廃プラスチックの現在と未来 - 持続可能な社会におけるプラスチック資源循環 -

廃プラスチックの現在と未来 - 持続可能な社会におけるプラスチック資源循環 -

廃プラスチック問題を理解するために,資源循環社会,法制度,技術などの観点からまとめた

ジャンル
発行年月日
2023/01/27
判型
A5
ページ数
334ページ
ISBN
978-4-339-06664-7
廃プラスチックの現在と未来 - 持続可能な社会におけるプラスチック資源循環 -
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定価

5,610(本体5,100円+税)

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 プラスチックは透明性や耐水性が高く,軽量で様々な形に加工でき,丈夫で腐食しないといった優れた特性を持つ素材であるため,様々な分野で使用され,私たちの生活に不可欠なものとなっている。一方で,耐久性・分離困難性があるにも関わらず,種類によっては安価であるため,短期間で使い捨てられ,大量の廃棄物となり多くの環境問題を引き起こしてきた。さらに,海洋プラスチックごみ問題がグローバルな環境問題として注目されており,これを受け,プラスチック資源循環問題に拡大するとともに日本の政策重点がシフトしている。
 本書は,近年世界的に注目される廃プラスチック問題について,国内外で具体的にどのような問題が生じているのか,またそれらに対してどのような取り組みがなされているのかを,資源循環社会,法制度,技術的対応といった観点からまとめ,科学的な根拠とともに紹介する。
 本書が廃プラスチック問題の現状を正しく理解し,将来にわたり私たちがプラスチックを賢く利用していくための一助となれば幸いである。

【読者対象】
廃プラスチック問題に関わる研究者・技術者,NPO等市民団体や行政の担当者

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

19世紀に発明されたプラスチックは自然界には存在せず,透明性や耐水性が高く,軽量でさまざまな形に加工でき,丈夫で腐食しないなど優れた特性を持つ素材である。おもに,原油などの化石資源から新しく合成され,種類によっては安価なため,耐久性・分離困難性があるにもかかわらず,短期間で使い捨てられ,大量の廃棄物となる。環境中にそのまま投棄され,あるいは焼却されることで二酸化炭素や他の有害物質が環境中に排出され,多くの環境問題を引き起こしてきた。

近年,世界的に廃プラスチック問題が注目されており,今後私たちは,プラスチックの過剰な使用を抑制し,賢く利用していく必要がある。そのためには廃プラスチック問題を正しく理解する必要がある。

2020年の日本の廃プラスチックは約822万tで,前年に比べ22万t減った。その処理方法としては,マテリアルリサイクル21%,ケミカルリサイクル3%,エネルギー回収(サーマルリサイクル)62%で,三つを合わせると86%と高いリサイクル率である。エネルギー回収の比率が高いのが日本の特徴である(ただし,中にはエネルギー回収率が約10%と低いものもある)。

また,日本の廃棄物処理の体制は大変優れており,埋立ての比率が8%と欧米に比べはるかに少ない。これは日本が世界に誇れるところである。一方,日本の課題としては,マテリアルリサイクルのうちの7割が海外への輸出で,国内での処理は3割に過ぎないことである。しかも中国が2017年12月に輸入禁止したことから,その分の廃プラスチックを国内で処理する必要にも迫られている。また,国内でマテリアルリサイクルされる廃プラスチックのほとんどがPETボトルであり(推定49万t),包装フィルム用3P(ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン),PVC(ポリ塩化ビニル)のリサイクルは合わせても推定25万t程度と少ない。

このように,現状では日本はエネルギー回収の比率が高いが,EUではエネルギー回収はマテリアルリサイクルよりも価値の低いものと見ており,マテリアルリサイクルを中心とした循環経済への移行を加速する戦略を進めている。しかしながら,海洋プラスチックごみ問題がグローバルな環境問題として注目されていることから,日本でもこれをプラスチック資源循環問題として受け止め,循環経済へと政策重点がシフトされつつある。SDGs(持続可能な開発目標)の課題で言えば,SDG14の海洋環境の保全からSDG12の資源の有効利用(資源循環)へと重点が移行している。

本書では,廃プラスチックによって具体的にどのような問題が生じているのか,またそれらに対してどのような取組みがなされているのかを資源循環社会,法制度,技術的対応などの観点からまとめ,科学的な根拠とともに紹介をする。なお,本書は日本エネルギー学会編として,リサイクル部会を中心に編集委員会を組織し,学会創立100周年記念事業の一環として出版すべく,準備が進められてきたものである。

