音声コミュニケーションと障がい者

音響サイエンスシリーズ 22

音声コミュニケーションと障がい者

音声の知見から,手話や指点字などを横断的に分析し,コミュニケーションの機能を明確化

  • 口絵
ジャンル
発行年月日
2021/07/30
判型
A5
ページ数
242ページ
ISBN
978-4-339-01342-9
音声コミュニケーションと障がい者
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定価

3,740(本体3,400円+税)

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多くの人は、日常生活の中で意識せずに音声によるコミュニケーションを用いている。しかし、音声によることに困難さを持っている人もいる。本書は音声によることが出来ないあるいは困難さをもつ人々の課題からその支援技術までを解説することを目的としている。

本書の特徴の一つに、聴覚言語(音声)と視覚言語(手話)、触覚言語(指点字や触手話)を横断的に扱い、言語の原点である「対話のことば」の共通基盤特性を示している点がある。実時間性と揮発性にもかかわらず精神的負担が軽いことに注目、研究が最も進んでいる音声の知見を手掛かりに、言葉の持つ重要機能を概観する。コミュニケーション障がいの支援としての基本的視点である。

社会的存在であるヒトにとっては、社会とのコミュニケーションが必要不可欠である。そこでは特に道具を要せずに直接対話のできる音声が社会の基盤となっており、圧倒的に情報量も多い。その音声社会とのコミュニケーションが生活の質(QOL)のを確保する上で不可欠となっている。

2021年になっても収束の兆しが見えないCOVIT-19のパンデミックでは3密の防止が求められ、対話の重要性を身に染みて感じていることであろう。我が国は災害が多く、そこには手話や指点字などを用い音声と相互変換する手段や通訳を必要とする障がい者が存在する。例えば、東日本大震災では、聴覚障がい者や高齢者は、音声による津波警報を即時に聞き取ることができず、逃げ遅れ、多くの死者が出ている。避難場所や広報車での情報提供でも、支援サービスの音声によるアナウンスを聞き逃した多数の事例がある。

なお「音声障がい」という一つの障がいは存在しない。発話器官の運動機能や知覚機能、脳神経系などの障がいの結果、音声によるコミュニケーションが困難になる障がい状況の総称である。

第1章では、障がいの定義を紹介し、障がい者の「対話のことば」として求められる特性を示す。

第2章では、音声障がい全般の概要を示し、音声合成および音声認識・理解技術を概観、典型例として構音障がいに対する音声支援技術を取り上げる。

第3章では、脳・神経系など中枢系の障がいに起因する音声および手話の障がい関係の話題を取り上げる。

第4章では、聴覚障がい者が用いる手話とその記述法やDB、手話認識技術や手話CG、音声との相互変換技術、手話の通信・放送技術などを取り上げる。

第5章では、聴覚と視覚に障がいがあり、触覚のみを用いている全盲ろう者を取り上げる。さらに自然に言語を獲得することが困難な先天性全盲ろう児の教育に挑戦した記録を紹介、その分析からは定型発達児の言語獲得プロセスの手掛かりが得られることが期待されることも述べる。

第6章では、障がい当事者や支援者に目を向ける。考慮すべき事項、支援技術や評価法、支援によるQOLの評価法、2次障害、支援者の負担軽減への配慮・訓練、などの問題を取り上げる。

本書では,音声によるコミュニケーションが困難な障がい者の課題と支援を取り上げる。

社会的存在であるヒトにとっては,社会環境とのコミュニケーションが必要不可欠である。そこでは音声が社会の基盤となっており,そこは圧倒的に情報量が多い。その音声社会とのコミュニケーションが生活の質(quality of life,QOL)を確保するうえで不可欠である。

しかし,例えば聴覚機能が低下するなどの障がいがある場合,音声コミュニケーションによる円滑な社会参加は困難になる。

このような障がいには大きく分けて,(1)音声によるコミュニケーションを回復するためのさまざまな支援技術開発で対応できる障がいと,(2)そのような対応では解決が困難で,音声(聴覚言語)に代わる手段として視覚言語の手話や触覚言語の指点字などを用い,その手段と音声を相互変換する手段や通訳を必要とする障がいが存在する。本書が手話や指点字も取り上げる理由である。

