すぐわかる 応用計画数学

すぐわかる 応用計画数学

数理計画手法,経済分析手法とプロジェクト評価手法,実務社会としての交通システム・道路工学・都市計画などに共通な解析技術を解説

ジャンル
発行年月日
2018/01/18
判型
A5
ページ数
200ページ
ISBN
978-4-339-02879-9
すぐわかる 応用計画数学
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定価

2,860(本体2,600円+税)

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本書では,社会システム計画に関する数理計画手法(応用数理計画・ゲーム理論),社会システム評価に関する経済分析手法とプロジェクト評価手法,実務社会としての交通システム・道路工学・都市計画などに共通な解析技術を解説した。

大学教育課程は,学部・学科に対応した特定専門分野の知識を学習するところであり,教科書には特定分野の高度な知識が記載されるというプロトタイプは,高度情報化・多様化した社会システムを考えるうえで有益であろうか。むしろ,現代社会のシステムは複雑であり,特定分野の知識だけで問題を解決できることは稀なのではないかと考えている。

そもそも,私たちは,他分野の学習をしたからといって,研究分野が異なるので,やめたほうがよいと咎められるようなことはないはずである。むしろ,社会システムをいくつもの分野の知識からとらえることができる能力を学ぶことは,応用的価値を向上させることにつながるのではないかと考える。

これまで,特定の研究分野に限定せず,計画数学の基礎知識をわかりやすく整理した『すぐわかる計画数学』(コロナ社,1998年)が出版され,社会システムの計画における数理的解析の理解に大きな役割を果たしてきた。

上記の書籍の共編著者である故 上田孝行先生(元・東京大学教授)は,土木計画学と経済学を統合した土木経済学を計画の基礎科目として構成することを提唱されていた。すなわち,数理的モデルの基礎を踏まえて,経済分析の技術論を社会システムに応用しようとする試みであると思う。

研究分野が異なると,同じ内容でも用語も相違することがある。例えば,社会システムにおける意思決定者は,プレーヤーとも消費者ともいわれる。分析の出発点の用語が相違すると,異なる理論体系のように思われる。しかしながら,経済分析モデルの意思決定と,数理計画モデルの意思決定は形式は異なるが,同一の行動帰結を与えている場合がある。すなわち,社会システムの問題には,数理的解釈と経済学的解釈が同時に存在している場合が多数見られる。この計画問題における多面的な理解は基礎技術の応用力を与えるものである。

本書では,計画数学の基本的知識を社会システム計画に応用するための方法を整理している。このため,応用的な数理計画として組合せ最適化問題と社会的意思決定のためのゲーム理論について講義する。つぎに,社会システムの解析に関して,基礎的な経済理論を学習する。さらに,計画プロジェクトの評価では応用的な経済分析手法を学習する。また応用的な意味から,現実の社会システムとして都市交通システムの解析方法について学習する。したがって,本書は,社会システム計画の応用的解析技術と現実的な問題解決法の理解を目的としている。

基礎理論を論述した前書の出版から多数の年月を経て,近年では情報機器の利用が日常的となっている。そのため数理的な教科書について体系的理論を記載するだけでは現実の問題解決には不十分なので,本書では,パソコンを用いて,計算技術を実際に利用するための演習問題を掲載することにした。

本書の内容は,関西大学環境都市工学部の学部講義において,学生諸氏の理解を踏まえたうえで改良を重ねてきたものである。本書が計画分野における応用技術の習得を志す諸氏の理解を高めることを期待している。

本書の企画から出版まで,ご協力をいただいたコロナ社の皆様に感謝の意を表する次第である。

2017年10月 秋山 孝正(編著者)

1. 社会的意思決定とゲーム理論
1.1 組合せ最適化問題
 1.1.1 数理計画問題
 1.1.2 組合せ最適化問題
 1.1.3 列挙法による解法
 1.1.4 分枝限定法による解法
 1.1.5 その他の組合せ最適化問題
1.2 ゲーム理論の基礎知識
 1.2.1 ゲームの定義
 1.2.2 二人ゼロ和ゲーム
 1.2.3 二人ゼロ和ゲームの定式化
 1.2.4 ゲームの均衡(ナッシュ均衡)
 1.2.5 非ゼロ和ゲーム(囚人のジレンマゲーム)
 1.2.6 パレート最適性
1.3 ゲーム理論と数理計画法
 1.3.1 混合戦略のゲーム
 1.3.2 ミニマックス定理
 1.3.3 混合戦略のゲームの解法
 1.3.4 数理計画法による定式化
演習問題

