圧縮性流体力学・衝撃波

圧縮性流体力学・衝撃波

圧力波と流れの相互作用を捉える学問である圧縮性流体力学を学べる。丁寧に式を展開し,確実に理解できるよう解説した。

ジャンル
発行年月日
2017/03/27
判型
B5
ページ数
256ページ
ISBN
978-4-339-04653-3
圧縮性流体力学・衝撃波
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定価

4,730(本体4,300円+税)

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圧縮性流体力学は,圧力波と流れの相互作用を捉える学問であり,シンプルに美しく体系化されており,衝撃波はその象徴である。原理はシンプルだがその適用範囲は奥深い。本書では,丁寧に式を展開し,確実に理解できるよう解説した。

圧縮性流体力学は,圧力波と流れの相互作用を捉える学問といってもよい。シンプルに美しく体系化されており,衝撃波はその象徴である。原理の基本は検査体積に適用される保存関係であり,それほど高度な数学を使わなくても,多くの問題に取り組める。流路の拡大縮小,熱の出入り,力の作用によって,流れがどのように変化するかも,重要な点である。

原理はシンプルであるが,その適用範囲は奥深く,本書は当初の予定をはるかに上回る紙数に達してしまった。できれば短期間で一冊を通して読破いただきたいが,原理の理解を重視するなら,詳細に過ぎると感じた部分は読み飛ばしていただいても構わない。また,実際の問題に取り組むために,まず必要箇所から利用することもできるはずである。

本書を出版することができたのも,私を研究者の道に導いてくださった荒川義博東京大学名誉教授,圧縮性流体力学・衝撃波の分野に導いてくださった藤原俊隆名古屋大学名誉教授,高山和喜東北大学名誉教授のご指導の賜物である。心から,感謝の意を表する。本書の執筆にあたり,数年来本書の原型である学部授業「圧縮性流体力学」の教材準備に協力くださった松田晶子さん,式変形を含めた内容の確認,画像・データ・情報の提供などを通して協力いただいた名古屋大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻衝撃波・宇宙推進研究グループをはじめとする関係諸氏,そして約束の期限を十年以上超過してしまったにもかかわらず,心暖かく執筆の機会を与えてくださった,コロナ社の方々に厚くお礼申し上げる。

最後に,ここまで自分を支えてくれた両親,妻美智代と娘麻子,智子に本書を捧げることとしたい。

2017年1月 佐宗章弘

1.圧力波の伝播
1.1 音の伝播
1.2 飛行体が出す音波
1.3 一次元粒子列の運動と波の伝播
 1.3.1 ピストン-小球の衝突
 1.3.2 小球-小球衝突
 1.3.3 ピストンと小球の動き
 1.3.4 特性速度
 1.3.5 平均粒子速度
 1.3.6 運動エネルギー
 1.3.7 圧縮比
 1.3.8 ピストンにかかる力
1.4 固体衝突における圧力波の伝播

2.気体粒子の運動と熱力学
2.1 熱力学の基礎
2.2 熱速度と流速
2.3 圧力
2.4 エネルギーと温度
2.5 理想気体と状態方程式
2.6 エントロピー
2.7 エンタルピー,全温,全圧
2.8 多成分混合気体

3.流れの基礎式
3.1 流れの保存式
 3.1.1 質量保存式
 3.1.2 運動量保存式
 3.1.3 エネルギー保存式
 3.1.4 そのほかの関係式
 3.1.5 非粘性流れの相似性
3.2 ガリレイ変換
 3.2.1 慣性座標系
 3.2.2 ガリレイ変換
 3.2.3 流体の保存方程式のガリレイ変換

4.不連続面
4.1 不連続面の条件と種類
 4.1.1 ランキン・ユゴニオ関係式
 4.1.2 不連続面の分類
4.2 垂直衝撃波
 4.2.1 一般的な性質
 4.2.2 熱量的完全気体に対する関係式
 4.2.3 グランシングインシデンス
 4.2.4 衝撃波面の安定性
 4.2.5 境界層を伴う衝撃波伝播
4.3 斜め衝撃波
 4.3.1 斜め衝撃波の関係式
 4.3.2 マッハ波
 4.3.3 二つの解と背後のマッハ数
 4.3.4 付着衝撃波と離脱衝撃波
4.4 界面と不安定性
 4.4.1 レイリー・テイラー不安定性
 4.4.2 リヒトマイアー・メシュコフ不安定性
 4.4.3 ケルビン・ヘルムホルツ不安定性

5.準一次元流れ
5.1 検査体積と基礎式
 5.1.1 検査体積
 5.1.2 質量保存
 5.1.3 運動量保存
 5.1.4 エネルギー保存
 5.1.5 状態方程式
 5.1.6 音速の関係式
 5.1.7 マッハ数Mの定義
 5.1.8 微分関係式の導出
5.2 流れの性質
 5.2.1 影響係数
 5.2.2 流路断面積変化の効果
 5.2.3 加熱/冷却の効果
 5.2.4 摩擦力の効果
 5.2.5 外力の効果
 5.2.6 閉塞条件
5.3 摩擦のある管内流れ

