レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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ロボットを体系化する出発点と位置づけ,関連するあらゆる事項を網羅。ロボットから派生する学問,技術,社会,文化の全貌を理解するための最新・最良の必携ハンドブック。部分改訂とは全く異なる,大きな刷新を図った全面大改訂版。
- 発行年月日
- 2023/03/15
- 定価
- 41,800円(本体38,000円+税)
- ISBN
- 978-4-339-04679-3
レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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【『新版ロボット工学ハンドブック』(2005年発行)編集委員長 増田良介様】
掲載日:2023/10/11
『ロボット工学ハンドブック(第3版)』 に寄せて
増田良介(東海大学名誉教授)
(『新版ロボット工学ハンドブック』(2005年発行)編集委員長,ロボット学会フェロー)
このたびロボット工学ハンドブックが18年ぶりに改訂され,第3版が出版された。この間のロボット技術の発展はめざましいものがある。
『ロボット工学ハンドブック(第3版)』 (2023年発行) のまえがきにも触れられているように,「ロボット工学」がまだ完全ではないが「ロボット学」になってきていることが, 編章の構成からわかる。すなわち,この種のハンドブックの定番である「基礎理論」を最重要ポイントとして始めに解説することから離れ,最後にもってきている。代わりに,「ロボット学概論」として200ページ以上をさいている。ここでは,ロボットに関わる歴史や物語,思想など,あらゆる分野の技術者・学生の人たちに読んでほしい内容が含まれている。
すなわち,ロボット工学が,人間の本質を見定める多くの課題を持っていることが分かり,機械工学や電気工学などの基幹工学分野と本質的に異なる側面があると考えられる。
初版(1990年版),新版(2005年版)そして今回の第3版のハンドブックの変わり方を見ると,ロボット工学・ロボット学の進展および広がりを大いに感じることができる。
要素技術については,センサ関係及び制御機器の記述が変わっているのは当然のこととして,それに対して通信・エネルギー・環境認識の新技術,認知ロボティクス,ネットワークロボティクス,身体拡張なども解説されている。また,特にロボット応用において,工場内ロボットの記述が三分の一のページ数になっているのに対して診断治療・リハビリ支援,サービス,災害対応,宇宙・水中,マイクロなどの記述が倍増し力が入れられている。
ロボット工学の基礎理論を最後の章に持ってきているのは評価できるが,この編の最後の節の「標準化・安全・倫理」の内容が,ロボットの分野で今非常に重要な事柄であることが伝わるかどうかが,やや心配である。
最近,書籍や情報の電子化が進み,必要な情報は検索すれば容易に得られるようになってきた。しかしながら,ロボット工学を代表とする総合科学においては,個別の事項の独立した知識の必要な部分のみを必要に応じての電子的に集めるだけでは不十分で,ハンドブックの文字通り,手元に置いてすぐに必要なときも,特に必要でないときも開いてみることが重要になってくると考えられる。既にロボットの専門家となっている人も,これからロボットに携わる人もハンドブックを「読む」ことが役に立つと考えます。できれば,以前の新版(2005年版)と比較しながら読むことをおすすめする。
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「日本ロボット学会誌」2023年4月号
掲載日:2023/05/18
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