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Pythonで学ぶフーリエ解析と信号処理

Pythonで学ぶフーリエ解析と信号処理

本書では,1次元の信号処理の基本となる「フーリエ解析の数学的基礎」,「信号処理の原理と使い方」,「Pythonによる科学技術計算の基礎」について解説しており,専門的な信号処理を学ぶ土台となる知識を得ることができる。

発行年月日
2020/09/28
定価
2,970(本体2,700円+税)
ISBN
978-4-339-00937-8
在庫僅少

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

読者モニターレビュー【earlsuke様(R&Dエンジニア,専門:自然言語処理)】

掲載日:2020/09/18

信号処理を学ぶための基礎作りを目的として本書に惹かれました。
私が感じた本書の特徴は,①わかりやすさを重視した章立て,②式展開の丁寧さとPythonによる波形描画です。

①章立てについて
目次を確認していただけるとわかるように,各章10ページ程度とコンパクトにわかれております。これらは読みすすめるのに手頃であり,各章の独立性も高いため,興味のある内容を効率的に学習することができました。また,各章の冒頭には,その章を学ぶことに対するねらいが記述されており,テンポよく読みすすめることができました。

②式展開について序論でも語られているように,信号処理に向けたフーリエ変換を数学と工学の両面から学ぶための教材として上手に作られていると感じました。数式の展開時には,詳細な説明が織り交ぜられ,授業を受けているような気分になりました。また,Pythonによる波形描画によって,パラメータを変更しながら,数式とグラフでイメージつかみながら学習をすすめることができます。NumPy,Matplotlibなどライブラリの基本的な使い方も紹介されており,Pythonに馴染みがない方でも,とっつきやすいと思われます。

総評として,信号処理の基礎知識としてのフーリエ変換を学ぶのにあたり,大学の学部生から社会人におけるまで幅広い学習者に対しておすすめできる書籍でした。

読者モニターレビュー【cocomoff様(研究職,ご専門:計算機科学)】

掲載日:2020/09/16

本書では,Pythonを用いながら信号処理の基本的な概念から,具体的なスペクトログラム作成まで学ぶことができます。

本書の特徴は,実行可能なPythonコードが1ページ未満の小さい単位で用意されていて,数学的な式展開と信号処理の対応関係が分かりやすくまとめられていることです。一般の書類で省略されがちな式展開についても詳細に展開が説明されていて,自学自習するにあたってとても参考になります。同様に演習問題についても配慮がされています。

特徴的な章として,10章にルベーグ積分に関する説明が補足されていて,応用の観点からルベーグ積分をはじめて学ぶためにも情報がまとまっていると思います。信号処理を学ぶだけでなく,Python/Numpy/Scipy/Matplotlibを利用する例を学ぶためにも本書はオススメできます。

読者モニターレビュー【山口直彦 先生(東京国際工科専門職大学 助手,専門:情報学)】

掲載日:2020/09/09

表紙に描かれた,波形にじゃれつく黒猫のイラストが印象的な本ですが,内容は非常に本格的です。まえがきで著者が「既存の信号処理の教科書に目を通してみると,実践的に書かれたものでは数学的な厳密さが犠牲に,厳密に書かれたものでは実践が犠牲になりがちな傾向にありました。」という問題意識からこの本が生まれたとある通り,フーリエ解析の背景にある数学的な理屈を学ぶ内容でありながら,Pythonによる演習や基礎的な例題を通じて「とにかく手を動かして試してみて」から「詳しい理屈を確認する」という方針が徹底されています。

難易度としては,フーリエ解析や信号処理を全く知らない初学者がいきなりこの本で独習するのはやや難しいと思います。信号処理の基礎を学習済みの人がさらに理論的裏付けを学ぶのに最適です。前提知識として大学の初等数学程度の知識と,Pythonそのものの説明については必要最小限なライブラリの使い方が説明されているのみなので,Pythonそのものの文法や使い方は別途学んでおく必要があります。

本書の大きな見所は2つあると思います。一つはライブラリ(Numpy)のFFT関数を使うだけでなく,再帰呼び出しを使ったFFT関数を自作し,行ごとに逐次解説している事です(8.5章)。なぜFFTが離散フーリエ変換を高速に行えるのか,理屈と実践の両側から学べます。二つめはルベーグ積分の解説がしっかり書かれている事です。ルベーグ積分は積分順序を交換できるか否かを議論する際に必要な重要ツールですが,本格的に学ぶのは大変なため,積分順序の交換については軽く説明が流されてしまっている事が多いです。本書は,あっさり読み進めたい人向けの厳密さを損なわない最小限のサジェスチョンを本編に含めつつ,少し腰を据えて学びたい人向けに第10章を丸々使ったルベーグ積分の入門解説があって,読みやすさと厳密さを両立させる工夫がなされています。