レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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「技術系公務員・技術士試験」 解答力を高める 機械4力学基礎演習 - 材料力学,機械力学・振動・制御,熱力学,流体力学 -
本書は,機械系の「大卒技術系公務員」と「技術士資格」の合格対策本である。厳選した機械4力学(材料力学,機械力学・振動・制御,熱力学,流体力学)の過去問を解くことによって,機械工学全般の基礎知識を学べるように工夫した。
- 発行年月日
- 2019/01/15
- 定価
- 2,530円(本体2,300円+税)
- ISBN
- 978-4-339-04659-5
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読者モニターレビュー【 JAZZCAT 様(業界・専門分野:鉄鋼機械エンジニアリング )】
掲載日:2024/01/25
レビュアーは、土井正好氏による著書「解答力を高める機械4力学基礎演習」をレビュー致しました。その結果を箇条書きにて、下記致します。
① 本書は、「大卒技術系公務員」および「技術士資格」双方の合格対策本として書かれた著作です。そのため、扱われている演習問題は全て、双方の試験の「過去問」です。一般的に言える事項ですが、試験に合格するための最短経路は、その試験の「過去問演習の繰返し」に限ります。その理由は、「過去問」という名の通り、「実際に出題された実績のある問題」であるため、実際の試験と同じレベルで演習を行うことで、合格ラインに達することができるからです。この点で、本書は非常に良い書籍だと感じました(技術士資格の書籍は多く販売されていますが、公務員試験特に技術系の書籍の販売は、意外に少なく、情報量が不足しているように感じます)。
なお、他資格の試験の対策本などでは、著者が過去問を参考に作成した創作問題の演習により、実力をつける形式のテキストが発売されていますが、それでは、実際に問題を作成している出題者の意図と食い違いが発生する場合が多く、試験本番で困ることが多いと思われます(レビュアーも経験済みです)。
② ①に記載した通り、公務員試験と技術士資格の2つの試験の対策本としており、レビューをご覧になられている方の中には、「別々の試験なのに、同じ対策本にしてよいのか?」と疑問を抱かれる方もいらっしゃるかと思います。
レビュアーは、技術士資格の1次試験はすでに合格済みで、その対策として本書も5~6回ほど繰り返して演習したことがあります。その際に気づいたことですが、両者の試験(公務員試験は、おそらく、択一式の問題かと思われます)は、レベル、内容ともに、非常によく似ている問題が出題される、ということでした。そのため、双方の演習をすることで、さらに合格する確率を高めることが可能になるかと思います。
なお、本レビューを書くにあたり、レビュアーは再度、約7割の問題を解いた上で、レビューを書いていることを付記しておきます(残りの3割の問題は、時間の都合上、解ききれなかった問題や実際に出題された際にも、解く必要がない問題(解けるだけの余裕のある時間が無いと予想される問題)およびレビューを書く時間を考慮したため、解かなかっただけです。本来であれば、全問解くべきです。この点、ご了承頂ければと思います)。
③ 本書に記載されている演習問題は、著者の実績に基づき選定されたものである点も、非常に信頼がおけるものと思いました。本書の前書きにも書かれている通り、著者の研究室の卒業生の約7割が公務員試験に合格している実績を考えれば、言うに及ばず、と思います。
その中で選定された問題群が本書に記載されているので、まずは、それらの問題を繰返し行い、試験の対策を行うのが得策かと思いました。
④ 本書はまた、「機械工学基礎解答力養成」を第一の目的としている点でも、非常に活用できる良書であると思いました。その理由は、下記のレビュアーの考えによります。
a) 機械工学で扱う内容は非常に多岐にわたる(ここ最近は、より専門性が高くなっているため、多くの内容を勉強しなくてはならなくなり、時間が不足するようになっているように感じます)ため、1科目ずつのテキストの販売は多いですが、公務員試験や技術士試験などの資格試験の場合のように、機械工学の基礎科目(4力学+制御と考えればよいかと思います)の全範囲から出題される場合に対応できる書籍は、ほとんど無いように思われます。そのため、試験対策には、最低でも4~5冊のテキストをやり直す必要があり、時間的にも、金銭的にも多大な浪費となります。その点、本書は、上記の機械工学の基礎科目が「1冊で、コンパクトにまとめられている」ため、時間的、金銭的な問題もクリアできるかと思います。
b) 扱われている問題は、公務員試験と技術士試験の過去問ですが、双方とも、「非常に良く練られた良問」であると思います。そのため、機械工学の基礎知識が、自身に身についているかどうかを確認するにはもってこいの題材かと思います。