2. 社会システムの経済分析
2.1 経済分析の基本概念
 2.1.1 経済主体と市場
 2.1.2 合理的な行動とは
 2.1.3 経済分析の方法
2.2 消費者行動の理論
 2.2.1 消費者行動と効用
 2.2.2 限界効用
 2.2.3 無差別曲線
 2.2.4 予算制約
 2.2.5 消費者行動の記述
 2.2.6 効用最大化問題
 2.2.7 需要関数と価格弾力性
 2.2.8 支出最小化問題
 2.2.9 需要関数の変化
 2.2.10 消費者行動のまとめ
2.3 生産者の行動
 2.3.1 生産関数
 2.3.2 価格受容者と価格決定者
 2.3.3 利潤最大化
 2.3.4 費用関数
 2.3.5 生産量の決定
 2.3.6 生産物の供給曲線
2.4 社会システムの外部性
 2.4.1 市場の需要曲線と供給曲線
 2.4.2 市場の安定性
 2.4.3 完全競争市場
 2.4.4 公共財と最適供給
 2.4.5 外部不経済
 2.4.6 余剰分析
 2.4.7 外部効果の補正
 2.4.8 コースの定理
 2.4.9 不完全競争の理論
2.5 一般均衡分析
 2.5.1 一般均衡分析の問題
 2.5.2 厚生経済学の基本定理
演習問題

3. プロジェクト評価手法
3.1 プロジェクト評価と費用便益分析
 3.1.1 プロジェクト評価の概要
 3.1.2 プロジェクトの効果
 3.1.3 便益の計測
 3.1.4 総便益の計測
 3.1.5 費用便益分析の評価指標
3.2 財務分析と便益帰着構成表
 3.2.1 財務分析
 3.2.2 便益帰着構成表
3.3 消費者余剰変化と利用者便益
 3.3.1 EV,CVと消費者余剰変化
 3.3.2 消費者余剰変化による利用者便益の計測
3.4 非市場財の便益評価
 3.4.1 旅行費用法
 3.4.2 ヘドニック価格法
 3.4.3 CVM
3.5 社会的厚生関数と意思決定
 3.5.1 帰結主義と非帰結主義
 3.5.2 社会的厚生関数
演習問題

4. 都市交通の経済分析
4.1 交通行動の数理モデル
 4.1.1 離散選択モデルの定式化
 4.1.2 交通行動の観測データ
 4.1.3 モデルパラメータの推定法
 4.1.4 モデルパラメータの推定手順
 4.1.5 モデルパラメータの推定計算例
 4.1.6 パラメータ推定値の検定とモデルの適合度
 4.1.7 非集計モデルに関する重要事項
4.2 鉄道交通の経済分析
 4.2.1 基礎事項の復習
 4.2.2 交通の費用
 4.2.3 交通サービスの費用逓減
 4.2.4 鉄道の運賃
 4.2.5 総括原価主義
 4.2.6 インセンティブ規制
4.3 道路交通の数理モデル
 4.3.1 リンクパフォーマンス関数
 4.3.2 道路ネットワークの記述
 4.3.3 利用者均衡
 4.3.4 数値計算例
 4.3.5 利用者均衡条件
 4.3.6 等価な数理計画問題
 4.3.7 需要変動型の利用者均衡
 4.3.8 数値計算例(需要変動型利用者均衡)
4.4 道路交通の経済分析
 4.4.1 社会的限界費用
 4.4.2 混雑料金の理論
 4.4.3 混雑料金の社会的便益
 4.4.4 需要変動型システム最適配分
 4.4.5 道路網の混雑料金
 4.4.6 混雑料金の設定
演習問題

付録
付録A:ロアの恒等式とマッケンジーの補題(3章)
付録B:Excelソルバーによる解法(演習問題)

引用・参考文献
演習問題略解
索引

秋山 孝正(アキヤマ タカマサ)