さて母語では,対話を行うこと自体はほとんど精神的負担を感じることなく円滑に行うことができる。この精神的負担が軽いという視点は,障がい者支援課題にとって基本的に重要な視点である。精神的負担を軽く実現するコミュニケーション手段は,感覚・知覚・認知機構と本質的に整合している構造を持つことが望ましい。

高齢者医療制度では,65歳以上を高齢者と分類し,特に65歳以上75歳未満を前期高齢者,75歳以上を後期高齢者と呼ぶ。さらに国連では,高齢者の割合が7%に達すると高齢化社会,14(=7×2)%に達すると高齢社会,そして21(=7×3)%に達すると超高齢社会という。日本は2007年に超高齢社会となり,2018年には28(=7×4)%を超えており,重老齢社会(後期高齢者数14.2%>前期高齢者数13.9%)と仮称されている。

2016年には「障害者差別解消法」が施行され,障がい学生の高等教育への進学も広がり,コミュニケーションの支援が必要な場面も拡大してきている。高齢者や障がい者にとっての支援者から自立した日常では,IT環境からの情報はきわめて重要になってきている。しかし,感覚・知覚・認知機構に余裕のある健常者・児とは異なり,加齢や障がいによりこれらの機構のどこかに問題があると,この機能処理と本来行いたい処理という二重課題状態となる。この二重課題状態では,IT技術利用の精神的負担は軽くはない。

そこで,コミュニケーション手段として研究が最も進んでいる音声の知見を手掛かりに,これら手話や指点字などと音声を横断的に分析することにより,コミュニケーションを支えている重要な機能が明確になり,精神的負担の軽い支援法を実現する手掛かりが得られることが期待される。

「ことば」はヒトの脳で処理される高度の情報処理によっている。脳機能計測技術の進歩により直接観察して得られる情報は豊かになっているが,観測データにはさまざまな脳活動の結果が重なって現れている。そこで,外部環境からの「ことば」などの入力に対する反応を対応・比較推論することが効果的と考えられる。ここでは,多様な「ことば」に対する横断的分析はきわめて重要な情報となろう。

また,視覚や聴覚の障がいという制約のある状況下での言葉の獲得や学習のプロセスの分析も,「ことば」全体への理解が深まることにつながるものと考える。

障がいはきわめて多種多様であるが,また症例はただ一人ということもある。しかし,その人にとっての人生は,他者に代わってもらえる可能性のない唯一の人生であることを決して忘れてはならない。

注目されているAI技術を意識した障がい者支援技術などへの期待も大きいが,ビックデータの存在が前提となっており,難しい課題が存在する。障がいの多様性に比べ個々に共通の障がい特性を持つ事例が少ないことや,個人情報保護に関する本来の考え方とは視点の異なる運用上の障壁などもある。課題を個別に確率統計的に判断するのではなく,システム思考で横断的・統合的に洞察することが重要になる。

なお,本書は取り上げる対象が非常に広いため細部にわたる記述は限られたスペースでは残念ながら難しい。各項目の詳細に関しては,以下の優れた成書などを参照されたい。

本シリーズでは,音声に関しては,「12.音声は何を伝えているか」,「17.聞くと話すの脳科学」,「18.音声言語の自動翻訳」,「19.実験音声科学」,「21.こどもの音声」などが,また関連分野として,「13.音と時間」,「15.音のピッチ知覚」が出版されている。音響テクノロジーシリーズには,「3.音の福祉工学」,「22.音声分析合成」などがある。また,「情報福祉の基礎知識」(ジアース教育新社)はコミュニケーション障がいを含む障がいに関して,多角的・総合的視点からの取組みが示されている。

支援技術は実用化されてこそ意味を持つ領域であり,マーケットサイズとコスト,「値ごろ感」などが重要であり,世の中の主流技術のトレンドとの整合性などを考慮することも不可欠である。また,ある情報技術の進歩や環境の変化がもたらす影響が,ある障がいにはプラス面をもたらす一方で,別の障がいがマイナスの影響を受ける場合もあり,難しい課題である。例えば,音声合成技術の進歩は,音声化により視覚障がい者のQOLに貢献してきた。しかしその結果,点字機器のマーケットを縮小させ,触覚のみに依存する盲ろう者の選択範囲が狭くなるというマイナス面の影響が発生している。

1章は,本書全体への視点として,WHOのICF(国際生活機能分類)の考え方などによる障がいの定義を紹介し,障がい者の「対話のことば」として求められる特性を示す。さらに,手話(視覚言語)や指点字(触覚言語)が,言語学的にも物理特性の視点からも音声(聴覚言語)と共通の機能を持ち,社会参加に不可欠なコミュニケーションの共通基盤として成立することを示す。

