプログラミングの技術を同時に記載したほか,プログラミング言語Pythonや基礎的な数学の解説も設けた。
- 発行年月日
- 2024/08/15
- 定価
- 5,170円(本体4,700円+税)
- ISBN
- 978-4-339-02735-8
レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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読者モニターレビュー【 氏康 様 (業界・専門分野:非線形物理学)】
掲載日:2025/07/23
「シリーズ刊行のことば」にもあるように自己完結的な解説がなされており、ゲノム生物学に関しては高校程度の知識しかない私でも理解することができました。解析手法を紹介する文献には読んでいるうちに目的を見失い無味乾燥に感じるものが多いですが、本書は必要な生物学の知識を確認してから解析手法を説明しており興味を失うことなく読み進められます。数学や統計学、プログラミングなどの解説も丁寧で、意欲的な高校生などでも読める内容になっていたと思います。
私の専門である非線形物理学はゲノム解析とは離れていますが、本書を読みその考えが少し変わりました。DNA配列はたった4種の核酸塩基から構成されるにも関わらず非常に多くの情報を含んでおり、それらの法則を調べるためには統計物理学の応用可能性があるのではないかと感じました。
ゲノム解析は学際的な学問であり、興味をもつ人は様々な分野にいると思います。そういった人たちに本書を読むことをぜひ薦めたいです。
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読者モニターレビュー【 1010mark 様(業界・専門分野:情報系)】
掲載日:2025/04/11
端的に言えば、よくまとまっていて興味深い本だと思います。
普段は情報科学に携わっている私は、隣接領域である生物科学にも関心がありました。しかし高校生の頃、生物で挫折した苦い経験があったため、なかなか手を出せずにいました。そこでちょうどよい本があったので、本書を手に取りました。
特に印象的だったのは、生物科学にも情報科学にも不慣れな読者にも配慮されている点です。第一章では情報科学の基礎から解説し、第二章ではDNAの基本を扱います。さらに付録にはPythonの基本文法から統計関連の関数まで網羅されており、手厚いサポートが提供されています。このような構成から、本書はどちらの領域にも自信のない読者にもおすすめできます。
また、生物科学の解析にアルゴリズムがどのように応用されているかが紹介されている点も興味深かったです。情報系の研究者として普段はDPやハッシュテーブル、FFTを何気なく利用していますが、本書ではそれらがk‑mer法や相互相関関数(アラインメント推定のための)など、多様な文脈で応用されていることが示されています。これにより、アルゴリズムの理解が一層深まりました。
総じて、本書は生物科学と情報科学という一見異なる分野を、読者に優しくかつ本質的に橋渡ししてくれる一冊です。単なる入門書にとどまらず、両分野の知識が相互に作用し合い、新たな視点を提供してくれる構成には深く感銘を受けました。生物科学と情報科学の交差点に少しでも関心があるなら、この本は必読です。
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読者モニターレビュー【 iden 様(業界・専門分野:バイオインフォマティクス)】
掲載日:2025/02/07
ゲノムアセンブリに用いられるツールは、コマンドを実行するだけで解析が可能ですが、「なぜそのソフトを使うのか?」と問われたときに、「この分野で皆が使っているから」と答えるだけで良いのかと疑問に思うことが多々ありました。
Bowtie2、SPAdes、BLASTなどの汎用ソフトの元論文を辿れば、それらがどのようなアルゴリズムで動作しているかは記載されています。しかし、初学者が論文からアルゴリズムを理解し、ツールを自身の研究に最適化して使用するには大きなハードルがあります。
本書は、ゲノムアセンブリやマルチプルアライメントのアルゴリズムを日本語で丁寧に解説した貴重な一冊です。研究を始めたばかりの人が分野の全体像を掴むための入門書としても最適であり、また、論文を読み進める中で生じた疑問を補完するのにも役立ちます。
さらに、簡易なPythonコードがGitHub上で公開されているため、手を動かしながら理解を深めることができます。
総じて、本書はゲノム解析に興味がある全ての人におすすめしたい一冊です。
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『生物の科学 遺伝』2024年11月発行号 新刊一覧
掲載日:2024/10/25