現場で役立つ 制御工学の基本

現場で役立つ 制御工学の基本

制御工学を講義している著者が感じる,学生の座学での知識習得の向上を目的に,制御工学の面白さや全体像の理解をはじめに行い,順次に数学的背景を理解していくという構成で執筆した意欲的内容。章末には演習問題と全解答を付けた。

ジャンル
発行年月日
2012/01/20
判型
A5
ページ数
256ページ
ISBN
978-4-339-03202-4
現場で役立つ 制御工学の基本
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定価

3,520(本体3,200円+税)

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【書籍の特徴】
制御工学の書籍は極めて多い。これら書籍では,最初に数式の定義などの導入をおこなう。しかし,初めて制御工学を学ぶ学生,あるいは初級技術者にとって,数式の完全理解は高い壁となる。これを乗り越えられない,すなわち数式の理解が不十分な場合,制御工学の知見を駆使した研究開発ができないと思い込む。実は決してそのようなことはないのである。本書の場合,数学的な準備の前に,いきなり実際の応用例を2章に配置し,その後に数学的な準備事項を3章で記載している。極論を許してもらうならば,数式が理解不能であっても,機械やプラントに対して制御をかけていくことができる。わからないからと言っても,工学的な感性を駆使すればフィードバックループは組んでいける。このような実務を経験することによって,数式の取り扱いは格段に進捗する。つまり,現場で使える,使いこなせる制御工学を意識した書籍に仕上げている。
【各章について】
1章の序論では,閉じた世界をつくりだすフィードバック制御の必要性について論述している。 2章では,いきなり温度制御,磁気軸受の制御,光ヘッドの位置決めというフィードバック制御の実例を解説している。 3章では,自然現象を表現する微分方程式を「絵」としてのブロック線図に描画する手法を述べている。4章では実世界の応答である時間応答の取り扱いを記載している。5章では,時間応答と対の関係にある周波数応答の取り扱いを述べている。常に時間応答と対比して周波数応答を解説している。6章では,閉じたループを構成するために生じる安定性の問題を扱う。ここまでの章では解析手段を学んでいるが,いよいよ7章ではモノを造り出す設計に焦点をあてている。具体的に,PID補償に代表される実際の補償器の設計法を記載している。8章では,制御性能を上げる一手段であるフィードフォワードの技術を述べている。何れの章にも演習問題を挿入した。丁寧な説明付きの解答を行っていることが特徴である。説明がない場合,解答を途中で放棄して理解が進まないことを回避するためである。
【著者からのメッセージ】
 モノを自在に操ることが制御工学の目的である。そのため,機械などの実際の応答に馴染んでもらう必要があり,実測のデータを多用した。そして,シミュレータによる波形あるいは周波数応答との違いにまで言及している。さらに,数式のとり扱いにおいては,工学的な理解が容易にはかれるように,物理現象の記載まで行っている。

1. 序論
1.1 フィードバック制御とは 
1.2 制御工学で用いられる用語 
1.3 フィードバック制御の必要性 
1.4 フィードバック制御とフィードフォワード制御の関係 

2. フィードバック制御の実例
2.1 温度制御 
2.2 光ヘッドの位置制御 
2.3 磁気軸受の制御 
2.4 スイッチング電源の制御のための同定 
2.5 大型重量構造物(半導体露光装置)の同定と制御 
2.6 モータの制御 
 2.6.1 磁気型モータの制御 
 2.6.2 ピエゾモータの制御 
 2.6.3 超音波モータの制御 

3. 制御系のブロック線図による表現
3.1 ブロック線図のメリット 
3.2 微分方程式によるモデル化 
3.3 微分方程式の解法とラプラス変換 
3.4 ラプラス変換の基礎 
 3.4.1 ラプラス変換表 
 3.4.2 ラプラス変換の基本性質 
 3.4.3 逆ラプラス変換 
 3.4.4 初期値と定常値(最終値) 
3.5 伝達関数によるモデル化 
 3.5.1 伝達関数の導出とブロック線図 
 3.5.2 代表的な伝達関数 
3.6 ブロック線図 
演習問題 