2章では,コミュニケーション障がい全般の概要と,音声技術が関与する音声合成および音声認識理解技術を概観し,典型例として構音障がいに対する音声支援技術を取り上げる。また,音声技術が支援できるその他の障がいにも言及する。

3章では,脳・神経系など中枢系の障がいに起因する音声および手話の障がい関係の話題を取り上げる。

4章では,聴覚に制約がある人が用いる手話とその認識やCG,音声との相互変換技術,通信・放送技術などを取り上げる。

5章では,聴覚と視覚の双方に制約があり,音声も手話もともに利用困難な全盲ろう者の用いる触覚言語として,音声由来の指点字を中心的に取り上げる。また,先天性の全盲ろう児は,自然に言語を獲得することが困難であり,その教育に挑戦した大量の記録があることを紹介し,その分析からは定型発達児の言語獲得プロセスの理解や言語障がい者の訓練の手掛かりが得られることも期待されることを述べる。

6章では,以上の各章が障がい者が用いる「ことば」や支援法を取り上げてきたのに対し,それらを用いる人の側面に目を向ける。障がい当事者とのコミュニケーション時に考慮すべき事項,支援技術や支援の評価法や支援によるQOLの評価法,支援技術のもたらす二次障がい,非母語での長時間通訳業務などに従事する支援者の負担軽減への配慮,訓練などの重要な問題を取り上げる。ここで取り上げるさまざまな配慮は,コミュニケーションの本質を理解するうえでも示唆に富む内容であると思われる。

2021年5月
市川熹・長嶋祐二

1.障がいと「ことば」
1.1 障がいの種類と「ことば」に求める条件  
 1.1.1 障がいの種類  
 1.1.2 コミュニケーション障がい者が「ことば」に求める条件  
 1.1.3 障がい者が用いている「対話のことば」  
1.2 言語学の視点からの共通性  
 1.2.1 言語の特徴  
 1.2.2 文法  
1.3 物理レベルから見た「ことば」の共通特性  
 1.3.1 音韻構造と精神的負担  
 1.3.2 プロソディ  
 1.3.3 各メディアにおけるリズムの実体化  
 1.3.4 分析的リズム  
 1.3.5 対話における実時間性  
 1.3.6 発話者情報  
引用・参考文献  

2.音声とコミュニケーション障がい
2.1 障がい者と音声  
 2.1.1 発話系の障がい  
 2.1.2 聴覚系の障がい  
 2.1.3 視覚障がいへの支援  
 2.1.4 盲ろう  
 2.1.5 言語障がい,吃音  
 2.1.6 肢体不自由  
 2.1.7 高齢者の生活支援  
 2.1.8 音声による障がいなどの診断  
2.2 音声合成および音声認識技術の概要とAI技術  
 2.2.1 音声合成技術  
 2.2.2 音声認識技術  
 2.2.3 AI技術と音声  
2.3 音声技術による支援の例:構音障がい  
 2.3.1 構音障がい者の音声特徴  
 2.3.2 話者性を維持した声質変換・音声合成  
引用・参考文献  

3.コミュニケーション障がいと脳機能
3.1 音声・手話に共通な脳の言語処理構造の概要  
3.2 脳損傷による言語障がい  
 3.2.1 失語症  
 3.2.2 構音障がい  
 3.2.3 右半球症状  
 3.2.4 鳴禽類の脳破壊によるさえずり障がい  
3.3 自閉スペクトラム症の言語障がい  
3.4 吃音  
3.5 手話の障がい  
 3.5.1 手話失語  
 3.5.2 手話の吃音  
 3.5.3 手話と自閉スペクトラム症  
3.6 日本語特有の言語障がい  
 3.6.1 漢字仮名問題  
 3.6.2 文末助詞  
引用・参考文献  

4.聴覚障がいと手話
4.1 コミュニケーション手段としての手話  
 4.1.1 聴覚障がいとは  
 4.1.2 聴覚障がい者と手話  
4.2 音声言語と手話の自動翻訳  
 4.2.1 音声言語から手話への自動翻訳  
 4.2.2 手話から音声言語への翻訳  
4.3 データからの手話文自動生成  
4.4 人的支援による手話サービス  
引用・参考文献  

