データ駆動制御入門

計測・制御セレクションシリーズ 7

データ駆動制御入門

モデルベースではなく,データを直接用いて制御器を設計・更新・調整するデータ駆動制御

ジャンル
発行年月日
2024/01/10
判型
A5
ページ数
270ページ
ISBN
978-4-339-03387-8
データ駆動制御入門
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定価

4,620(本体4,200円+税)

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モデルベースドアプローチと異なり,データを直接用いて制御器を設計・更新・調整する方法はデータ駆動制御と呼ばれる。モデリングが困難な状況で操業データを有効に使いコストダウンを実現する方法論を整理・体系化した入門書。

近年,データを直接用いて制御器を設計・更新・調整するアプローチが提案され,理論の観点からの研究,応用の観点からの方法論の開発が行われ,実応用の現場でも実用例も出てきている。モデリングが困難な状況で操業データを有効に使い圧倒的なコストダウンを実現するこれらの方法論を整理し,体系化された入門書を備えておくことは,実応用の技術者にとって有益であると考えられる。また,モデルベースドアプローチと異なるデータ駆動制御の方法論を,一つのテーマとして勉強・研究をしている大学院生や研究者向けにも,その最初の足掛かりとしての基礎的事項をまとめておく書物を備えておくことは,学術的にも重要な意義がある。そのようなことから,本書はわが国初のデータ駆動制御の入門書であることを目的としている。

このように,読者として想定するのは,大学や企業などで,研究または開発において,この新しいデータ駆動制御という考え方に取り組もうとする学生,研究者,社会人である。必要最低限なレベルとしては,本書すべてを通読する場合でも,古典制御や現代制御のきわめて初歩の入門的事項を知っていることでよい。加えて,読み方によっては,すべては読まずとも「とりあえず1回の実験で制御器チューニングをしたい」ということであれば,3章や4章だけでよいし,「データ駆動予測だけ知りたい」なら7章だけでもよい,というように,目的に応じて飛ばしながら読んでもよい。例えば,これらのような場合は,必ずしも現代制御は触れたことがなくても読めると考えている。最適化問題については,本書では深くは触れないが,最小二乗法や代表的な非線形最適化の基礎などは付録にまとめておいた。ただ,筆者は最適化の専門家ではなくユーザであるため,アルゴリズムに関するいろいろな工夫,背景の理論は最適化の良書を参考にされたい。

データ駆動制御に関する書物をまとめるという構想は10年くらい前からあったが,このように遅くなった理由は,一つには著者の所属異動など諸事情により進めることができなかった,ということもある。しかしそれ以上に,いろいろな手法や性質などが明らかになり,データ駆動制御の研究自体もこの10年の中で進み,どこまでをまとめてよいか悩み続けていたことが,書籍として実現するということが遅れた大きな理由である。このようなときに,この「計測・制御セレクションシリーズ」の公募を通じて,本シリーズに加えていただけることになり,データ駆動予測といった最近の話題は含めつつも,この分野の入門書となりうるべく思い切って基本的な話題に限定することにした。

最後に,筆者の恩師である大阪大学名誉教授藤井隆雄先生,および元福井大学川谷亮治先生には,研究に関わるさまざまな面でご指導・ご鞭撻をいただいた。心より感謝の意を表す。また,本書の核は,筆者が大阪大学基礎工学研究科藤井研究室に助手として在籍していた当時の学生たちと0から着手し始めたFRITに関する研究がきっかけである。指導学生であった相馬将太郎君,吉田恭子さん,宮地誠君をはじめとして,金沢大学における和田垣祐介君,澤川史明君,Hien Thie Nguyenさん,北﨑良彦君,そして,電気通信大学における髙橋英輔さん(社会人博士課程学生,ブラザー工業株式会社),中村岳男君,池崎太一君,廣岡優樹君,畝木唯さんと行ってきた研究は,本書の内容に関わる成果となっている。共同研究者として感謝の意を表す。さらに,本書をまとめるにあたり必要となったいくつかの実験やシミュレーションは電気通信大学金子研究室の池澤美紅さん,山本龍聖君に協力いただいた。ここに感謝の意を表す。そして,本書の企画では,東京工業大学の石崎孝幸先生をはじめとした計測自動制御学会の会誌出版委員会の方々,コロナ社に厚く御礼申し上げる。

2023年11月
著者

1. データ駆動制御とは
1.1 入口としての例題
1.2 なぜデータを直接用いる制御が必要か
1.3 データ駆動制御の立ち場
 1.3.1 データから直接制御器をつくる
 1.3.2 データから直接制御器を更新する
1.4 古くからあるデータ駆動制御とそれらの問題点
1.5 本書を通じて考える問題
 1.5.1 目標応答への追従問題
 1.5.2 目標応答を完全に実現する理想の制御器
 1.5.3 安定性について
1.6 本書の構成とガイド
 1.6.1 各章の概要
 1.6.2 本書の読み方のガイド
1.7 本書を通じて注意すべき点
 1.7.1 連続時間表記と離散時間表記について
 1.7.2 表記について

2. Iterative Feedback Tuning(IFT)
2.1 IFTの基本的な考え方
 2.1.1 データを直接用いた素直な最適化
 2.1.2 入力のペナルティ
 2.1.3 制御器のパラメータ微分
2.2 実験によるIFTの検証