4. 時間応答
4.1 時間応答に関する技術用語 
4.2 時間応答の計算 
 4.2.1 1次遅れ系のインパルス応答 
 4.2.2 1次遅れ系のステップ応答 
 4.2.3 2次遅れ系のステップ応答 
 4.2.4 極配置と応答波形 
 4.2.5 零点配置と応答波形 
4.3 定常偏差(位置偏差,速度偏差,加速度偏差) 
 4.3.1 定常位置偏差 
 4.3.2 定常速度偏差 
 4.3.3 定常加速度偏差 
 4.3.4 外乱に対する定常偏差 
演習問題 

5. 周波数応答
5.1 時間と周波数の関係 
5.2 周波数応答とその種類 
5.3 周波数応答の読み取り 
 5.3.1 周波数応答と時間応答の対応関係 
 5.3.2 実測の周波数応答 
5.4 ボード線図の描画とベクトル軌跡 
演習問題 

6. 制御系の安定性
6.1 システムの安定・不安定 
6.2 安定性と内部安定性 
6.3 周波数伝達関数に基づく安定判別法 
 6.3.1 ゲイン余裕と位相余裕 
 6.3.2 ボード線図による安定判別 
 6.3.3 ナイキスト線図による安定判別法 
6.4 伝達関数に基づく安定判別法 
 6.4.1 ラウスの安定判別法 
 6.4.2 フルビッツの安定判別法 
6.5 その他の安定性の尺度 
 6.5.1 根軌跡 
 6.5.2 実システムにおける不安定要因 
演習問題 

7. 制御系の設計
7.1 解析と設計 
7.2 周波数応答と時間応答による評価 
 7.2.1 閉ループ周波数応答による評価 
 7.2.2 開ループ周波数応答による評価 
 7.2.3 時間応答による評価 
7.3 PID補償を使った制御系設計と調整 
 7.3.1 PI補償器の設計 
 7.3.2 PD補償器の設計 
 7.3.3 PID補償器の設計 
 7.3.4 PID補償の調整則 
 7.3.5 PID補償器の実用的な実装 
7.4 位相進み・位相遅れ補償器を使った制御系設計 
 7.4.1 位相進み補償器の設計 
 7.4.2 位相遅れ補償器の設計 
 7.4.3 位相進み遅れ補償器の設計 
7.5 周波数整形の基本 
 7.5.1 高周波領域での特性 
 7.5.2 低周波領域での特性 
7.6 外乱オブザーバ 
 7.6.1 外乱抑圧特性 
 7.6.2 ノミナル化特性 
7.7 内部モデル制御法 
 7.7.1 制御対象が積分特性をもたない場合 
 7.7.2 制御対象が積分特性をもつ場合 
7.8 むだ時間補償法 
7.9 ノッチフィルタによる振動特性の改善 
7.10 制御器の離散化実現法 
 7.10.1 後退差分法による離散化実現 
 7.10.2 双一次変換法による離散化実現 
7.11 非干渉化補償 
7.12 性能向上の方法 
演習問題 

8. フィードフォワードの導入
8.1 2自由度制御系 
8.2 フィードバック型2自由度制御系 
8.3 連続軌跡追従制御系 
8.4 アンチ・ワインドアップ補償 
演習問題 

付録
A. 状態方程式
B. オイラーの公式
C. 部分積分
D. 置換積分
E. スモールモールゲイン定理
F. ノルム

参考文献 
演習問題解答 
索引 

涌井 伸二(ワクイ シンジ)

橋本 誠司(ハシモト セイジ)

高梨 宏之(タカナシ ヒロユキ)

中村 幸紀(ナカムラ ユキノリ)