レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

生物ネットワーク解析

バイオインフォマティクスシリーズ 2

生物ネットワーク解析

本書では,学部生,大学院生,ならびにバイオインフォマティクスやシステムバイオロジーの分野に関わる技術者や研究者を対象に,生物ネットワーク解析の基礎から応用までを,具体的な事例を交えながら解説している。

発行年月日
2021/11/15
定価
3,520(本体3,200円+税)
ISBN
978-4-339-02732-7
在庫あり

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

日本バイオインフォマティクス学会ホームページ

掲載日:2022/06/16

「生物の科学 遺伝」(2022年1月発行号(76-1))

「生物の科学 遺伝」(2022年1月発行号(76-1))

掲載日:2022/01/14

生物関連書籍の「新刊一覧」にてご掲載いただきました。

読者モニターレビュー【 渡辺 諭史 様 株式会社サイキンソー(ご専門:腸内細菌)

掲載日:2021/11/18

生態学の研究者にとって、種間ネットワーク解析とそれにより得られる種数、メタ群集の推定は重要な研究課題である。
しかしながら、生物ネットワーク解析に関する国内の書籍は未だ少なく、外国文献から情報を仕入れているのが現状であった。
本書は、生態学者が種間相互作用、メタ群集を推定、計算するために必要な生物ネットワーク解析に関する指標や、代表的な統計モデルの解説が丁寧になされている。
特に、これまで理解が難しかった、相関ネットワーク分析の章において、生物種の区別を必要とするメタ群集を扱う際の問題点を詳細に解説している点は、他の類似書籍とは一線を画する章である。
生態学モデリングを行う研究者には是非とも手にとって読んで欲しい一冊である。
具体的な解析手法は、github上のsource code側に預けられており、プログラミング言語を用いたデータ解析に慣れていない読者には、ややとっつきにくいかもしれない。
続刊もしくは別冊などで、具体的な解析フローを、コードの解説も加えて追記してもらえると有り難い。

読者モニターレビュー【 中西 瑛太 様 東京大学大学院生(ご専門:ゲノミクス)】

掲載日:2021/11/04

目次を眺めると他のネットワーク科学の書籍と共通する項目が多い。しかし、実際の内容はネットワーク科学の基礎理論を押さえつつ、生物学分野における研究事例や深層学習などの話題も挙げられており、書籍名の通り生物ネットワーク解析に特化したユニークな入門書である。本書の中でも特に、ドライバ・ノード(必須遺伝子や疾病関連遺伝子など)を求めるネットワーク可制御性解析は、オミクスデータの解釈性を高めたり、生命の複雑系を理解したりするために、生物学分野の研究者にとって非常に有効な手法であると感じた。本書全体を通して、わかりやすく端的にそれぞれの指標の特徴や解析手法の限界などが挙げられている点も、解析を行うときの指標・手法の選択に役立つだろう。また、GitHubのコードは、Rの導入から全章の生物ネットワーク解析の手法が丁寧に説明されているので、プログラミング初学者でも実践へステップアップできる構成になっている。生物ネットワーク解析の基礎を押さえることができたり、書籍・GitHub中の豊富な参考文献から知識の幅の広がりが期待できたりする点で、初学者の1冊目として最適だと思う。

読者モニターレビュー【 日置 恭史郎 様 国立環境研究所(ご専門:環境・生物)】

掲載日:2021/11/01

本書は、ネットワーク解析とその生物分野への応用について、体系的に書かれた書籍です。そもそも生物ネットワークとは何かという導入から(1章)、ネットワークの基礎的な考え方やモデル(2~3章)、より実践的ネットワークの解析法あるいは推定法(4~7章)まで、基礎から応用まで幅広く扱っています。
このような題材の書籍にありがちな、数式ばかりで理解できないということは決してなく、私のようなインフォマティクスの門外漢にも分かりやすく平易に書かれています。個々のトピックの記述は割とあっさりなので、例えば数学的な性質などを深く知りたい方には物足りないかもしれません。ただ、文献は豊富に引用されているので(333本)、分野全体を外観する入門書としては適当だと思います。
またありがちな、実践に偏重しすぎてコードを動かすだけで満足してしまうということもありませんが、著者のGitHubページには本書を追体験できる解析用Rコードが公開されています。練習用のデータも多数紹介されており、GitHubページだけでも実践的な力はつけられそうです。
以上のように本書は、理論の理解と実践技能の習得とのバランスがとれた良質な入門書です。

読者モニターレビュー【 小杉 孝嗣 様 東京工業大学(ご専門:バイオインフォマティクス・ケモインフォマティクス)】

掲載日:2021/10/28

本書は、基礎から実践的な応用事例まで幅広く取り扱っている。基礎的な内容として、遺伝子制御ネットワークやタンパク質相互作用ネットワークの様な生物ネットワークの実例からネットワーク解析の次数やクラスター係数といった基礎、ネットワーク解析でよく用いられるモデルの説明から始まる。ネットワーク構造から算出される指標である、構造的中心性指標の適用事例としてWebでよく用いられるPageRankが代謝反応ネットワーク解析に応用された例は非常に興味深い。また、中心性と機械学習についての言及もあるため、機械学習に分子グラフのようなネットワークの概念を取り入れたい方も参考になると考えられる。可制御性解析を用いた、疾患関連遺伝子の推定や薬剤標的分子の推定するためのドライバーノードの解析方法はとても実践的と感じた。また全ての章において、Rmdと結果のHTMLが公開されており、すぐ実践できるのも魅力である。このことから、本書は、バイオインフォマティクスやシステムバイオロジーの分野において、ネットワーク解析を「体系的」・「実践的」に学びたい初学者・中級者向けの書籍である。

読者モニターレビュー【 稲毛 純 様 東京医科歯科大学(ご専門:バイオインフォマティクス)】

掲載日:2021/10/26

トランスクリプトームなどの大規模データを用いた研究をされた経験がある方は、遺伝子間の相互作用を視覚化したり、重要な遺伝子を特定したりするために、ネットワーク解析をしてみたいと考えたことがある人は少なくないと思う。一方で、ネットワーク解析に関する参考書は、前提とする線形代数の知識など、(私のような)大学数学をバックグランドとしてもたないものには理解が難しい本が多く、一通り読み終わる前に途中で挫折してしまった経験がある。本書は、そのような生物学の研究者にとって最適な構成になっている。まず、そもそもネットワークとはなにか、ということから丁寧に説明が始まる。その後、ネットワーク解析に用いる指標や、これまでの歴史も含めた代表的なモデルの紹介、実際の解析手法がわかりやすく説明されていく。高校レベルの数学知識に加えて、入門レベルの線形代数の知識があれば、この本を読み通すことはできるだろう。それぞれの話の途中にあるデータベースの紹介や、解析に使用するsource codeがgithubからダウンロードできるのも、知識から実践へ向かうためには非常にありがたい。是非とも、これからネットワーク解析を始めたいと考えている方は、本書を手にとって眺めていただきたい。