6.生成項を伴う系
6.1 一般化されたランキン・ユゴニオ関係式
6.2 デトネーション/デフラグレーション
 6.2.1 解の存在範囲
 6.2.2 デトネーション
 6.2.3 デフラグレーション
 6.2.4 エントロピーの変化
 6.2.5 エネルギーの変化
 6.2.6 ZNDモデル
 6.2.7 デトネーションのセル構造
6.3 ラム加速器
 6.3.1 作動原理と特徴
 6.3.2 推力の導出
 6.3.3 熱閉塞点の性質
 6.3.4 ラム加速器の実験
6.4 ジェット推力の一般化
6.5 空気吸込みエンジン

7.二次元流れ
7.1 圧縮波・膨張波とプラントル・マイヤー関数
7.2 プラントル・マイヤー膨張
7.3 超音速流れに置かれた円錐周りの流れ
7.4 衝撃波の反射
 7.4.1 定常流れにおける反射形態
 7.4.2 衝撃波極線
 7.4.3 二衝撃波理論
 7.4.4 三衝撃波理論
 7.4.5 反射形態の遷移基準
 7.4.6 擬似定常流れにおける衝撃波の反射
7.5 衝撃波・境界層干渉
7.6 演習:三角翼周りの超音速流れ

8.非定常一次元流れ
8.1 音波
8.2 特性速度と不変量
8.3 圧縮波
8.4 膨張波
8.5 垂直衝撃波前後の圧力波伝播
8.6 断面積が変化する流路を伝わる衝撃波
8.7 爆風

9.リーマン問題
9.1 問題の定義と解
9.2 衝撃波管
9.3 垂直衝撃波の反射
9.4 イクスパンションファンの反射
9.5 垂直衝撃波どうしの干渉
 9.5.1 Head-on衝突
 9.5.2 先行する衝撃波に別の衝撃波が追いつく場合
9.6 衝撃波と接触面の干渉

10.特性曲線法
10.1 超音速ノズルの設計
 10.1.1 特性線と流れの変化の扱い
 10.1.2 ラバールノズルの設計手順
10.2 衝撃波管作動の波動線図

11.圧縮性流れの発生と利用
11.1 ノズルとオリフィス
 11.1.1 断面積と等エントロピー流れの関係
 11.1.2 流量
 11.1.3 推力
 11.1.4 ノズル圧力比と流れの形態
11.2 超音速ディフューザー
 11.2.1 一次元的取扱い
 11.2.2 多次元効果
 11.2.3 擬似衝撃波
11.3 超音速流れの試験方法
 11.3.1 超音速風洞
 11.3.2 超音速自由飛行
11.4 非定常ドライバー
11.5 衝撃風洞
11.6 イクスパンション管
11.7 バリスティックレンジ

12.類似現象
12.1 浅水流れ
12.2 交通流
 12.2.1 平衡連続流体モデル
 12.2.2 運動方程式を取り入れたモデルと特性速度
 12.2.3 粒子モデル

付録
付録1 各種の座標系における微分演算子(3章関連)
付録2 デカルト座標系以外の座標系における保存式(3章関連)
付録3 圧縮性流体の応力テンソル(3章関連)
付録4 等エントロピー圧縮率(8章関連)
付録5 特性速度と不変量の一般的導出(8章関連)

索引

佐宗 章弘(サソウ アキヒロ)

掲載日:2020/03/23

「日本航空宇宙学会誌」2020年3月号広告

★執筆者から読者の皆様へ★

 圧縮性流体力学では、衝撃波や膨張波といった「圧力波」と「流れ」が鶏と卵の関係にあります。それらの相互作用を学ぶことをとおして、流体に関わる物理法則がいかにシンプルに美しくできているかに触れることができます。超音速飛行機に乗らなくても、衝撃波やそれに関連した現象は、日常生活や実験室で比較的簡単に生み出されます。流体力学を専門にする方のみならず、幅広い分野の方々にその原理を理解していただくことを目指して、本書を執筆しました。

 動画1は、私の研究室で行った小型モデルの超音速飛行実験で生じた衝撃波の可視化画像です。モデルの断面積を段階的に変化させることによって、遠方での衝撃音、すなわち「ソニックブーム」を和らげることができます。



 動画2は、レーザーパルスを集光することによって気体(クリプトン)中にエネルギーを投入し、加熱された高温部(高輝度部)が膨張することによって周囲に衝撃波が伝播する実験の可視化動画です。反射してきた衝撃波が高温部と干渉して、渦輪の中心から上向きのジェットが発生しています。この現象を、「レーザー推進」と呼ばれる、将来のロケット打ち上げ技術に応用することも期待されています。