3. Fictitious Reference Iterative Tuning(FRIT)
3.1 FRITの概要
3.2 FRITの基本的な考え方
 3.2.1 擬似参照信号の意味と役割
 3.2.2 J_F(ρ)の最小化の直感的な説明
 3.2.3 J_F(ρ)の最小化の意義
3.3 FRITにおける非線形最適化計算
3.4 FRITの適用例
3.5 いくつかの注意
 3.5.1 制御器の逆システム
 3.5.2 雑音の影響
 3.5.3 入力項のペナルティ
3.6 さまざまな立場からのFRITの解釈
 3.6.1 制御器の立場からの評価関数J_F(ρ)の解釈
 3.6.2 モデリングの立場からの評価関数J_F(ρ)の解釈

4. Virtual Reference Feedback Tuning(VRFT)
4.1 VRFTの概要
4.2 VRFTの基本的な考え方
 4.2.1 仮想参照信号の意味と役割
 4.2.2 J_V(ρ)の最小化の直感的な説明
 4.2.3 J_V(ρ)の最小化の意義
4.3 VRFTにおける最小二乗法
4.4 VRFTにおける最適性を保証するためのプレフィルタ
4.5 FRITへの最小二乗法アプローチとプレフィルタ
 4.5.1 最小二乗法によるFRIT
 4.5.2 FRITにおける最適性を保証するためのプレフィルタ
 4.5.3 PI制御器へのFRITの最小二乗法アプローチ
4.6 FRITとVRFTの比較
 4.6.1 完全な目標応答追従が実現される場合
 4.6.2 ループ特性の比較
 4.6.3 プレフィルタの比較

5. さまざまな制御系に対するデータ駆動制御
5.1 FRITとVRFTの拡張の基本的な考え方
5.2 比例微分先行型PID制御に対するFRIT
5.3 カスケード制御に対するFRIT
5.4 内部モデル制御(IMC)に対するFRITとその応用
 5.4.1 IMCに対するFRITの適用
 5.4.2 IMCにおけるモデルと制御の同時更新
 5.4.3 スミス補償器におけるモデルと制御器の同時更新
 5.4.4 非最小位相系への拡張-最小位相部と非最小位相部の直列結合表現
 5.4.5 非最小位相系への拡張-安定な伝達関数の比の表現
5.5 二自由度制御系に対するFRIT
 5.5.1 基本的な考え方
 5.5.2 非最小位相系・むだ時間系への拡張
5.6 FRITとVRFTを併用した二自由度制御器の更新

6. 現代制御におけるデータ駆動制御
6.1 状態フィードバックによるレギュレーション問題
 6.1.1 考える問題
 6.1.2 基本的な考え方
 6.1.3 評価関数の意味
 6.1.4 最小二乗法による求解
6.2 状態フィードバックによる積分型サーボ系
 6.2.1 積分型サーボ系の構成
 6.2.2 考える問題
 6.2.3 制御器周りの擬似参照信号を構成するアプローチ
 6.2.4 最小二乗法による計算
6.3 オブザーバを併合した積分型サーボ系
 6.3.1 考える問題
 6.3.2 FRITによるアプローチ
 6.3.3 FRITによるオブザーバに内包されたモデルの改善

7. データ駆動予測とその応用
7.1 データ駆動予測
 7.1.1 なぜデータ駆動予測が必要か
 7.1.2 考える問題
7.2 FRITを用いたデータ駆動予測
7.3 状態フィードバック制御系に対するデータ駆動予測
7.4 データ駆動予測による目標応答更新
 7.4.1 考える問題
 7.4.2 データ駆動制御とデータ駆動予測による入力予測
 7.4.3 入力制約を考慮した目標応答の更新
7.5 データ駆動予測による一回の実験データのみで可能なIFT

8. Estimated Response Iterative Tuning(ERIT)
8.1 二自由度制御系のデータ駆動予測
8.2 ERITの考え方
 8.2.1 予測応答と目標応答の差の最小化
 8.2.2 ERITの評価関数の考察
 8.2.3 ERITと二自由度制御系に対するFRITとの比較
 8.2.4 いくつかの拡張
8.3 目標応答更新を伴うERIT

付録
A.1 本書で必要とする数学的基礎
A.2 本書中に出てきた証明,およびいくつかの補足
引用・参考文献
索引

読者モニターレビュー【 めっくろぐ 様(業界・専門分野:自動車メーカー、制御工学 )】

データと制御の融合を図る動きは,近年になってニーズが高まっている印象がある.しかし,その基礎を学ぶ教材はこれまでは見当たらず,参入者は論文などから手探りでしかヒントを得られなかった.私も初学者の部類で,論文を見比べてみたことはあるが,この分野の動向に関して前提知識がないために,自分の分野にとって有用な情報を見つけ出すことが難しかった.本書があれば,最先端をキャッチアップするための土俵に立つことができる.例えば4章以降に登場するFRITとVRFTの比較などは,理解を深める切り口として重要だと感じた.制御工学の基礎知識がある人であれば入っていける内容になっていると思うので,本書を読み終えたうえで,自身のテーマの具体的な課題解決を検討してみたいところである.

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日刊工業新聞広告掲載(2023年12月22日)

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