グラフ信号処理の基礎と応用 - ネットワーク上データのフーリエ変換,フィルタリング,学習 -

次世代信号情報処理シリーズ 5

グラフ信号処理の基礎と応用 - ネットワーク上データのフーリエ変換,フィルタリング,学習 -

信号処理のホット・トピックであるグラフ信号処理の基礎とその応用に関する初めての和書。

ジャンル
発行年月日
2023/01/23
判型
A5
ページ数
250ページ
ISBN
978-4-339-01405-1
グラフ信号処理の基礎と応用 - ネットワーク上データのフーリエ変換,フィルタリング,学習 -
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【書籍の特徴】
本書はグラフ信号処理の基礎とその応用に関する初めての和書です。社会的ネットワークや脳ネットワーク,センサネットワークのような複雑な構造を持つネットワーク上に存在するデータを解析するために必要な信号処理技術(例えばフーリエ変換)は果たしてどのように実現できるでしょうか? 本書はグラフフーリエ変換を代表とする,様々なグラフ信号処理技術を解説しています。基礎的な知識のある電気・電子・情報系の大学学部生が理解できるよう,全体を通してできるだけ正確に,基本的な事項から記述していますので,理工系の大学初年度程度の知識があれば自分で読み進められるようになっています。また,引用・参考文献を多く記載していますので,大学院生・研究者が発展的事項を学習・研究するのにも役立ちます。

【本書の構成】
1章:「グラフ」では,すべての基礎となるグラフに関して解説し,なぜ信号処理でグラフが必要とされているのかを見ていきます。
2章:「グラフ信号とグラフフーリエ変換」では,グラフ信号と,本書を通じて利用するグラフフーリエ変換に関して解説します。
3章:「グラフ信号のフィルタリング」では,離散時間信号に対するフィルタリングをおさらいした後で,頂点領域とグラフ周波数領域におけるグラフ信号に対するフィルタリングを解説します。
4章:「グラフ信号のサンプリング」では,通常の信号処理におけるサンプリングと対比しながら,グラフ信号処理におけるサンプリングを解説します。
5章:「グラフ信号の局所性と不確定性」では,グラフ信号の不確定性やシフト・変調などを解説します。3章から5章でグラフ信号処理の基盤技術を解説しましたが,以降の章では基盤技術を利用した発展的な技術について解説していきます。
6章:「グラフウェーブレット・フィルタバンク」では,フィルタリングとサンプリングを組み合わせたグラフウェーブレット・フィルタバンクを解説します。
7章:「グラフ信号の多スケール分解」では,多スケール処理に適したフィルタ設計とグラフの縮小・拡大方法を中心に,さまざまな処理を解説します。
8章:「グラフの推定と学習」では,グラフが事前には与えられていないものの,何らかの信号値間の関係があると仮定できる場合に,どのようにグラフを推定,あるいは学習するかを解説します。

1章〜4章は,グラフ信号処理の基礎的事項であるため,6章以降を読む前に一読することをお勧めします。5章も基礎的事項ですが,他の章とある程度独立しています。6章〜8章は発展的事項ですので,自分の興味に合わせて読むことが可能です。

信号処理は現代の情報化社会の礎である。我々が(自分自身が存在している)物理世界と(情報を処理する)サイバー世界とを自由に行き来できるのも,サンプリング定理をはじめとした信号処理や情報理論がその基盤として存在しているからこそである。

信号処理の理論体系はさまざまな数学・工学分野の研究を巻き込みながら螺旋的に発展を続けている。特に重要なのが適用範囲の拡大であろう。もともと時系列データを対象としていた信号処理であるが,画像などの空間上のデータ,さらにより高次元のデータへと,信号処理技術を利用することができる領域は拡大を続けている。ニューラルネットワークをはじめとした機械学習・AI技術にも信号処理技術は広く用いられている。

従来のディジタル信号処理は信号の「構造」がサンプリング周波数で自動的に決められていた(あるいは,自動的に決められると仮定していた)。これは物理的なデータをA-D変換器でセンシングするという性質上,ある意味当然であった。この場合,ディジタル信号の信号値は等間隔で整列していることになる。