5.盲ろう者と触覚言語(触手話,指点字,指文字)
5.1 盲ろう者  
 5.1.1 盲ろう  
 5.1.2 盲ろう者のタイプ  
 5.1.3 盲ろう者の困難さ・不便さ  
5.2 触覚言語  
 5.2.1 触覚  
 5.2.2 盲ろう者のコミュニケーション  
 5.2.3 盲ベースのコミュニケーション手段  
 5.2.4 ろうベースのコミュニケーション手段  
 5.2.5 発話者情報・感情情報  
 5.2.6 触覚言語の対話速度  
5.3 支援機器・技術  
 5.3.1 実時間対話支援技術の条件  
 5.3.2 盲ろう者支援技術  
5.4 先天性全盲ろう児の言語教育  
 5.4.1 先天性全盲ろう児教育の海外事例  
 5.4.2 先天性全盲ろう児教育の国内事例  
引用・参考文献  

6.障がいのある人との対話
6.1 対話時の配慮  
 6.1.1 相互困難状態,相互輔生  
 6.1.2 基本的配慮  
 6.1.3 具体的配慮事項  
6.2 精神的負担と生活の質  
 6.2.1 ユニバーサルデザインプロダクツとオーファンプロダクツ  
 6.2.2 コミュニケーションにおける精神的負担  
 6.2.3 生活の質(QOL)  
6.3 付随的障がい  
 6.3.1 二次障がい  
 6.3.2 職業病  
引用・参考文献  

あとがき  
索引  

読者モニターレビュー【 ノリ 様(ご専門:情報学・手話言語機械翻訳)】

手話、触手話、指点字、点字を「コミュニケーション方法」の観点から統一的に取り扱っている珍しい本でした。
大まかな障碍特性(難聴・ろう・吃音・手話吃音・弱視・盲・盲ろうなど)をベースにこれらのコミュニケーション方法を取り上げ、丁寧に解説されています。
また、脳損傷ろう者の手話や吃音と手話吃音の類似性や先天全盲ろう児への教育事例など、他書ではあまり見かけないトピックが散りばめられていて、広く勉強になります。
一点、本書執筆時期の兼ね合いもあって手話機械翻訳の話題が既に古くなっている気はしました。
Transformer周りは研究スピードが凄く速いので致し方ない気はします。
深層学習のお気持ちが分かる方で興味があればarXiv(https://arxiv.org/)で「sign language translation」や「sign language generation」と調べてみてください。

読者モニターレビュー【 K 様(ご専門:感情認識)】

本書籍では様々な種類の障がいと障がいを持つ方々を助ける技術についての解説・現在の研究の動向についてまとめられています.私は本書籍を通して,音声のみならず,手話や触覚言語など様々なモダリティのことばを介したコミュニケーションとその課題について理解できました.また,取り上げる障がいの対象が広いため,障がいや障がいを持つ方々のコミュニケーションを助けるために求めることを知る最初の書籍として最適ではないかと思います.私はコミュニケーションを助けるための研究に取り組んでいるため,その開発に生かすことができるヒントが多く,非常に勉強になりました.

読者モニターレビュー【 N/M 様(ご専門:総合情報学(情報科学))】

本書は,タイトルにもある通り,音響サイエンスシリーズの22冊目の書籍で,音・声に関する学問領域である「音響学」と「音声学」,特にその中でも,障がいという「福祉」の分野についての記述がなされている.

本書の大きな特徴として,まず目についたのは,引用・参考文献の多さにある.各章50〜100近くも和書・洋書の書籍や論文が紹介されている.これだけの多くの引用・参考文献の多いものを情報科学の分野ではあまり目にすることがないため,言及されている内容にもしっかりと裏付けのなされた,著者陣の本書に対する本気度が伺えた.

本書の構成としては,まず第1章で「障がい」の種類や「ことば」に求める条件などを福祉・言語学の立場から詳しく記述されている.第2章以降で,本書のタイトルにもある,「音声コミュニケーションと障がい者」について,これらに関連する各種,用語の定義,歴史的背景,研究成果などの内容が分かりやすく記述されている.

それに加えて,本書が発売される2021年現在,新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)の流行もあり,どうやって福祉の分野では支援していくべきかという課題が「あとがき」にも述べられている.

ここで全ての章について述べると,膨大な文書量になるため,個々については挙げないが,その中でも私が気になった部分をいくつか紹介する.

