レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

ロボットの確率・統計 - 製作・競技・知能研究で役立つ考え方と計算法 -

ロボットの確率・統計 - 製作・競技・知能研究で役立つ考え方と計算法 -

ロボティクスには広大な範囲の知識が必要とされます。本書では,ロボットの組立て,制御やセンサ処理のプログラミング,性能評価,ロボコンでの作戦など,ロボットだけに限定して,様々な確率・統計の知識を学ぶことが目的です。

発行年月日
2024/03/21
定価
4,400(本体4,000円+税)
ISBN
978-4-339-04687-8
在庫あり

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

読者モニターレビュー【 芝村 厚志 様(業界・専門分野:IT,機械学習 )】

掲載日:2024/03/12

この本は間違いなくよい教科書であり、特に独学者にとって福音だと思います。
私はベイズ確率や機械学習周辺の本は読んだことがありますが、いまいち理解が繋がっていなかった部分が本書のお陰でしっかりと繋がり、実用に活かせるだろうという自信が持てました。
数式についてはきちんと導出が行われるので簡単ではないですが、実用に最低限必要な概念が丁寧に選ばれたうえで解説されていると感じました。
また、数式による説明とロボット制御でどのように役立つかについてを交互に提示してくれています。そのため、学んだ数式が使われるイメージをつかみながら確率・統計の定義をしっかり理解することができ、独学でも確率・統計の概念の見通しがとてもよくなります。
例えば共役性や線形化といった概念がどのようにうれしいかについて、既存のベイズ統計に関する本でおぼろげながら理解していましたが、本書において実例を交えて解説されたことでしっかりとイメージすることができました。
後半になると数式が難しくなっていくので、全てを理解することはできないかもしれません。しかし本書でそれぞれの概念がどのような問題を解くのに役立つかという地図を与えてもらえるので、将来類似の問題に出会ったときにその地図を手掛かりに本書やその参考文献を活用できると思います。
これからロボットに携わる研究者・エンジニアに自信を持ってお勧めできる本です。

読者モニターレビュー【 日高 風詩 様 大阪大学基礎工学部(業界・専門分野:知能システム )】

掲載日:2024/03/12

来年度で学部4年になる者です.僕は確率統計について苦手意識がありました.確率統計は僕の分野では重要な要素の一つで頻繁に目にするのでこのままじゃまずい,春休みに勉強しなければと思っていたところ,ロボットの確率・統計というタイトルの本書を見つけました.読めるか少し不安でしたが,理解を深めつつ非常に楽しみながら読むことができました.確率統計の内容を人間,ロボットの具体的な話と関連付けて展開していてどのような文脈で対象の理論を考えるのか,使うのかをイメージしやすくとても読み進めやすかったです.頭の中で確率統計の知識が整理されたと感じました.まえがきにもあるように,数式は容赦なく使われていますが各数式に対して読み方や意味を言葉で補足して下さっていて理解が深まりました.さらに図が全体を通して用いられていて,具体例と合わせて理解を大きく助けてくれました.また,本書は著者の本文,脚注での雑談が非常に面白く,本筋の内容とリンクしているので考えが広がります.

これから本書を読んだ感想を前半部分と後半部分に分けて述べます.

前半1章から4章までは比較的容易に読み進めることができました.1~4章は確率統計の基礎事項をロボットに関係する具体例と一緒に確認する流れになっていて,確率統計として知っている内容でも新しい気づきを得ることができるよい導入だと思います.4章では連続型確率変数を扱いますが,確率密度関数について考えるまでの話の持っていき方が自然ですんなりと話が入ってきました.4章後半の多変量ガウス分布とnシグマ範囲の丁寧な解説は,僕が持っていた苦手意識を克服するのに役立ちました.特に印象に残った部分は高次元ガウス分布のシグマ範囲と人間の変態度を表す独立なパラメータの話で,多分1年後くらいにも覚えていると思います.