一方で,信号が必ずしも整列しておらず,空間上に複雑・非均一に分布するデータを解析する需要が近年増加している。このような複雑な構造を持つデータは,しばしば信号値間の関係がネットワークとして与えられる場合がある。ネットワークの代表的な例は,社会的ネットワークや脳ネットワークである。このようなネットワーク上に存在する信号の場合,信号値(上述の例ではユーザや電極)の間の関係は均一でないことが多い(ソーシャルネットワーキングサービスでのフォロワーの数がよい例である)。このようなネットワーク上のデータを解析するために必要な信号処理技術は果たしてどのようなものだろうか。

本書でテーマとするグラフ信号処理は,信号の定義域をネットワーク(グラフ)の頂点上に持つ信号(グラフ信号)を解析するための信号処理技術の一群を指す。グラフ信号処理は上述した応用に対する需要のみならず,その理論的な面白さも手伝って,近年大きく発展している信号処理のホット・トピックである。特にグラフ信号処理が興味の対象とするのは,グラフフーリエ変換を中心としたネットワーク上データの周波数解析技術である。また,フィルタリングやサンプリングなど,通常の信号処理ではすでに大部分が完成されている理論体系も,ネットワーク上の信号のために再構築する必要がある。

我々はデータ(信号)の何を知っていて,何を知らないのか。そしてそのデータから何を得たいのか。わかっていることとわかっていないことを知り,それを利用してデータを眺めるのが信号処理だけでなく工学や数学の基本的な思想である。誤解を恐れずいえば,グラフ信号処理は信号処理を再定義する試みの一環である。

本書はグラフ信号処理の基礎とその応用に関する初めての和書である。本書は全8章から構成される。まず第1章ではすべての基礎となるグラフに関して説明する。第2章ではグラフ信号と,本書を通じて利用するグラフフーリエ変換に関して述べる。第3章から第5章まではグラフ信号処理の基盤技術を説明している。グラフ信号のフィルタリングをまず第3章で述べた後,サンプリングを第4章で説明する。また,グラフ信号の不確定性やシフト・変調などは第5章で解説している。以降の章は上述の基盤技術を利用した発展的な技術である。第6章ではフィルタリングとサンプリングを組み合わせたグラフウェーブレット・フィルタバンクを,また,第7章ではグラフ信号の多スケール解析に関して述べる。グラフ信号処理ではデータ解析のためにグラフが必要である。一方,必ずしもグラフが事前に与えられるとは限らない。本書の最後の章として,第8章でグラフの推定や学習手法に関して説明する。原則として,各章の最後に応用に関して記した。

基礎的な知識のある電気・電子・情報系の大学学部生が理解できるよう,本書を通じてできるだけ正確に,基本的な事項から記述するよう心がけた。一方で,本書で扱うには技術的・理論的に複雑すぎる事項は思い切って簡略化した。また,発展的事項を学習できるようにするため,引用・参考文献を多く記載するようにした。グラフ信号処理はいまだ発展を続けている。本書を通じてグラフ信号処理の基礎や応用に興味を持ってもらえたら望外の喜びである。

本書を執筆する機会を与えてくださり,また初稿に対して有益なコメントをいただきました「次世代信号情報処理シリーズ」監修の東京農工大学田中聡久先生に厚く御礼申し上げます。また,Meta前原貴憲さま,東京工業大学小野峻佑先生,東京理科大学山田宏樹先生をはじめとして,さまざまな方から有益なコメントをいただきました。ありがとうございます。筆者の研究室の学生や秘書の皆さまにも校正(添字のミスが多かったです!)や図の作成に協力してもらいました。大変助かりました。特に原惇也さん,横田陽樹さんには多くの図を作成してもらいました。本書の完成を辛抱強く待ってくださったコロナ社にも心より感謝申し上げます。

最後に,本書の執筆を陰ながら支えてくれた家族へ:ありがとう!

2022年11月
田中雄一

1.グラフ
1.1 さまざまなグラフ
1.2 グラフ作用素
 1.2.1 隣接行列
 1.2.2 接続行列
 1.2.3 度数行列
 1.2.4 グラフラプラシアン
章末問題

2.グラフ信号とグラフフーリエ変換
2.1 ディジタル信号
2.2 グラフ信号
2.3 グラフのスペクトル:グラフ作用素の固有値と固有ベクトル
 2.3.1 信号の変動
 2.3.2 ラプラシアン2次形式
 2.3.3 グラフのスペクトル
 2.3.4 グラフ作用素の固有ベクトル
2.4 グラフフーリエ変換
 2.4.1 導入:線形辞書によるスパース変換
 2.4.2 グラフフーリエ変換の定義
 2.4.3 フーリエ変換との関係
 2.4.4 DFT・DCTとの関係
2.5 グラフ作用素の固有値・固有ベクトルの特徴
 2.5.1 隣接行列のスペクトル
 2.5.2 グラフラプラシアンのスペクトル
章末問題

