応力解析のための有限要素法理論とプログラム実装の基礎

応力解析のための有限要素法理論とプログラム実装の基礎

線形静弾性問題の応力解析に絞り,非線形有限要素法や拡張有限要素法(XFEM)に応用できる基本的な理論とプログラム実装法を解説

ジャンル
発行年月日
2018/05/10
判型
A5
ページ数
272ページ
ISBN
978-4-339-04656-4
応力解析のための有限要素法理論とプログラム実装の基礎
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本書では,線形静弾性問題の応力解析に絞り,非線形有限要素法や拡張有限要素法(XFEM)にも応用できる基本的な理論とプログラム実装方法を丁寧に解説。構造強度設計に関係する技術者・研究者が自習できるように配慮した。

構造物の強度信頼性評価のためには,応力解析を実施する必要があります。いまやコンピュータを利用する有限要素法(finite element method:FEM)は,応力解析を実行するための標準的な手法であり,汎用FEMソフトウェアが市販され,広く用いられるようになっています。実務では,もっぱらそのような汎用FEMソフトウェアが利用されるために,利用者が自らプログラム開発をする機会は以前に比べて減っているようです。しかしながら,著者は,つぎのような理由から,いまもなお,有限要素法の理論およびプログラミングの技能が重要であると考えています。

・応力解析や有限要素法の理論やプログラミングの基礎を理解していないと,実務上,汎用FEMソフトウェアを高度に使いこなすことは非常に困難です。
・ 研究開発では,汎用FEMソフトウェアのユーザサブルーチン機能を用いて利用者側でカスタマイズすることが,しばしば行われます。いうまでもなく,ユーザサブルーチンの開発にはプログラミング技能が必須です。
・ 汎用FEMソフトウェアの機能は進歩向上し続けており,その提供元である計算力学研究の最前線では,有限要素法の理論の理解を大前提としたプログラミングがつねに要求されています。
・ 研究開発の実務においては,もはや当たり前のように汎用FEMソフトウェアを用いた非線形解析が行われており,そこには拡張有限要素法(XFEM)のような新しい解析機能も順次追加されています。しかし,そのどちらの実行にも線形静弾性問題の解法が基本となります。このような現状を鑑み,本書は線形静弾性問題の応力解析に絞り,有限要素法の理論とプログラム実装方法の基本事項を詳しく解説することを目的としています。

本書の特徴はつぎのとおりです。
・ 固体分野の有限要素法解析の基礎となる応力解析の理論と数値計算の理論(第1部),それらを用いた有限要素の定式化(第2部),有限要素法解析のプログラム実装(第3部)を明確に分けて記述しています。
・ 一貫して仮想仕事の原理を指導原理として,非線形有限要素法や拡張有限要素法にも応用できる基本的な理論と実装方法を自習できるように意図しています。そのため仮想仕事の原理式の導出方法および使い方を丁寧に説明することを心がけました。
・ 他書を開かなくても,なるべく本書だけで一通り学べるようにしました。・ 最近はFortranやC言語よりもMATLABなどの数値計算ツールのほうが多く用いられているという状況に配慮し,MATLAB の基本的な演算とほぼ同じことができるフリーソフトウェアOctaveを用いた有限要素法解析プログラムの実装例を示しました。解析結果は,同じくフリーソフトウェアであるParaViewで可視化できるようにしています。

なお,本文の解説の流れから少しそれてしまうが是非知っておいていただきたい項目については,「囲み記事」で紹介しました。必要に応じて参照してください。
構造強度設計に関係する技術者・研究者の方々が,本書を読み,有限要素法の理論とプログラム実装方法の基本の理解を深め,さらには複雑難解な構造強度問題を解決する一助となれば,著者にとって望外の喜びです。
末筆ながら,コロナ社関係各位には,本書の出版にあたりたいへんお世話になりました。ここに御礼申し上げます。

