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書籍詳細

音響サイエンスシリーズ 4)

  音楽はなぜ心に響くのか
- 音楽音響学と音楽を解き明かす諸科学 -

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日本音響学会 編

山田真司 金沢工大教授 博士(芸術工学) 編著

西口磯春 神奈川工科大教授 工博 編著

永岡都 昭和女子大教授 博士(芸術) 著

北川純子 大阪教育大教授 博士(学術) 著

谷口高士 大阪学院大教授 博士(教育学) 著

三浦雅展 龍谷大講師 博士(工学) 著

佐藤正之 三重大准教授 博士(医学) 著

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発行年月日:2011/11/18 , 判 型: A5,  ページ数:232頁

ISBN:978-4-339-01324-5,  定 価:3,456円 (本体3,200円+税)

ジャンル:

音響学,音楽学,社会学,心理学,情報学,医学の各分野において音楽がどのように研究されて,何がどこまでわかっているのかを解説した。また,今後音響学が他の学問分野とともにどのように音楽の究明に取り組んでいくかを示した。

【目次】

1. 音響学のアプローチ
1.1 音響学とは
1.2 音響学の歴史
1.2.1 哲学としての音の科学:古代ギリシア・ローマ時代から中世まで
1.2.2 物理学としての音響学:17~19世紀
1. 音響学のアプローチ
1.1 音響学とは
1.2 音響学の歴史
1.2.1 哲学としての音の科学:古代ギリシア・ローマ時代から中世まで
1.2.2 物理学としての音響学:17~19世紀
1.2.3 工学・情報学としての音響学:19世紀末以降
1.3 音楽音響学:音響学における音楽の研究
1.3.1 楽器と音律の音響学
1.3.2 音楽心理学
1.3.3 音楽情報学と音楽音響学
1.4 今後の展望
引用・参考文献

2. 音楽学のアプローチ
2.1 音楽学の分野と流れ
2.1.1 音楽学の定義
2.1.2 音楽学の成立から現在に至る経緯
2.1.3 音楽学者のアイデンティティ
2.2 音楽史学の研究方略
2.2.1 歴史の再構成
2.2.2 資料批判
2.2.3 楽器の復元と演奏実践の研究
2.3 民族音楽学の研究方略
2.3.1 音楽人類学的手法
2.3.2 計量的手法
2.3.3 民族音楽研究における相対化と美学
2.4 音楽美学の研究方略
2.4.1 「音楽美」というパラダイムの終焉
2.4.2 音楽の構造的な意味分析:記号論分析の可能性
2.4.3 音楽的感情の解釈:思弁的アプローチから認知理論へ
2.5 音楽学の現状と未来
2.5.1 音響解析と音楽学
2.5.2 音楽学再考
引用・参考文献

3. 社会学からのアプローチ
3.1 社会学からの問題設定
3.1.1 社会学の特性
3.1.2 問題の所在
3.2 音楽社会学の諸観点
3.2.1 社会の結晶化としての音楽
3.2.2 サウンドの「意味」
3.2.3 歌詞と共感
3.2.4 社会的相互作用としての音楽
3.2.5 使われる音楽
3.2.6 他者との関わりをつくる音楽
3.2.7 テクノロジーと音楽
3.3 音楽社会学の研究方略と展望
引用・参考文献

4. 心理学からのアプローチ
4.1 心理学の分野と流れ
4.1.1 現代の心理学と心理学的測定
4.1.2 心理学的測定
4.1.3 心理学調査法
4.1.4 心理学実験法
4.2 音楽心理学の研究方略
4.2.1 音楽心理学とは何か
4.2.2 音楽心理学のアプローチ
4.3 音楽の認知と感情
4.3.1 音楽の認知
4.3.2 音楽と感情の研究
4.4 音楽が心に響くとは
4.5 音楽心理学の現状と未来
引用・参考文献

5. 情報学からのアプローチ
5.1 情報学の流れ
5.1.1 情報とは何か
5.1.2 メディアの役割
5.1.3 情報の伝達
5.1.4 人工知能の歴史
5.2 なぜ音楽を情報学で扱うのか
5.2.1 音楽の情報
5.2.2 情報学における音楽情報の取扱い
5.3 音楽情報学の研究テーマ
5.4 音楽情報学の研究方略
5.4.1 音楽情報処理における音楽情報の考え方
5.4.2 「音楽美」の情報処理技術による解明
5.4.3 基本となる考え方
5.5 音楽情報学の現状と未来
引用・参考文献