3.フィルタリング
3.1 導入:離散時間信号のフィルタリング
3.2 頂点領域でのフィルタリング
3.3 グラフ周波数領域でのフィルタリング
3.4 頂点領域でのフィルタリングとグラフ周波数領域でのフィルタリングの関係
3.5 多項式グラフフィルタの設計
 3.5.1 実関数のチェビシェフ多項式近似
 3.5.2 グラフ周波数領域フィルタのチェビシェフ多項式近似
3.6 応用
 3.6.1 適応的画像フィルタ
 3.6.2 バイラテラルフィルタのグラフフィルタ表現
 3.6.3 画素適応型フィルタのグラフフィルタとしての設計
章末問題

4.サンプリング
4.1 時間領域でのサンプリングと一般化サンプリング
 4.1.1 シフト不変空間でのサンプリング
 4.1.2 一般化サンプリング
 4.1.3 部分空間に対する事前知識がある場合
 4.1.4 滑らかさに対する事前知識がある場合
4.2 グラフ信号のサンプリングと復元
 4.2.1 サンプリング・復元のフレームワーク
 4.2.2 部分空間に対する事前知識がある場合
 4.2.3 滑らかさに対する事前知識がある場合
4.3 グラフ信号モデル
 4.3.1 周波数領域における生成モデル
 4.3.2 頂点領域における生成モデル
4.4 グラフ信号のサンプリング手法
 4.4.1 頂点領域でのサンプリング
 4.4.2 グラフ周波数領域でのサンプリング
 4.4.3 シフト不変空間との違い
4.5 グラフ信号のサンプリングと復元の例
4.6 サンプリング頂点選択手法
 4.6.1 決定性サンプリングと乱択サンプリング
 4.6.2 決定性サンプリングによる頂点選択
 4.6.3 乱択サンプリングによる頂点選択
 4.6.4 計算量
4.7 応用
 4.7.1 センサ配置
 4.7.2 能動的半教師あり学習
 4.7.3 3次元点群のサブサンプリング
章末問題

5.局所性と不確定性
5.1 グラフ信号の不確定性(1):エネルギーの広がり
 5.1.1 通常の信号処理におけるエネルギーの広がり
 5.1.2 グラフ信号処理におけるエネルギーの広がり
 5.1.3 実現可能領域
5.2 グラフ信号の不確定性(2):スパース性
 5.2.1 頂点部分集合の信号エネルギー
 5.2.2 グラフ周波数部分集合の信号エネルギー
5.3 グラフ信号のシフトと変調
 5.3.1 シフト
 5.3.2 変調
章末問題

6.グラフウェーブレット・フィルタバンク
6.1 グラフフィルタバンクの構成
 6.1.1 分析側変換
 6.1.2 合成側変換
6.2 望まれる特性
6.3 特徴による分類
 6.3.1 フィルタの設計領域
 6.3.2 サンプリング率
 6.3.3 対称性
6.4 頂点領域でのフィルタ設計
 6.4.1 リフティング
 6.4.2 非間引き型変換
 6.4.3 間引き型変換
6.5 グラフ周波数領域でのフィルタ設計
 6.5.1 非間引き型グラフフィルタバンク
 6.5.2 頂点領域サンプリングを用いた最大間引き型グラフフィルタバンク
 6.5.3 グラフ周波数領域サンプリングを利用したグラフフィルタバンク
6.6 応用
 6.6.1 グラフ信号のノイズ除去
 6.6.2 グラフ信号の圧縮
章末問題

7.多スケール分解
7.1 グラフ信号の多スケール分解
7.2 グラフの縮小
 7.2.1 頂点数の削減
 7.2.2 スペクトルクラスタリング
 7.2.3 頂点の再接続
 7.2.4 Kron縮小
 7.2.5 頂点領域とグラフ周波数領域でのサンプリングの関係
7.3 グラフラプラシアンピラミッド
 7.3.1 ラプラシアンピラミッド
 7.3.2 グラフラプラシアンピラミッドの構成
7.4 グラフの拡大とグラフ信号のオーバーサンプリング
 7.4.1 3彩色グラフの拡大
 7.4.2 K彩色グラフの拡大
7.5 応用
章末問題