本書が廃プラスチック問題,環境問題に関わる研究者・技術者,NPO等市民団体,行政担当者など幅広い方々の一助となれば幸いである。

2022年12月
「廃プラスチックの現在と未来」編集委員長(リサイクル部会長)行本 正雄

1.廃プラスチックに関わる諸問題
1.1 循環経済論から見たプラスチック問題
 1.1.1 はじめに
 1.1.2 循環経済とは何か
 1.1.3 生産物連鎖制御
 1.1.4 プラスチック資源利用の問題
 1.1.5 プラスチック資源循環促進法の成立
 1.1.6 プラスチック資源の高度な循環利用におけるソフトローの役割
 1.1.7 ダイナミックな生産物連鎖制御に向けて
1.2 3Rプラスとライフサイクルから見たプラスチック素材
 1.2.1 プラスチック素材の定義と環境持続性の考え方
 1.2.2 廃棄物対策や資源持続性の観点から考える3Rプラス原則
 1.2.3 プラスチック素材のライフサイクルから見た抑制の重要性
 1.2.4 さまざまな環境負荷抑制と両立するプラスチック素材循環
1.3 プラスチック資源循環と脱炭素社会
 1.3.1 気候変動と脱炭素社会
 1.3.2 化石資源の利用と温室効果ガスの排出
 1.3.3 プラスチックのライフサイクルと炭素排出
 1.3.4 廃棄物分野からのCO2排出とプラスチック
 1.3.5 バイオマス原燃料への転換と脱炭素社会
 1.3.6 廃プラスチックとCCS,CCU
 1.3.7 脱炭素社会におけるプラスチック中の炭素の将来展望
1.4 海洋プラスチック問題の現状
 1.4.1 はじめに
 1.4.2 海洋プラスチックごみの発生
 1.4.3 海洋プラスチックごみの現状
 1.4.4 おわりに
引用・参考文献

2.プラスチックのマテリアルフロー
2.1 諸外国におけるマテリアルフロー
 2.1.1 世界全体のプラスチックのマテリアルフロー
 2.1.2 欧州委員会によるプラスチックのマテリアルフロー
 2.1.3 欧州の業界団体によるプラスチックのマテリアルフロー
 2.1.4 米国環境保護庁によるプラスチックのマテリアルフロー
 2.1.5 諸外国におけるプラスチックのマテリアルフローの研究事例
2.2 日本におけるマテリアルフロー
 2.2.1 はじめに
 2.2.2 プラスチックのリサイクルについて
 2.2.3 プラスチックの生産から処理処分の状況
 2.2.4 LCAとLCA手法を使った分析例
 2.2.5 おわりに
引用・参考文献

3.廃プラスチックに関わる国内外の動向
3.1 国際的な動向
 3.1.1 アジアを中心とした法規制の動き
 3.1.2 中国の輸入禁止
 3.1.3 欧州の法制度
3.2 日本の法制度
 3.2.1 容器包装リサイクル法
 3.2.2 家電リサイクル法
3.3 日本の取組み
 3.3.1 リデュース・リユースの取組み
 3.3.2 リサイクルの取組み
引用・参考文献

4.廃プラスチックのリサイクル技術
4.1 マテリアルリサイクルへの取組み
 4.1.1 マテリアルリサイクルとは
 4.1.2 選別技術(ソーティングセンター)
 4.1.3 プラスチック容器の再商品化
4.2 ケミカルリサイクルの現状
 4.2.1 油化プロセス(HiCOPプロセス)
 4.2.2 高炉還元材化
 4.2.3 コークス炉化学原料化
 4.2.4 ガス化
4.3 エネルギー回収の現状
 4.3.1 廃プラスチックのエネルギー利用
 4.3.2 廃棄物エネルギー利用の高度化と展望
4.4 難処理プラスチックの資源化
 4.4.1 炭素繊維強化プラスチックからの炭素繊維の回収
 4.4.2 湿式脱ハロゲン処理とその研究展開
引用・参考文献

5.次世代プラスチックの開発動向
5.1 バイオマスプラスチックの普及動向
 5.1.1 はじめに
 5.1.2 バイオマスプラスチック概説
 5.1.3 バイオエラストマー
 5.1.4 植物油脂ポリマー
 5.1.5 おわりに
5.2 生分解性プラスチックの開発
 5.2.1 はじめに
 5.2.2 生分解性プラスチックとは
 5.2.3 生分解性評価
 5.2.4 土中生分解性とコンポスト生分解性
 5.2.5 環境生分解性(BOD生分解性試験)
 5.2.6 酵素分解性
 5.2.7 生分解性プラスチックの課題と今後求められること
 5.2.8 おわりに
引用・参考文献