6. 医学からのアプローチ
6.1 脳と心を探る学問:神経心理学
6.1.1 神経心理学とは
6.1.2 全体論から局在論へ:骨相学
6.1.3 神経心理学の始まり:Brocaによるタン氏の報告
6.1.4 高次脳機能障害とは
6.1.5 神経心理学の研究方法
6.1.6 神経心理学の基本原理
6.1.7 神経心理学の方法論と限界
6.2 失音楽症
6.2.1 失音楽症の定義と分類
6.2.2 ラベルの失音楽症
6.2.3 失音楽症の自験例-1:pure amusia
6.2.4 失音楽症の自験例-2:聴覚失認
6.3 脳賦活化実験
6.3.1 各機器の特徴
6.3.2 PETによる過去の音楽認知研究の問題点
6.3.3 PETによる音楽認知研究-1:音楽家の声部の聴き分け
6.3.4 PETによる音楽認知研究-2:音楽家と素人
6.4 失音楽症例と脳賦活化実験からわかること
6.5 音楽と医学の未来
引用・参考文献

7. 「音楽はなぜ心に響くのか」の解明に向けて
7.1 音楽を研究する諸分野の研究パラダイムと協力体制の構築
7.2 音楽はなぜ感情に訴えるのか:分野横断的試論
7.2.1 感情とは何か
7.2.2 視覚情報と聴覚情報の役割分担
7.2.3 音声情報と音楽情報
7.2.4 音楽は視覚情報より感情に訴える:サバイバルホラーゲームを使った実証例
7.2.5 試論のまとめ
引用・参考文献
索引