8.グラフの推定と学習
8.1 グラフ推定
 8.1.1 K近傍法
 8.1.2 ϵ近傍法
8.2 統計的モデルを利用したグラフ推定
 8.2.1 相関係数
 8.2.2 ガウスマルコフ確率場
8.3 グラフ信号の生成モデルを利用したグラフ学習
 8.3.1 グラフ周波数領域の生成モデル
 8.3.2 頂点領域の生成モデル
8.4 有向グラフの学習
 8.4.1 スパースベクトル自己回帰モデル
 8.4.2 構造方程式モデル
8.5 時変グラフ学習
8.6 応用
章末問題

付録
A.1 グラフ信号処理に役立つツールボックス
A.2 レイリー商
引用・参考文献
章末問題解答
索引

読者モニターレビュー【 いかり 様(専門分野:心理統計学)】

読み進める上で不可欠となる知識は初等的なフーリエ解析や線形代数の知識である。それに加え、信号処理や統計的推定論についての知識があれば、より深い理解に繋がる。グラフ信号の基礎をなすグラフ理論については1章で必要な知識が用意されており、特段前提とはされていない。

副題には、「フーリエ変換・フィルタリング・学習」とあるように、グラフ信号処理の基礎を理解し応用する上で必要な知識が学習まで一気通貫に解説されている点は大きな特長である。7章まではグラフが既知の場面を想定して解説されていて、応用場面のようにグラフが未知の場合について推定方法を与えるのが8章である。本書を通じて応用までの一連の流れを把握することができる。

通読を挫折しないような工夫が施されているのも特長である。やや抽象的な定義が登場した後には、具体的な数値を用いた例が挙げられることが多く、読み進める上での配慮が行き届いている。また、数学的に複雑な箇所は深入りするのを避け、全体像を把握することを優先している。本全体を通し、その意味でバランスがよいと感じた。

そもそもグラフ信号処理の需要がなぜ高まっているのか、どういう応用が可能なのかという点にも記述が行き届いていて、読んでいて楽しい本であった。グラフ信号やグラフデータに関心のある全ての方におすすめしたい。

読者モニターレビュー【 N/M 様 (ご専門:総合情報学(情報科学) )】

本書は,次世代信号情報処理シリーズ(全17巻)の5巻目に位置する書籍である.本巻では「グラフ信号処理」の分野についての記述がなされている.なお,本書はグラフ理論と信号処理を合わせた「グラフ信号処理」の分野の和書としては初の書籍である.初の和書という触れ込みの専門書を私自身読んだのが,本書で二冊目である(因みに,一冊目は学生時代に「ブレンディッドラーニング(eラーニングなどの教育工学の分野で,情報分野の応用として学んだ)」に関する(翻訳書を除いた)初の和書だったと記憶している).

本書の一つの特徴として,書籍のタイトルにも含まれているように「基礎と応用」と書かれている通り,基礎を固めたい読者にも,さらに応用を固めたい読者にも応じられるように,応用部分に関しても節を分けてあるので,取捨選択して読むことができるようになっている点である.さらに関連知識を深めたい読者にも応じられるように,引用・参考文献リストも洋書や各種論文が166編も取り上げられている点も魅力的であり,それだけ本書の内容が一次資料を基にした記述であることも感じ取ることができるであろう.

第1章では,本書の主テーマである「グラフ信号処理」を学ぶ前に「グラフ理論」とは何かという定義から始まり,身近なグラフの例,いろいろなグラフ,グラフの作用素として各種行列などの解説がなされている.

第2章〜第6章では,ディジタル信号,グラフ信号の各種信号処理の話から始まり,フーリエ変換・フィルタリング・サンプリングなどと徐々に本書籍の主テーマである「グラフ信号処理」へ導かれていくような構成になっている.

第7章〜第8章では,「グラフ信号処理」の応用・発展的な内容として,多スケール分解やグラフの推定と学習という少し難易度が高いテーマも扱っており,それらについての解説がなされている.推薦システムの分野で少し挙げるなら,「8.1.1
K近傍法」は,私が以前レビュさせていただいた『基礎から学ぶ推薦システム- 情報技術で嗜好を予測する -』(Ref:https://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339029284/)においても重要な概念の一つであり,いろいろな分野で扱われていることが理解できるだろう.