6.プラスチックリサイクルとLCA
6.1 LCAの意義と経緯・動向
 6.1.1 ライフサイクル思考(ゆりかごから墓場まで)の重要性
 6.1.2 LCAの国際標準規格
 6.1.3 LCAの普及
 6.1.4 近年の動向
6.2 LCAによるリサイクルの評価方法
 6.2.1 LCAの一般的方法
 6.2.2 LCAにおける比較の考え方
 6.2.3 リサイクルのLCAの一般的方法
 6.2.4 リサイクルの評価の問題点
 6.2.5 幸せ同等の原則によるプラスチックリサイクルのLCA
6.3 プラスチックリサイクルの評価事例
 6.3.1 評価事例①:PETボトルのリサイクル
 6.3.2 評価事例②:プラスチック製容器包装のリサイクル
 6.3.3 評価事例から得られる示唆
引用・参考文献

7.わが国のプラスチックリサイクルの将来展望
7.1 はじめに
7.2 国際的な技術開発動向
7.3 日本の技術開発動向
7.4 バイオプラスチック
 7.4.1 バイオマスプラスチックの種類
 7.4.2 バイオプラスチックの生産量
 7.4.3 バイオプラスチックの技術開発動向
7.5 炭素循環としてのケミカルリサイクルの位置づけ
7.6 まとめ
引用・参考文献

あとがき
索引

粟生木 千佳(アオキ チカ)

浅川 薫(アサカワ カオル)

浅沼 稔(アサヌマ ミノル)

石井 純(イシイ ジュン)

磯辺 篤彦(イソベ アツヒコ)

稲葉 敦(イナバ アツシ)

岩田 忠久(イワタ タダヒサ)

宇山 浩(ウヤマ ヒロシ)

大和田 秀二(オオワダ シュウジ)

尾場瀬 崇裕(オバセ タカヒロ)

加茂 徹(カモ トオル)

熊谷 将吾(クマガイ ショウゴ)

小島 道一(コジマ ミチカズ)

齋藤 優子(サイトウ ユウコ)

酒井 伸一(サカイ シンイチ)

徐 于懿(シュウ ユイ)

谷島 篤(タニシマ アツシ)

冨田 斉(トミタ ヒトシ)

中谷 隼(ナカタニ ジュン)

西 哲生(ニシ テツオ)

野村 誠治(ノムラ セイジ)

藤井 実(フジイ ミノル)

藤元 薫(フジモト カオル)

細田 衛士(ホソダ エイジ)

松枝 恵治(マツエダ ケイジ)

森口 祐一(モリグチ ユウイチ)

八尾 滋(ヤオ シゲル)

吉岡 敏明(ヨシオカ トシアキ)

吉田 綾(ヨシダ アヤ)

廃棄物資源循環学会誌 Vol.34 No.4 2023 掲載日:2023/09/05

「環境新聞」環境図書館(2023年4月19日) 掲載日:2023/04/19

「読売新聞」夕刊READ&LEAD(2023年1月17日) 掲載日:2023/01/17

掲載日:2024/03/19

『現代化学』2024年4月号

掲載日:2024/03/18

月刊『化学』2024年4月号

掲載日:2023/11/02

化学工学会誌「化学工学」2023年11月号

掲載日:2023/09/19

大阪公立大学大学院工学研究科国際シンポジウム 協賛広告

掲載日:2023/03/10

第64回フラーレン・ナノチューブ・グラフェン総合シンポジウム講演要旨集広告

掲載日:2023/03/01

函館新聞広告掲載(2023年3月1日)

掲載日:2023/02/28

「月刊 プラスチックス」2023年3月号

掲載日:2023/02/08

日本経済新聞広告掲載(2023年2月8日)

掲載日:2023/01/30

日刊工業新聞広告掲載(2023年1月31日)

掲載日:2023/01/19

読売新聞広告掲載(2023年1月19日)

「廃プラスチックの現在と未来」編集委員会


委 員 長  行本 正雄(中部大学)

副委員長  加茂  徹(早稲田大学)

監  事  岩崎 敏彦(元 JFE エンジニアリング株式会社)

      中谷  隼(東京大学)

委  員  熊谷 将吾(東北大学)

      田崎 智宏(国立研究開発法人国立環境研究所)

      谷  春樹(環境エネルギー株式会社)

      椿 俊太郎(九州大学)

      冨田  斉(一般社団法人 プラスチック循環利用協会)

      秦 三和子(株式会社エックス都市研究所)

      伏見 千尋(東京農工大学)

      増田 孝弘(株式会社タクマ)

      八尾  滋(福岡大学)

      吉岡 敏明(東北大学)
(50 音順)(所属は2022年12月現在)