超広帯域オーディオの計測

超広帯域オーディオの計測

本書のテーマは計測技術,計測対象はオーディオである。特に,オーディオ CD を上回る高品質ディジタルオーディオ時代のオーディオ計測について検証する。また,現代の音響計測技術がどこまで進んでいるのかを理解できる。

  • 口絵
ジャンル
発行年月日
2011/08/05
判型
A5
ページ数
274ページ
ISBN
978-4-339-00824-1
超広帯域オーディオの計測
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定価

3,740(本体3,400円+税)

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本書のテーマは計測技術,計測対象はオーディオである。特に,オーディオ CD を上回る高品質ディジタルオーディオ時代のオーディオ計測について検証する。また,現代の音響計測技術がどこまで進んでいるのかを理解できる。

1. 超広帯域オーディオまでの道のり
1.1 アナログ録音
1.1.1 機械式
1.1.2 光学式
1.1.3 磁気式
1.2 音質と容量
1.2.1 機械式レコード
1.2.2 光学式録音
1.2.3 磁気録音
1.3 CD-DAの音質
1.3.1 CD-DAのフォーマット
1.3.2 CD-DAの記録容量とビットレート
1.4 超広帯域オーディオ
1.4.1 ハイサンプリングと次世代オーディオ
1.4.2 オーディオの二極化
引用・参考文献

2. サンプリングと量子化
2.1 ナイキスト周波数とエリアシング
2.2 オーバーサンプリング
2.3 量子化雑音とディザ
2.4 PCM とΔΣ 変調
引用・参考文献

3. ハイサンプリングのメリットとデメリット
3.1 サンプリング定理
3.2 ハイサンプリングのメリット
3.2.1 波形忠実度の向上
3.2.2 量子化雑音レベルの低減
3.3 ハイサンプリングのデメリット
3.3.1 非線形ひずみの増大
3.3.2 タイムジッタの影響
3.3.3 スーパーオーディオCD の量子化雑音
3.3.4 パッケージメディアの品質管理
引用・参考文献

4. ハイビットとダイナミックレンジ
4.1 ディジタルオーディオのダイナミックレンジ
4.1.1 ディジタルオーディオにおけるダイナミックレンジの求め方
4.1.2 オーディオ信号のダイナミックレンジ
4.2 コンプレッションとヘッドルーム
4.3 ハイビット化によって期待されること
4.4 1 ビットオーディオの量子化雑音
引用・参考文献

5. 超広帯域のマイクロホン技術
5.1 超低周波から超音波までの音響計測
5.1.1 標準マイクロホン
5.1.2 超低周波領域の音響標準
5.1.3 超音波領域の音響標準
5.1.4 音響標準の重要性
5.2 超広帯域マイクロホンの開発
5.2.1 背 景
5.2.2 音楽録音用マイクロホンの広帯域化
5.2.3 音楽録音用超広帯域マイクロホン
引用・参考文献

6. 室内音響と超広帯域オーディオ
6.1 スタジオ,ホールの残響時間
6.1.1 残響時間
6.1.2 残響時間の測定
6.1.3 ノイズ断続法とインパルス積分法
6.1.4 クロススペクトル法
6.1.5 TSP法
6.2 室内音響の周波数限界
6.3 超広帯域オーディオと室内騒音
6.3.1 遮音の評価
6.3.2 騒音レベル
6.3.3 NC値
6.4 再生環境
引用・参考文献

7. オーディオ信号の劣化およびその計測
7.1 雑音とひずみ
7.2 オーディオ機器の測定
7.2.1 信号対雑音比
7.2.2 THD+N
7.2.3 ダイナミックレンジ
7.2.4 入出力直線性
7.2.5 周波数特性
7.2.6 群遅延時間
7.3 超広帯域オーディオ計測の問題
7.4 トランスデューサの線形性
7.4.1 線形ひずみと非線形ひずみ
7.4.2 高調波ひずみ
7.4.3 混変調ひずみ
7.4.4 その他の非線形ひずみ
7.4.5 帯域通過フィルタを用いた非線形ひずみの抽出
7.4.6 スピーカの時間ゆらぎ(ドップラひずみ)
引用・参考文献