まえがきより

「音楽は心に響く」と述べたとき,それに真っ向から反論できる人は少ないであろう。実際,本書を手に取った多くの方々が,音楽を聴いて,大きく感情を揺さぶられた,あるいは「感動した」経験をおもちであろう。音楽を聴いて
鳥肌が立ったり,涙が止まらなくなったりした経験をされた方も少なからずおられると推察する。
 レコードやラジオ放送やテレビ放送がなかった時代,音楽は宗教的な儀式,祭り,コンサートなど,特別なとき,特別な場所で接するものであり,一般の人たちが音楽に接する機会は,そう多くなかったはずである。しかし現代の状況は,音楽メディアと音楽マスコミの発達により,夜中や通勤・通学途中でも,聴こうと思えばすぐに音楽を聴くことが可能であり,また,積極的に聴こうとしなくとも,テレビから,商店街から,駅から,どんどん音楽が流れてきて,音楽に接しない一日を送ることさえ難しい。このようななか,ひょっとすると,言葉を聴いてそれに感動する確率は下がったのかもしれないが,音楽に接するチャンスが左倒的に増えたぶん,音楽に感動した経験をもった人々の数はどんどん多くなってきているはずである。
 このような社会的状況下,現代では,音楽が「心に響く」ことが広く人々に認められているように思われる。例えばアニメーションの『マクロス』シリーズでは,人類が地球を離れ,船団を組んで異星生命体と戦いながら宇宙を旅する状況が設定されているが,このなかで,音楽が船団に住む人類の心に広く響くだけでなく,異星生命体の「心」にも響き,戦闘がなくなる様子が描かれている。音を伝搬する媒体のない真空の宇宙空間を経て,音楽が伝達されるという物理法則を無視した展開については,「歌エネルギー」とか「フォールド波」などというフィクションの概念で一応説明をしているが,これらの説明があまり不自然に感じられないのは,われわれが「音楽には理屈では説明できないほどの力がある」と思うような体験をしているからであろう。
 それではなぜ,「音楽は心に響く」のであろうか。この問いに対して,真っ向からきちんと説明できる人はいないであろう。なぜならこの問いそのもののなかに,「音楽とは何か」,「心とは何か」,「心に響くとは何か」というそれぞれが大きな問題を含有しており,しかも,「心に響いた」という共通な現象があったとしても,「心に響いた」音楽は,個人や状況によって,大きく異なるからである。このため,なかなか「音楽が心に響く」ことに共通したメカニズムを見いだす糸口が見えず,一般的には「音楽には理屈では説明できないような力がある」と説明が放棄されてしまうのではないだろうか。
 一方で,学問は知識を体系化する。したがって,音楽に関連する学問分野においては,それぞれ,「音楽はなぜ心に響くのか」という非常に難解な問題についても,少なくともその一部を解くための体系化がなされてきているはずである。
 この問題については,音楽を学術的に取り扱う音楽学だけでなく,社会学,心理学,音響学,情報学,医学などさまざまな学問分野で取り扱われてきたはずである。本書の編者の2人(山田と西口)は,音楽音響学を専攻しており,音響学を通じて「音楽はなぜ心に響くのか」という究極の問いにアプローチしているが,自分たちの分野における研究が,その問いの答えを見いだすのには,かなり遠い位置にあることを実感している。そこで,何かヒントが得られないものかと,音楽に関係する他の学問分野の著書を読んだり,音響学以外の学会に参加して議論するなど試みたが,ほとんどの場合,専門用語の難しさに辟易し,その分野での論理展開についていけずに,挫折することがほとんどであった。しかし,これは他の音楽に関係する学問分野の人たちが,音楽音響学の発表を聴いて感じることと同じかもしれない。
 例えば,われわれ音響学の研究者が,音楽学者の発表を聴いて,「きちんとした実験もせずに薄い根拠で喋っている,ただの演説だ」と思うことがしばしばあり,逆に,われわれが発表した内容に対し,「そんな実験室実験で得られた結果で生きた音楽のことは語れない」と音楽学者から反発をかうこともしばしばある。このようなすれ違いの多くは,それぞれの学問分野のなかで,どのような研究パラダイムをもって音楽にアプローチしているのか,そしてそのアプローチのなかでどのような知識の体系化が行われてきたのかについて,たがいに理解できていないことに起因していると思われる。
 ギリシア哲学の時代ならいざ知らず,高校生のころから理系,文系に分かれ,大学ではさらに学問が細分化されている現代においては,一個人が,さまざまな分野の研究パラダイムと知識の体系を学ぶことは,時間的にも能力的にも困難である。しかし,困難だからとあきらめていたのでは,いつまで経っても,解決の糸口が見えない。
 そのような思いで,西口は2005年の日本音響学会秋季研究発表会において,「音楽はなぜ心に響くのか?」というスペシャルセッションを企画し,山田が当時すでに知り合っていた,音楽学の永岡都 氏,音楽心理学の谷口高士 氏,医学の佐藤正之 氏に声をかけ,シンポジウムを行った。彼らは,それぞれの分野で精力的に活躍している中堅の研究者であるという以上に,いずれも山田が話していて「わかり合える」という実感があった研究者たちであった。さらに,2006年に日本音響学会誌62巻9号上で「音楽はなぜ心に響くのか?:音楽への科学的アプローチの現状」(pp. 672~699)という小特集を組み,上記3人の方々にそれぞれ解説を書いてもらうと同時に,誌上座談会も開き,分野間の交流を図った。
 本書は,上記の流れの延長線上で企画されたものであり,新たに,音楽社会学の北川純子 氏,音楽情報学の三浦雅展 氏に参加いただき,音楽音響学,音楽学,音楽社会学,音楽心理学,音楽情報学,医学のそれぞれの分野において,音楽がどのようなパラダイムのもとに研究されていて,「音楽はなぜ心に響くのか」という問題についてどのようにアプローチがなされ,どこまでわかっているのかを解説したものである。
 したがって,本のタイトルに惹かれて手に取っていただいた方が本書を読んでも,残念ながら「音楽はなぜ心に響くのか」の問いに,明確に答えを見いだすことは難しいかもしれない。そのかわり,読まれた方の専門分野以外の分野で何をやっているのかが大まかにわかるようになることを期待したい。それにより,読者のあなた自身も,自分の専門でない分野と交流しながら,「音楽はなぜ心に響くのか」を解く活動により広く,より深く関わっていただけるきっかけになれば,編者としてこれほどうれしいことはない。

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音楽はなぜ心に響くのか

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