「安全工学便覧」は,わが国における安全工学の創始者である北川徹三博士が中心となり体系化を進めた安全工学の科学・技術の集大成として1973年に初版が刊行された。広範囲にわたる安全工学の知識や情報がまとめられた安全工学便覧は,安全工学に関わる研究者・技術者,安全工学の知識を必要とする潜在危険を有する種々の現場の担当者・管理者,さらには企業の経営者などに好評をもって迎えられ,活用されてきた。時代の流れとともに科学・技術が進歩し,世の中も変化したため,それらの変化に合わせるために1980年に便覧の改訂を行い,さらにその後1999年に大幅な改訂を行い「新安全工学便覧」として刊行された。その改訂から20年を迎えようとするいま,「安全工学便覧(第4版)」刊行の運びとなった。
今回の改訂は,安全工学便覧が当初から目指している,災害発生の原因の究明,および災害防止,予防に必要な科学・技術に関する知識を体系的にまとめ,経営者,研究者,技術者など安全に関わるすべての方を読者対象に,安全工学の知識の向上,安全工学研究や企業での安全活動に役立つ書籍とすることを目標として行われた。今回の改訂においては,最初に全体の枠組みの検討を行い,目次の再編成を実施している。旧版では細かい分野別の章立てとなっていたところを
第Ⅰ編 安全工学総論
第Ⅱ編 産業安全
第Ⅲ編 社会安全
第Ⅳ編 安全マネジメント
という大きな分類とし,そこに詳細分野を再配置し編成し直すことで,情報をより的確に整理し,利用者がより効率的に必要な情報を収集できるように配慮した。さらに,旧版に掲載されていない新たな科学・技術の進歩に伴う事項や,社会の変化に対応するために必要な改訂項目を,全体にわたって見直し,執筆や更新を行った。特に,安全マネジメント,リスクアセスメント,原子力設備の安全などの近年注目されている内容については,多くを新たに書き起こしている。約250人の安全の専門家による執筆,見直し作業を経て安全工学便覧の最新版として完成させることができた。つまり,安全工学関係者の総力を結集した便覧であるといえる。
前述のように,本便覧の改訂には非常に広範囲の分野の方々に原稿執筆,見直しにご努力いただいた。さらに,編集委員の方々には内容編成,原稿確認のみならず,執筆者の検討,旧著者との連絡までご担当いただき多大なご尽力をいただいた。ここに心から御礼を申し上げる。最後に,本書が研究現場,安全配慮が重要な現場で手引きとして活用され,少しでも安全の研究進展,実際の現場での安全確保に役立つことを期待している。
2019年5月
安全工学便覧(第4版)編集委員会
委員長 土橋 律
安全工学便覧(第4版)
- 安全工学会 編
- B5判/1,192頁 本体38,000円+税
- 箱入り上製本