8. タイムジッタ
8.1 ディジタルインタフェースジッタ
8.2 サンプリングジッタ
8.3 サンプリングジッタ計測法
8.3.1 周波数領域での測定
8.3.2 時間領域での測定
8.3.3 実 際 の 測 定
8.3.4 音楽信号を用いたジッタ測定
8.4 計測からわかるサンプリングジッタの諸様相
8.4.1 計 測 条 件
8.4.2 CDプレーヤ
8.4.3 DVDプレーヤ
8.4.4 パソコン用オーディオ機器
8.4.5 信号に依存するジッタ: J-test 信号
8.4.6 CD-R メディアによる影響
8.4.7 経 年 変 化
8.5 タイムジッタの許容量
8.5.1 理論上のタイムジッタ許容量
8.5.2 タイムジッタの検知域
8.6 まとめ
引用・参考文献

9. 聴覚からみたオーディオ周波数帯域
9.1 可聴域と周波数帯域
9.2 純音の可聴域
9.2.1 低周波聴覚閾値測定
9.2.2 高周波聴覚閾値測定
9.3 複合音中の超高周波音
9.3.1 調波複合音における超高周波音の検知閾
9.3.2 調波複合音における可聴周波数上限
9.3.3 音楽信号での実験
9.4 ま と め
引用・参考文献

10. 主観評価実験を行うには
10.1 出力信号をチェックする
10.1.1 信号の劣化
10.1.2 レベル校正
10.1.3 信号レベル
10.2 暗騒音,機材の動作確認など
10.3 追試可能な実験計画を立てる
10.4 ラボノート
10.5 認知的バイアス
10.5.1 ハロー効果,確証バイアス,プラシーボ効果
10.5.2 盲検法,二重盲検法,三重盲検法
10.5.3 実験者効果とヒツジ-ヤギ効果
10.6 有意差検定の注意点
10.6.1 例1:t検定の繰返し
10.6.2 例2: 尺度の混同
10.6.3 例3: 手法,尺度の変更
10.6.4 例4: データの作為的な選別
10.6.5 例5: 統計量の誤用
10.6.6 標本の抽出
10.6.7 有意水準について
10.7 おわりに
引用・参考文献
索引

大久保 洋幸(おおくぼ ひろゆき)

小野 一穂(オノ カズホ)

桐生 昭吾(キリュウ ショウゴ)

西村 明(ニシムラ アキラ)

日刊工業新聞2011年8月30日 掲載日:2011/09/13

31面 「技術科学図書」欄にて紹介。
【編著者 蘆原郁先生の本書紹介コメント】

「出版に合わせて本のホームページを用意したので,コメントを寄稿してください」と出版社の方から連絡があったのですが,自分が執筆,編纂した本について,一体何を述べればよいのか,ちょっと悩んでしまいました。この本を編纂した意図については,本の「まえがき」で詳しく述べています。この本の魅力について宣伝すればよいのでしょうが,どこを宣伝すればよいのか,自分ではわかりません。
 そこで,ここでは,本書の購入を検討されている方への注意事項を述べてみようと思います。
 本書は,タイトルをみてわかるとおり,オーディオに関する本です。それはまちがいありません。しかし,評論家やマニアの方が書かれるオーディオ関連本とくらべると,かなり異質なのではないかと思います。
 本書には,オーディオCDの音質をワンランクアップさせる秘伝のノウハウが紹介されていません。超高級オーディオ装置の試聴体験談もなければ新製品の聴きくらべレポートもありません。自作スピーカの自慢とかリスニングルーム改造など,オーディオのすばらしさ,楽しみ方について伝授する記事もありません。マニアにしか理解できない驚きの裏ワザなんて,まったく出てきません。
 本書で扱っているのは,音響計測技術の現状や課題,問題点などです。標準マイクロホンの校正手法や室内音響の周波数限界,ハイサンプリングのデメリットやタイムジッタの計測手法など,従来の書籍や雑誌ではあまり紹介されていないことがらに多くのページが割かれています。
 「超広帯域オーディオ」ということばから,高級オーディオ機器の選び方や組み合わせ,セッティングのコツなどを期待される方が多いかもしれませんが,そのような方に本書は向かないでしょう。
 本書のテーマは,計測という地味だけどあらゆる産業において必要不可欠な作業です。ですから本書にも派手なところはありません。専門的な内容も多く,気軽に楽しめる本ではありません。説明が不十分でわかりにくい部分もあると思います。編纂した本人がそう思うくらいですから,読む人は苦労するでしょう。そんなわけで,編纂者自身には,本書を積極的に宣伝する自信がありません。それでもあえていうなら,広く一般に宣伝されている部分とは違う,オーディオの別の側面を知っていただける,そんな本だといえるでしょうか。
 MP3に代表される圧縮オーディオ全盛の昨今,「超広帯域オーディオの計測」という本に関心を示される方がどのくらいいるのでしょうか,またそれは,どのような世代のどのようなポストの人たちなのでしょうか。編著者としてはそのあたりが気になります。