c) 本書は、日常の学習の演習書としても、また、大学や高専の試験対策としても、非常に適切な教材であるものと思いました。下記d) にて言及した通り、公務員試験、技術士試験は決して難問が出題されるわけではなく、基礎力に裏打ちされた基礎知識を試す問題が出題されます。この点では、上記の大学や高専での中間、期末試験でも同様のことが言えるものと思います。まさに、日常の試験対策用と公務員・技術士試験対策用として活用できる、一石二鳥の書籍だと思いました。
d) レビュアーは某エンジニアリング会社に勤務する会社員であり、技術系の教育を担当したことがあります。その中で感じたことは、新入社員はおろか、中堅社員でも、本書に記載された問題をスラスラと解ける方は少ないのではないかと思いました。しかし、これらの試験の問題は決して難問ではなく、基礎力に裏打ちされた基礎知識があれば、問題なく解ける問題であると思います。そのため、ある程度はこれらの問題を解くことができなければ、会社での業務や課題、開発や研究に、機械工学の知識を活用するのは難しいのではないかと思われます。
e) 上記a)と重複する点がありますが、本書は、機械工学の基礎科目が1冊でコンパクトにまとめられているため、「必要な項目」および「(試験で)頻出される可能性が高い項目」がもれなく含まれている点が良いと思いました(目次を参照願います)。なお、各位で「これも必要では?」と感じられた項目がある場合には、適宜、所有されている書籍や試験の過去問などで補足頂ければ、より良いと思います。
f) e)の補足的な内容(1つ目)になりますが、公務員試験や技術士試験(ともに、択一式)は、確実に正しい答えが出る問題しか出ない(出せない)と思います。そのため、自ずと頻出問題は決まってきます。頻出問題は言い換えれば、出題者が受験者に知っておいてもらいたい(知っておくべき)事項、と解釈することもできるかと思います。特に、技術士試験は、過去問を流用することを明記していますので、その点でも、本書のコンセプトは意義があるものと思います。
g) e)の補足的な内容(2つ目)になりますが、これは本書の特徴ともいうべき点とも言えますが、演習問題1問に対して、解答が見開き1ページから多くて3ページにまとめられている点です。そのため、試験対策の時間を取りづらい方や、短期間で機械工学の主要分野を復習したい方にも「計画が立てやすい」、「モチベーションが上がる(1日1題ずつ問題を解くなど)」といったメリットがあると感じました。
⑤ まえがきにも書かれている通り、各章のはじめに、その章の問題を解くための公式がまとめられています。これらの公式を通じて、その分野の概略を把握するのには、非常にもってこいだと思いました。ただし、これらの公式は、それが導出された背景や内容を自分自身で説明できるようにしておく必要があると思います。その理由は、それらの公式をそのまま適用することが可能な問題は少ないと思われ、問題とそれらの公式の意味する内容を理解した上で、解答する必要があるからです。特に、公務員試験や技術士試験は、ひとひねりされている問題が多い(そのために、良問と上記で記載致しました)ので、それらに対応するためには、やはり、上記を鑑みる必要が多分にあるかと思います。
⑥ 本書全体を通じての一番の特徴は、何といっても、問題文を図解化している点にあると思います。公務員試験、技術士試験の問題は、文章だけで構成されている場合が多く、図にしてみないと分からないことが多いように思います。これは、問題を解く際の基本的な心構えかとレビュアーは考えていますが、本書でも一貫して、「図解化→解答」の手順を踏んでおり、非常に良いと感じました。
⑦ 本書に記載されている解答は、各章のはじめにまとめられている公式を最大限に利用してはいるものの、途中の式変形や考え方は丁寧に書かれており、読んでいても戸惑うことはないものと感じました。特に、n乗根を開く計算などは丁寧に記載されており、とても良いと思いました。公務員試験は受験経験がないため不明ですが、技術士試験の場合、持ち込める電卓は平方根計算ができる「普通の電卓」のみですので、n乗根の計算やlog、lnなどの対数計算は電卓ではできません(対数計算は、問題文中に値が記載されているので、特に悩む必要はないかと思いますが)。そのため、手計算でできるように日ごろから訓練する必要があります(どの問題も、うまく手計算で回答が出るように工夫されているように感じます)。
⑧ 公務員試験を受験される方は、是非とも、本書の購入と共に、同著者による新刊本「工学につながる数学・物理入門演習」もセットで購入の検討をして頂ければと思います。実際、公務員試験は双方の試験を課されるためです。
以上、簡単ではありますが、本書をレビューした結果を記載致しました。本書をご購入予定の方々のご参考になれば、非常に幸いです。
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amazonレビュー 978-4-339-04659-5 「技術系公務員・技術士試験」 解答力を高める 機械4力学基礎演習
掲載日:2020/08/24