私自身,音響・音声学,福祉の分野に関しては完全に素人なので,情報科学に関連する項目について,「2.2音声合成および音声認識技術の概要とAI技術」では,音声合成・認識技術やAI(人工知能)技術や,音声ディープラーニング(深層学習)などのおなじみに専門用語が出てくるので,情報科学の分野の方には馴染み深いのではないかと思う.「2.3音声技術による支援の例:構音障がい」では,音声技術による支援の例も紹介されていたりと,ICTを用いた障がい者支援のシステムや,アプリケーションを構築しようとする方(特に,本書の守備範囲である音・声に関連するもの)にも,バックグラウンドの知識として,この節だけでなく,本書全体を通して,参考になることも多いのではないと読んでいて思った.

また個人的には,「2.1.5 言語障がい,吃音」,「3.4吃音」についても,大変興味深かった.以前,福山雅治,藤原さくら主演の連続ドラマ「ラヴソング」(フジテレビ系列,2016年4月〜6月期)にて,「吃音」という障がいについて初めて知った(簡単にあらすじを書いておくと,『ある出来事をきっかけにミュージシャンの神代広平(役:福山)は臨床心理士として働きだす.カウンセリングを受けに来た少女・佐野さくら(役:藤原)は吃音症で吃音を気にして周囲の人とうまくコミュニケーションがとれないが,好きな歌を歌う時だけは吃音が出ない.彼女が歌う歌を聞き,その美声と才能に気付いた広平は,さくらの才能を花開かせたいとの思いから諦めかけていた音楽への情熱が湧き上がり,音楽を通じて2人は心を通わせて行く』という内容).本書では,吃音についての研究成果などが分かりやすく記述されてある(本書と直接関係はないが,本書で学んだ後で,連続ドラマの方も視聴すると,吃音という障がいについて,考えるきっかけにもなるとも思った).

最後に,本書は,いろいろな音と障がいについての研究成果などが,ある程度分かりやすく記述されてはいるが,若干,駆け足気味で概論的な部分も存在するので,膨大な引用・参考文献を参考に,興味のある分野については,音響サイエンスシリーズの別の書籍や,関連する他書を読んだりWebページで調べることにより,本書に挙げられたテーマを深く学ぶことができるだろうと思われる.

市川 熹

市川 熹(イチカワ アキラ)

ことばの原点である実時間対話のことば(音声、手話、触覚言語など)に注目してきた。道具を用いずに直接対話し、即理解できるなどの要求条件が、モダリティの異なる音声や手話に共通の機能・構造をもたらしていると考え、その機能・構造や情報に関心を持っている。また、合成音声に自己の個人性再現を追求する音声合成研究者(ご自身が発話障がい)の取り組みには、個々人の人格尊重の重要性を実感させられた。唯一人の障がいの為であっても、これらの情報を豊かに伝える方法の実現が重要と考えている。最近では、少数データとならざるを得ない手話や触覚言語に対し、大量データにより性能が飛躍的に改善された音声との共通の機能・構造を活かしたDL処理の可能性に関心を持っている。

長嶋 祐二

長嶋 祐二(ナガシマ ユウジ)


「会議・プレゼンテーションのバリアフリー―“だれでも参加”を目指す実践マニュアル ―」(電子情報通信学会 編・発行,情報保障ワーキンググループ 編)の編著者。

※illustration by Takayuki

岡本 明(オカモト アキラ)

加藤 直人(カトウ ナオト)

酒向 慎司(サコウ シンジ)

滝口 哲也(タキグチ テツヤ)

原 大介(ハラ ダイスケ)

幕内 充

幕内 充(マクウチ ミチル)

ヒト言語の脳メカニズムの研究をしています。文処理における階層構造構築を担う脳領域がブローカ野であることをfMRIを使って検証してきました。数学や音楽などにも同様の階層構造が存在し、やはりブローカ野を賦活させます。言語・数学・音楽は全て複数の記号が線的に連結された記号列産出です。記号列には、記号同士のまとまりがあり、さらにまとまりのまとまりがあるということが階層構造の本質だと考えています。ヒト特有の重要な記号能力である描画についても階層構造があることを実験的に示しました。記号とは何であり、なぜヒトのみにあるのかを進化論的な視点も取り入れながら神経科学的に研究しています。

「読売新聞」夕刊READ&LEAD(2021年10月19日) 掲載日:2021/10/19

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