最後に,各章末には章末問題がついており,各章で学んだ知識をチェックできるようになっている.この章末問題の難易度がちょうどよく,理解を深める上で最適だと感じた.少なすぎず,多すぎずの最適な分量ではないだろうか.

読者モニターレビュー【 アマサイ 様(専門分野:電子工学)】

グラフ信号処理技術は、SNSやセンサーネットワークからの信号を効率的に分析するため技術である。第1章は、グラフ理論を知る上、必要最低限の用語を説明している。第2章は、グラフ信号とグラフフーリエ変換について説明している。高速フーリエ変換についての知識があれば、ここまでは容易に理解できるはずだ。著者は次に、第3章でフィルタリング、第4章でサンプリングをいくつもの図で解説してくれている。理工系出身者であれば、ウェーブレット、フィルタ設計など、よくなじんだ用語が出てくる。それに、「グラフ」がついただけ、とは言い過ぎかもしれないが、どこかで見た定義が多い。これは筆者のペンが雄弁なだけで、もしかしたら、グラフ信号処理技術はもっと難解なのかもしれない。そういう読者にとっては、160もの引用・参考文献一覧はありがたい。グラフ信号処理技術はまだ新しい技術である。本書によって基本をマスターし、著者とともに、グラフ信号処理技術の大海に向かおうではありませんか。

読者モニターレビュー【 ヤマダ 様(専門分野:IT)】

本書はグラフ信号処理に関する基礎と応用を解説した和書であり、専門の学部生が理解できるよう丁寧に解説されているのが特徴である。
また少ないながらも各章には解答付きの章末問題が付されており、都度内容の理解の手助けをしてくれるため、この分野における一通りの知識が身につく設計となっている。

本書でのグラフ信号処理とは、信号の定義域をネットワーク(グラフ)の頂点上に持つ信号(グラフ信号)を解析するための信号処理技術の一群を指すが、
まず第一章でグラフに関する定義、説明を行い、第二章において基盤となるグラフフーリエ変換を数式とともに解説、第三章から五章において、
フィルタリングやサンプリングといったグラフ信号処理の基盤技術を説明したのち、以降の章で発展的な技術について解説を行っている。
参考文献リストが豊富なのも本書の特徴の一つであり、更に理解を深めたい読者はそちらをあたると良いと思われる。

読者モニターレビュー【 つじもん 様(専門分野:無線通信 信号処理)】

本書「グラフ信号処理の基礎と応用」は、グラフ信号処理の基礎から応用まで学べる日本語で書かれた書籍である。最近、筆者の専門分野である無線通信システムの研究開発領域でも、グラフ信号処理を扱う例を見かけるようになっている。そのため、個人的に本書のように基礎からグラフ信号処理について学べる書籍を待望していた。

本書では、1章でグラフの定義を行い、2章から6章でグラフ信号処理の基礎としてグラフフーリエ変換、フィルタリング、サンプリング、グラフウェーブレット等についての説明がなされ、そして、7章、8章で発展的内容として多スケール分解やグラフの推定と学習に触れられている。

本書では、グラフ信号処理に関する奥深い内容が本書を読むだけでグラフ信号処理について一通り学ぶことができるように構成されている。豊富な参考文献が引用されているため、詳しく知りたい場合はそちらを参照することができるようになっている。また、本書では一般的な信号処理と対比する形で書かれており、信号処理が身についている読者であればより理解が深まると推測される。画像処理等の応用例も説明されている章がある点が嬉しい。また、章末問題を解くために手を動かして考えることでグラフ信号処理が手になじむ感じがした。

グラフ信号処理がいろいろな分野に応用されつつあるため、今後、グラフ信号処理をプログラミングしながら身に着けられるような、より実践的な書籍の登場も期待している。

田中 聡久(タナカ トシヒサ)

田中 雄一(タナカ ユウイチ)

掲載日:2023/10/16

情報処理学会誌2023年11月号

掲載日:2023/08/17

「数理科学」2023年9月号

掲載日:2023/05/17

情報処理学会誌「情報処理」2023年6月号広告

掲載日:2023/03/15

電子情報通信学会2023年総合大会プログラム広告

掲載日:2023/02/01

「電子情報通信学会誌」2023年2月号

掲載日:2022/12/28

「電子情報通信学会誌」2023年1月号広告

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