後半5章から先は,難しい部分があり何回か飛ばして読みました.どの章も導入部分がわかりやすく,扱う対象の例があることで理解がしやすくなっています.以下各章に対する感想です.
5章:ベイズの定理についてわかりやすく説明されていました.僕は本書で初めて尤度の話をベイズの定理と関連付けて考えたのですが,言われてみれば確かにとなりました.ベイズの定理は知能を考えるうえで,何か情報が入ったときにある事象に対する認識がどう変わるかを計算する式,という説明を見て理解が深まりました.
6章:図がとても分かりやすかったです.特にロボットの状態の不確かさの部分で,考えている様子がどういったものなのか一目でわかり理論の理解に役立ちました.
7章:クイズに対して人間がどう考えるかをベイズの定理や尤度関数を使って解釈する部分が印象に残りました.尤度関数が地図の上で表現されていることで直感的に話を理解することができました.後半は少し難しくて飛ばしながら読みました.大学の実験でROSを使った移動ロボットを扱いましたがその理論については深い理解をせずに終わったので,それと関連付けながらゆっくり読んで考えようと思います.
8章:混合ガウス分布の推定の節が印象に残りました.僕は半年ほど大学内のある集まりに参加してほかの人の研究について話を聞くことをしていたのですが,混合ガウス分布の推定,変分推論の話を勉強する中であの時のあの話はこのことだったのかーーと気づくことが多く,勉強していて充実感がありました.まだまだ理解できていないのでこの章もゆっくり読もうと思います.
9章:強化学習をそれなりに勉強済みだったのですんなりと話が入ってきました.最適制御の話で,式の説明がわかりやすかったです.

本書を通じて僕の確率統計に関する理解が大きく広がり,深まったことを実感しています.とてもおすすめです.

読者モニターレビュー【 佐藤 顕治 様 株式会社キビテク(業界・専門分野:ロボット )】

掲載日:2024/03/07

ロボットと世界の相互作用に現れる様々な確率的ゆらぎを数式で表現し、ロボットの開発に利用する技術を知る、あるいは実際に数式にはしなくとも、数式で表現できることを知ることができる本です。

私もロボットを開発する中で、確率的ゆらぎに対してちょっとした実験と勘でパラメータを設定して済ませるようなことがありますが、そのような場合でも「どのような確率的ゆらぎがあるか知っており、それを数学で扱う方法があると知っている」ということは重要です。
また、確率的なアルゴリズムのソフトウェアライブラリや、それが組み込まれたデバイスなどを利用するときも、その背後にある確率の性質を知っていることは重要です。

本書の各章はシンプルな例を取り上げ、理論解説を行い、少しの教訓でまとめる構成となっており、読みやすく、随所に著者独特のユーモアが散りばめられていることも読み進めを促進します。
まえがきで飛ばし読みが推奨されており、一度の通読で完全に理解しなければならないというプレッシャーがないことも、三日坊主を防止するでしょう。
もちろん参考文献リストがあり、本書に書かれている以上に詳細な理解への導線も引かれています。

ロボット技術者に求められる数学能力のうち、確率分野のよい入門書です。
本書の次には著者の前著「詳解確率ロボティクス」に進んでもよいでしょう。
確率的なアルゴリズムの実装方法を知ることができます。

読者モニターレビュー【 鷲崎 海 様 株式会社Fusic(業界・専門分野:機械学習)】

掲載日:2024/03/07

確率の基礎から、ロボットの位置推定、環境認識まで幅広く扱っており、自動運転やロボットの知能に関して興味がある初学者におすすめの本です。
軽快な口調で、様々な例を出しながら、話が進むので、技術書というよりは読み物みたいな感覚で読み進めることができました。もちろん、4章あたりから、数式が増えてきて、6,7章は腰を据えて読む必要がありました。しかし、ロボットの動作の数式化と、センシングによるロボットの位置推定に関して簡潔にまとめられており、難しい内容ながら、初学者がロボットに関する勉強や研究をするうえで、大いに助けになる本だと思いました。

第5章の試行回数と信頼性における「ロボットの性能が改善したかどうかを計測する際に、どれくらい実験すればよいのか」というテーマは、読者が今後研究していくなかで、役に立つだろうと思いました。また、第8章、9章では、機械学習や、ロボットの意思決定に関する強化学習など、最近のロボットの知能研究で必要な情報の基礎が書かれており、難しい内容ですが、ロボットの初学者にとって、ロボットの知能というテーマを知る良い機会になると思いました。

機械学習エンジニアとしても、自律ロボットにおけるベイズの定理の応用や意思決定のための強化学習について知ることができ、読んでて面白かったです!