待ち行列理論

待ち行列理論

本書は,待ち行列理論の基礎的事柄を丁寧に論じ,応用への導入的解説も行った。また,半期の講義を意識した構成となっている。特徴は,標本過程に対する直感的な議論から解説した点と,フリーな数値計算ツールを利用した点である。

ジャンル
発行年月日
2003/05/12
判型
A5
ページ数
152ページ
ISBN
978-4-339-06073-7
待ち行列理論
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定価

1,980(本体1,800円+税)

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本書は,待ち行列理論の基礎的事柄を丁寧に論じ,応用への導入的解説も行った。また,半期の講義を意識した構成となっている。特徴は,標本過程に対する直感的な議論から解説した点と,フリーな数値計算ツールを利用した点である。

本書は,待ち行列理論の基礎的事柄について,丁寧に解説したものである。理工系の学部生(2年生から)を対象とし,線形代数と微積分の初歩的知識のみを前提とした。著者は,待ち行列理論,トラヒック理論の講義をこの10年来行ってきた。この教科書はその経験に基づいて,半期の講義用テキス卜(90分の講義12~14同分の分量)としてデザインした。内容は,待ち行列理論の基礎を丁寧に論じることに重点をおき,応用への導入的解説も行った。基礎的な事項の理解を重視して本書を著したので一つの定理について何種類もの証明が述べられていることがある。これにより,重要な定理や概念をさまざまな角度から掘り下げて理解を深めることができる。

さて,本書の特徴であるが,待ち行列の理論をできるだけ,標本過程に対する直感的な議論から解説した点である。最近の欧米や日本の優れた研究成果にこのような方向性の根拠がある。標本過程は実際に起こる現象の一つの見本であり,それから待ち行列を性格づけるならば,公式や定理の本質を直感的に理解できるからある。

もう一つの本書の特徴は,フリーな数値計算ツールの利用である。現在では,高度な数値計算インタプリタを無料でダウンロードして利用できる。このようなツールを大学の教育研究に積極的に利用しようというのが著者の願いであるが,本書でも,Scilabと呼ばれるMATLABクローンの数値計算ツールを利用している。このような数値計算ツールを利用すると,従来の待ち行列理論で必携であった図去を用いることなく,必要な量を簡単に計算することができる。そのために,待ち行列理論で必要となる諸量の計算アルゴリズムに関する議論も少なからず展開されている。

本書による半期(90分で12~14回)の講義を考えると,1回に10ページ前後の内容を説明する(理解する)ことが必要になる。本書では,基礎的な事項を丁寧に説明してあるのでこの中からさらに基本的な事項を抜き出して講義し,残りは本書に任せるというような使い方ができるものと思われる。特に,基礎的な講座の場合,1章を1回で講義し,2章から7章までの6章分を2同ずつ講義すると13回の講義となる。残りを,トピックスとして学生に読んでもらうことにすれば,本書1冊を,教科書(1章から7章)と副読本(8章から10章)として使うこともできる。

以上のような利用法により,本書が待ち行列理論の講義展開に役に立つことがあれば著者の望外の幸せである。

なお,本書を著すにあたって,内外の多くの文献のお世話になっている。巻末に参考文献を掲げて,それらの著者に深く謝意を表する。

また,出版に当たり,いろいろお世話いただいた,コロナ社の各位に感謝する。

最後に,本書を父に捧げる。

2003年3月

旧花畑の上に立つ父母の家にて
大石進一

1.確率
1.1 確率空間
 1.1.1 標本空間
 1.1.2 事象
 1.1.3 確率
 1.1.4 条件付き確率
1.2 確率分布
 1.2.1 確率変数
 1.2.2 確率分布関数
 1.2.3 裾野分野
 1.2.4 期待値
 1.2.5 分散
 1.2.6 条件付き期待値
 1.2.7 独立な確率変数のmaxとminの分布
 演習問題

2.ポアソン過程
2.1 ポアソン過程
 2.1.1 ポアソンの定理
 2.1.2 微分方程式によるポアソン分布の導出
 2.1.3 関数方程式によるポアソン分布の導出
 2.1.4 合流
 2.1.5 分流
2.2 指数分布
 2.2.1 指数分布のマルコフ性
 2.2.2 アーラン分布
 演習問題

3.リトルの公式
3.1 再生過程
 3.1.1 点過程と計数過程
 3.1.2 再生過程
 3.1.3 再生定理
 3.1.4 余命の平均
 3.1.5 再生-報酬定理
3.2 リトルの公式
 3.2.1 リトルの公式とその図的な証明
 3.2.2 H=λG
 3.2.3 H=λGからリトルの公式を導く
 演習問題

4.マルコフ連鎖
4.1 離散時間型マルコフ連鎖
 4.1.1 遷移確率
 4.1.2 マルコフ連鎖のグラフ
 4.1.3 再帰性
4.2 定常分布とその数値計算法
 4.2.1 待ち行列計算のための数値計算ツール
 4.2.2 定常分布の数値計算
4.3 連続時間マルコフ過程
 演習問題

5.待ち行列
5.1 待ち行列システムの定義とケンドールの記法
 5.1.1 待ち行列システムの表し方
 5.1.2 ケンドールの記法
5.2 PASTA
 5.2.1 PASTA
 5.2.2 PASTAの証明
5.3 待ち行列の解析に現れる量
 5.3.1 占有率
 5.3.2 特性測度
 演習問題

6.M/M/S/S
6.1 M/M/S/Sの解析
 6.1.1 過渡状態を記述する方程式
 6.1.2 定常状態の分布
 6.1.3 打ち切られたポアソン分布のグラフ
6.2 アーランB式
 6.2.1 アーランB式のトラヒック特性
 6.2.2 負荷曲線
 6.2.3 利用率
 6.2.4 サービス時間分布に対する不感性
6.3 トラヒック理論への応用
 演習問題

7.M/M/S
7.1 M/M/I
 7.1.1 M/M/Iの平衡分布
 7.1.2 M/M/Iの特性
 7.1.3 平均値解析
 7.1.4 スループットタイムの分布
7.2 M/M/S
 7.2.1 定常状態での解析
 7.2.2 アーランC式
 7.2.3 アーランC式の特性
 7.2.4 アーランの遅延システムの解析
 7.2.5 M/M/S,FCFSの待ち時間分布
 演習問題

8.出生死滅過程
8.1 出生死滅過程の一般的性質
 8.1.1 純粋出生過程
 8.1.2 純粋死滅過程
 8.1.3 出生死滅過程
8.2 出生死滅過程となる待ち行列
 8.2.1 M/M/1/K
 8.2.2 M/M/1/-/K
 8.2.3 M/M/s/s/n
 演習問題

9.ポラチェック-ヒンチンの公式
9.1 M/G/1の平均値解析
9.2 ポラチェック-ヒンチンの公式の導出
 9.2.1 ポラチェック-ヒンチンの公式の導出II
 9.2.2 ポラチェック-ヒンチンの公式の導出III
 演習問題

10.待ち行列ネットワーク
10.1 待ち行列ネットワークの理論へ
 10.1.1 Burkeの定理
 10.1.2 M/M/1の2段直列接続
 10.1.3 二つのM/M/1の並列系
10.2 M/M/1の開ジャクソン網
 10.2.1 ジャクソンの定理
 10.2.2 ジャクソン網の平均的な振舞い
 10.2.3 最適なサービス時間の割当て
 演習問題

参考文献
演習問題の解答
索引