2018年3月長嶋 利夫

第1部:理論
1. 応力解析の基礎
1.1 力
 1.1.1 構造物と力
 1.1.2 フリーボディーダイアグラム
 1.1.3 外力と内力
1.2 応力
 1.2.1 応力ベクトルと応力成分
 1.2.2 応力成分の定義
 1.2.3 応力で表した平衡方程式
 1.2.4 コーシーの公式
 1.2.5 応力成分の座標変換
 1.2.6 主応力
 1.2.7 主せん断応力
1.3 変形とひずみ
 1.3.1 変位と変形
 1.3.2 ひずみ
 1.3.3 ひずみ成分の座標変換
 1.3.4 主ひずみ
1.4 応力ひずみ関係式
 1.4.1 一般化フックの法則
 1.4.2 等方性弾性体のフックの法則
1.5 弾性力学の基礎方程式
 1.5.1 偏微分方程式の境界値問題
 1.5.2 二次元問題
1.6 仮想仕事の原理
 1.6.1 仮想仕事の原理式の導出
 1.6.2 ひずみエネルギー
1.7 材料強度
 1.7.1 材料試験
 1.7.2 破損の法則
1.8 材料力学
 1.8.1 材料力学の考え方
 1.8.2 トラス問題
 1.8.3 はり問題
1.9 仮想仕事の原理の使い方
 1.9.1 二次元不静定トラス問題
 1.9.2 片持ばり問題

2. 数値計算の基礎
2.1 マトリクスの計算
 2.1.1 マトリクスの定義と演算規則
 2.1.2 さまざまな形式のマトリクス
2.2 連立一次方程式の解法
 2.2.1 連立一次方程式の一般的表現
 2.2.2 マトリクスの基本変形
 2.2.3 ガウスの消去法
 2.2.4 LU分解法
2.3 補間
 2.3.1 線形補間
 2.3.2 ラグランジュ補間
2.4 数値積分法
 2.4.1 台形公式
 2.4.2 シンプソンの公式
 2.4.3 ニュートン・コーツの公式
 2.4.4 ルジャンドル・ガウスの公式
2.5 Octaveによる数値計算
 2.5.1 マトリクスの定義と演算規則
 2.5.2 連立一次方程式の解法
 2.5.3 スパースマトリクスの定義と演算
 2.5.4 mファイル
 2.5.5 Octaveによるプログラミング

第2部:定式化
3. 有限要素の定式化
3.1 一次元2節点棒要素
 3.1.1 仮想仕事の原理による定式化
 3.1.2 有限要素近似
 3.1.3 要素剛性マトリクスと要素荷重ベクトルの重ね合わせ
 3.1.4 拘束条件の処理
 3.1.5 拘束点反力
 3.1.6 ひずみ・応力の算出
 3.1.7 解析例
3.2 二次元2節点トラス要素
 3.2.1 要素剛性マトリクスと要素荷重ベクトル
 3.2.2 要素剛性マトリクスと要素荷重ベクトルの重ね合わせ
 3.2.3 システム方程式の導出
 3.2.4 拘束点反力
 3.2.5 内力の算出
 3.2.6 解析例
3.3 二次元2節点はり要素
 3.3.1 要素剛性マトリクスと要素荷重ベクトル
 3.3.2 内力の算出
 3.3.3 解析例
3.4 二次元3節点三角形要素
 3.4.1 要素剛性マトリクスと要素荷重ベクトル
 3.4.2 要素荷重ベクトルの具体的な計算法
3.5 二次元4節点四角形アイソパラメトリック要素
 3.5.1 要素剛性マトリクスと要素荷重ベクトル
 3.5.2 要素剛性マトリクスおよび物体力による要素荷重ベクトルの具体的な計算法
 3.5.3 ひずみ・応力の算出
3.6 三次元8節点六面体アイソパラメトリック要素
 3.6.1 要素剛性マトリクスと要素荷重ベクトル
 3.6.2 要素剛性マトリクスおよび要素荷重ベクトルの具体的な計算法
 3.6.3 ひずみ・応力の算出

