現場で役立つ オペアンプ回路 - サーボ系を中心として -

現場で役立つ オペアンプ回路 - サーボ系を中心として -

  • 涌井 伸二 東京農工大大学院教授 博士(工学)

回路方程式を立式するための補助図面や実測の周波数応答を掲載し,この計測結果と数式との対応を詳細に説明し,理解の手助けとした。

ジャンル
発行年月日
2017/07/25
判型
A5
ページ数
184ページ
ISBN
978-4-339-00899-9
現場で役立つ オペアンプ回路 - サーボ系を中心として -
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定価

2,970(本体2,700円+税)

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本書では,サーボ系の構築という目的における一機能としてのオペアンプ回路という説明形式を採用。回路方程式を立式するための補助図面や実測の周波数応答を掲載し,この計測結果と数式との対応を詳細に説明し,理解の手助けとした。

電気電子工学科における必修科目の一つに電子回路がある。筆者の学生時代,トランジスタ,電界効果トランジスタ,そしてなんと真空管を使った電子回路まで扱われた。もちろんいまの時代にあって,真空管の取扱いを講義しても実利は期待できない。加えて,筆者自身の使用経験は皆無であり,要所をおさえた講義はできるわけもない。そのため,おもにトランジスタの接地形式の違い,hパラメータ等価回路の扱いなどを説明する。最終的には,トランジスタを用いた差動回路の動作とその解析,そして電力増幅回路の動作を理解させることまでを講義する。初学者に対して知識を伝授するのであり,トランジスタ単体の動作,およびこれを使った電子回路の基本構造は学ばざるを得ない。

しかし,卒研配属時の研究あるいはメーカ就職後の仕事の場面で,トランジスタを使った電子回路を扱うことはほとんどない,といってよいであろう。むしろオペアンプを取り扱う場面の方が圧倒的に多い。そのため,トランジスタを使った電子回路の講義が終了した後は,オペアンプに関する内容を話す。もちろん,初学者向け電子回路のテキストには,トランジスタとともにオペアンプに関する記載が必ずある。しかし,それは貧弱で,かつ記載せざるを得ない内容であるものの,これが難しく扱われているように思う。もちろん,基礎的事項の理解は必要である。しかし,とりあえずオペアンプを使った電子回路を製作し,これを使って仕事をしたい人にとっては,冗長な記載になっていると感じる。そのため,オペアンプの講義時には,実務に直結する内容を話している。この経験から,以下の課題が浮き彫りになった。
 (1) 講義では,加減算回路あるいは位相進み補償回路における伝達特性の解析結果を示す。ところが初学者または初級技術者の場合,そもそも加減算回路などの使われ方がわからないので,解析結果だけを示されても実感がわかない。
 (2) オペアンプが多数個接続されて所望の機能を実現するのであり,そのなかの一つだけを取り出している,ということを初学者は認識できていない。
 (3) オペアンプが実現する機能を伝達関数で表現するが,これを導く基本式を立式できない。すなわち,電位と電流の流れを仮定し,これを回路図に記載することをとおして回路方程式を立てられない。
 (4) オペアンプを用いた電子回路を製作した後,この機能をオシロスコープあるいはサーボアナライザ(周波数応答分析装置)を使って計測することになる。しかし,従来の書籍では,特に周波数応答と数式との1対1の関係を十分に説明していない。だから,実務の場面では,不可避なミスの原因を特定あるいは推定したうえで,デバッグすることができない。
 上記課題を解決するために本書を執筆した。具体的な特徴は以下のとおりである。
 (a) 上記(1),(2)の解決を図るために,サーボ系の構築という目的のなかにおける一機能としてのオペアンプ回路であるという説明形式を採用した。
 (b) 上記(3)に対しては,回路方程式を立式するための補助図面を多数掲載した。
 (c) 上記(4)に対しては,実測の周波数応答を掲載し,この計測結果と数式との対応を詳細に説明した。
サーボ系は閉ループを構成しており,このループが備える固有の性質によって「曖昧性」を強力に抑制してくれる。具体的に,数多くの種類があるオペアンプの選定に多大の時間を費やさずとも,そしてこれに外付けする抵抗およびコンデンサの精度に問題があっても,閉じたループが持つ抑圧特性によってサーボ系を動作させることができる。加えて,パワーオペアンプを除外して,信号処理用のものに対して過酷な取扱いを行っても容易には破壊しない。したがって,試作レベルのサーボ系を構築するのであれば,本書に基づく勉強をとおして,大胆にオペアンプを使った回路を製作し,これをサーボ系に投入してほしいと願う。 

最後に,出版にあたり多大なるご尽力をいただいたコロナ社の皆様に感謝します。

2017年6月 涌井伸二

1. オペアンプの活用
1.1 電子回路という科目
1.2 オペアンプを使用する場面

2. オペアンプ
2.1 パッケージ
2.2 ピンアサインメント
2.3 反転アンプと非反転アンプ
2.4 外付け素子のインピーダンスおよび伝達関数
2.5 伝達関数の算出
2.6 トラブル例,オペアンプの選定など
演習問題

3. 補償器
3.1 加減算回路
3.2 バッファアンプ
3.3 PI補償器
3.4 PID補償器
3.5 位相進み補償器
3.6 位相遅れ補償器
3.7 位相進み遅れ補償器
3.8 ローパスフィルタ
3.9 バンドパスフィルタ
3.10 ノッチフィルタ
演習問題

4. 特殊回路
4.1 ゲイン調整・切替え
4.2 時定数の切替え
4.3 オフセット調整
4.4 ゲイン零化のスイッチ
4.5 リミッタ
4.6 IV変換器
4.7 ウィンドコンパレータ
4.8 基準電圧の設定とバイアス電流の通電
4.9 その他の回路
演習問題

5. 電流アンプ
5.1 電流フィードバックとは(DCモータの電流ドライブ回路)
5.2 電流フィードバックの有無による比較
5.3 電流アンプと補償器の一体化
5.4 パワーデバイスの保護回路
5.5 圧電素子の駆動回路
演習問題

引用・参考文献
索引

涌井 伸二(ワクイ シンジ)