まえがきより

 本書は,アナログオーディオ技術の種類,変遷について簡単に紹介するところから始まる。第1章では,ディジタルオーディオメディアの代表であるオーディオCD も取り上げ,そのフォーマット,容量と音質について短く述べる。
 第2章では,ディジタルオーディオの基礎知識として,サンプリングと量子化について説明する。ディジタルオーディオを知るうえで非常に重要な量子化雑音やオーバーサンプリング,デルタシグマ(ΔΣ)変調も登場する。0 と1 の2 値しか持たない1 ビットで,どうしてオーディオ信号を記録し,再現することができるのかについても解説している。
 超広帯域オーディオは,ハイサンプリング,ハイビット,オーバーサンプリング,デルタシグマ変調といった要素によって実現されている。第3章では,このうち,ハイサンプリングに焦点が当てられる。まず,オーディオCD のフォーマットで,なぜ22050Hz以上の周波数成分の録音ができないのかが述べられる。続いて,ハイサンプリング技術によって,どのようなメリットがもたらされるのかが紹介される。この章では,ハイサンプリング化によって生じる問題点についても論じている。特に,超音波帯域まで含めた品質管理の重要性については,筆者らの過去の調査結果を含めて紹介した。
 第4章では,ハイビット化による効果について述べている。ここでは,ディジタルオーディオにおけるダイナミックレンジの求め方,1 ビットオーディオにおける量子化雑音の特性が示されている。良質なオーディオコンテンツを作るには,優れた演奏や録音技術だけでなく,信頼できるマイクロホンがなくてはならない。マイクロホンの校正は,あらゆる音響計測を支える基準である。第5章では,超低周波や超音波を録音するマイクロホンの特性がどのようにして計測されるのか,超広帯域の録音用マイクロホンはどのようなアイデアによって実現されるのかが紹介される。
 われわれが聞く音は,聴取環境の影響を受けている。同様にスタジオやホールで録音される音楽にもその空間の特性が加わる。この空間の音響的な特性を調べるのが室内音響と呼ばれる分野である。第6章では,室内の音響特性をどのようにして測定するのか,代表的な手法について解説している。
 録音・再生される信号は,雑音,ひずみによって劣化する。機器の性能を評価するには,オーディオシステム内で雑音,線形および非線形ひずみがどの程度生じているかを定量的に測定することが重要となる。第7章では,ディジタルオーディオにおいて,信号を忠実に記録・再生するための心臓部ともいえるA-D/D-A 変換器のおもな評価項目が述べられる。また,電気信号を音響波形に変換する役割を担うスピーカやヘッドホンの非線形ひずみ測定方法についても紹介する。
 タイムジッタは,ディジタルオーディオ特有の音質劣化要因として,特にオーディオマニアの間でしばしば言及されており,なかには迷信に近い言説も少なくない。その一方で,タイムジッタに関して科学的な観点で解説している書籍は少ない。そこで,本書では,一つの章(第8章)を割いて,タイムジッタについて詳しく解説している。
 オーディオ機器を評価するうえで,人の聴覚特性を理解しておくことはきわめて重要である。聴覚特性に関する知識がなければ,人にとって不要な帯域の信号に貴重なダイナミックレンジを割くといった好ましくない状況を招くことになる。第9章では,人の可聴域に関する研究を紹介する。ここでも,あくまでも聴覚閾値や可聴域の限界を定量的に測定することに主眼が置かれている。
 音は,人の耳に届くまでにさまざまな要因によって変化する。したがって音の主観評価実験を行うには,聴取環境を統制することが不可欠である。音の印象は,聞く人の心理的な側面によっても影響される。さらに実験者側の先入観や思い込みによっても実験結果が左右される。このことが音の主観評価を難しくしている。第10章では,この種の問題について述べるとともに,音響心理実験でも頻繁に用いられる有意差の検定について,正しく利用するための注意点が述べられている。