第3部:プログラム実装
4. Octaveによるプログラム実装
4.1 一次元2節点棒要素を用いた有限要素法解析プログラム
 4.1.1 スクリプトbar3.m
 4.1.2 スクリプトbar20.m
4.2 二次元2節点トラス要素を用いた有限要素法解析プログラム
 4.2.1 スクリプトtruss3.m
 4.2.2 スクリプトtruss3vtk.m
 4.2.3 スクリプトtruss22vtk.m
4.3 二次元2節点はり要素を用いた有限要素法解析プログラム
 4.3.1 スクリプトbeam2P.m
 4.3.2 beam20P.mによる解析例
4.4 二次元3節点三角形要素を用いた有限要素法解析プログラム
 4.4.1 スクリプトtriaFEM.m
 4.4.2 triaFEM.mによる解析例
4.5 二次元4節点四角形アイソパラメトリック要素を用いた有限要素法解析プログラム
 4.5.1 スクリプトquadFEM.m
 4.5.2 quadFEM.mによる解析例
4.6 三次元8節点六面体アイソパラメトリック要素を用いた有限要素法解析プログラム
 4.6.1 スクリプトhexaFEM.m
 4.6.2 hexaFEM.mによる解析例

付録
A1. MATLABで実行する場合の注意点
A2. C言語によるプログラミングのコツ
参考文献
索引

囲み記事
・右手座標系
・ベクトルの内積と外積
・ラグランジュの未定乗数法
・実対称マトリクスの固有値,固有ベクトル
・ガウスの発散定理
・強形式と弱形式
・軸対称問題
・V & V
・曲率半径
・ひと富士見ろや
・反復法による連立一次方程式の解法
・マトリクスの固有値解析
・ルジャンドル関数とルジャンドル・ガウスの積分法
・Octaveのインストール
・面積座標
・ParaViewのインストール

読者モニターレビュー(ni様〔研究・開発職,専門:機械力学〕)

題目ままの本と言っていいと思います。
コラム的なパートで固有値解析や反復法に関する内容も多少は登場しますが,固有値とか固有ベクトルそのものについては解説されません。
本書一冊で応力解析の基礎的内容に関しては完結できる構成であり,その意志を感じます。

本書は3部構成です。
1部:応力解析・材料力学、数値計算の基礎的内容
2部:有限要素の定式化
3部:Octave(MATLAB)プログラムの実装

全体を通して数式の展開が非常に丁寧に記述されていますので,手を動かさずにざっと読んで流れを把握するぐらいの使い方もできます。
有限要素の定式化に関しても,種々の要素について仮想仕事の原理を基点として同じ流れで解説されますので,2節点要素に始まり,3次元要素まで順に読み進めていけると感じました。

プログラムの実装に関しては,スクリプトの内容が貼られているだけというわけではなく,各機能の解説もついていて,これなら自分でもできそうかなと感じさせてくれる内容です。
ただ,付録のスクリプトはMATLAB寄りではない書き方のため,MATLABではそのままでは動作しません。Octaveで動作確認後にMATLAB用に修正してみます。

初学者向けというわけでもなく,機械系出身で応力解析等の業務に従事する技術者が網羅的に理論のおさらいをし,ブラックボックスになりがちな有限要素法周辺の知識を拡充するのに役立つ書です。

参考文献は充実していません(それだけ個々の書の内容が充実しているということだと思います)ので,本書をきっかけとしてさらに深い内容へ入っていこうとする場合は,参考文献の参考文献まで掘り下げて目を通してみてもいいかもしれません。

長嶋 利夫

長嶋 利夫(ナガシマ トシオ)

専門は、計算力学、構造力学、固体力学、材料力学。
長年にわたり、
ソフトウェア開発(Fortran, C言語, Octave, …)
汎用FEMコードによる工学解析(Abaqus, Nastran, Ls-dyna, Mechanica (Creo/Simulate),…)
に従事。
計算力学の研究は、最新のIT技術を用いる面のみがクローズアップされますが、現実の現象をコンピュータ上で再現するために、解析モデルやプログラム作成のような根気強い地道な作業や、ニュートンの時代以来体系化された古典力学の理解も必要です。試行錯誤と研鑽を積みながら最先端のIT技術と古典的な学問成果という土台の上で、ものづくりに貢献できることがこの研究の最大の醍醐味と実感しています。最近は,構造物の強度信頼性評価に用いるためのバーチャルテスティングの実現に向けて、XFEM(拡張有限要素法)による破壊、損傷進展シミュレーションに取り組んでいます。

掲載日:2021/05/06

計算工学会誌「計算工学」Vol.26 No.2