CFDで移動現象論111例題 - Ansys Fluentによる計算解法 -

CFDで移動現象論111例題 - Ansys Fluentによる計算解法 -

流れ,伝熱,物質移動で構成される移動現象論に関するAnsys Fluentの解説書。

ジャンル
発行年月日
2023/11/22
判型
A5
ページ数
228ページ
ISBN
978-4-339-06666-1
CFDで移動現象論111例題 - Ansys Fluentによる計算解法 -
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定価

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【書籍の特徴】
流体シミュレーション(CFD)ソフトのAnsys FluentにAnsys Student という学生向け無料版が提供されています。これにより個人のパソコンでCFDが手軽に学習,習得できるようになりました。しかし,未だ初心者向けのCFD解析の解説本はありません。そこで本書はCFD に興味を持つ学生,技術者のために,Ansys Fluentによる例題解法を紹介した例題集です。
解説した111の例題は流体工学,伝熱工学,化学工学の教科書から収集しています。円管内流れ,境界層流れ,自然対流など工学部の学生なら知っているモデルが多いでしょう。付属の解法ファイルをダウンロードして,その例題のCFD計算を直ぐに試すことができます。

【主要目次(例題番号一覧)】
第1章 流れ
1.1 境界速度起因の粘性流れ / 例題1.1~1.5
1.2 圧力起因の粘性流れ / 例題1.6~1.10
1.3 外力起因の粘性流れ / 例題1.11~1.13
1.4 強制対流 / 例題1.14~1.17
1.5 混相流 / 例題1.18~1.33

第2章 伝熱
2.1 伝導伝熱 / 例題2.1~2.5
2.2 非定常伝導伝熱 / 例題2.6~2.11
2.3 対流伝熱 / 例題2.12~2.18
2.4 複合伝熱 / 例題2.19~2.23
2.5 凝縮伝熱・蒸発伝熱 / 例題2.24~2.30

第3章 物質移動と拡散分離操作
3.1 静止媒体中の成分拡散―定常,非定常― / 例題3.1~3.4
3.2 対流拡散 / 例題3.5~3.8
3.3 気液間の物質移動(蒸発,凝縮,ガス吸収) / 例題3.9~3.15
3.4 物質移動操作 / 例題3.16~3.28

第4章 装置の混合特性 / 例題4.1~4.6

第5章 反応工学
5.1 回分反応器(BR) / 例題5.1~5.2
5.2 流通式槽型反応器(CSTR) / 例題5.3~5.4
5.3 管型反応器(PFR) / 例題5.5~5.10
5.4 物質拡散と反応の複合モデル / 例題5.11~5.14

【読者へのメッセージ】
Ansys Studentを自分のパソコンにインストールして,先ず知っているモデルのCFD計算を試してみてください。付属のExcelによる設定法解説や解説ビデオを参考にAnsys Fluentが初歩から学べます。

コンピュータによる数値流体力学(CFD)シミュレーションは,大型計算機の端末で実行するのが常識であった。しかし,最近のパソコンの性能向上により,簡単なCFDシミュレーションなら個人のパソコンでも可能となってきている。これに対応して,CFDのメジャーソフトであるAnsys FluentのANSYS社が,Ansys Studentという学生の自習向け無料版の提供を2015年から始めた。Ansys Studentは手軽に試用することができるので,個人のパソコンでCFDの学習,習得が容易となった。これからは数値計算の専門でない一般の学生,技術者の間でCFDの利用が広がると期待される。しかし,初心者向けのCFDシミュレーションの教科書,参考書はいまだネット上のもの以外はほとんどない。そこで,本書は特にAnsys FluentでCFDを学ぼうとする学生,技術者のために,CFDシミュレーションの基礎的な例題解法を紹介したものである。

すでに流体工学や伝熱工学を学んだ学生,技術者がCFD解析を始めようとするとき,教科書で学んだ解析解とCFDシミュレーションの結果が合っているのかがつねに気がかりとなる。ナビエ・ストークスの式など同じ基礎式を解いているのであるから,解析解とCFDシミュレーションの結果(数値解)は基本的には一致するであろう。しかし,実際はどの程度なのか?この例題集はまずこの疑問に答えようとした。もちろん本書の多数の例題を通した結論として,解析解とCFDシミュレーションの結果は一致することが確認された。しかし,CFDシミュレーションの結果に自信をもつために,CFDユーザは,本書のような基礎的なモデルで自身のCFDシミュレーションの結果と解析解の一致を確認しておくべきである。さらに,CFDシミュレーションを実用的に利用するためには,自身が対象とする現象に近い系において,解析解や確立された相関式が与える諸変数の関係をCFDシミュレーションで再現できる知識とスキルが必要とされることに留意されたい。

書名とした移動現象論とは,工学部・化学工学課程の主要科目である。これは,機械工学の流体工学と伝熱工学が合体して,それに物質移動論が加わる内容である。移動現象論では,流れ,伝熱,物質移動のおのおのの基礎式の類似性に着目して,例えばある流れモデルの解析解を同形状の他の伝熱,物質移動に応用する。移動現象論では,このような手法(アナロジー)により,三つの移動現象を総合的に取り扱うのが特徴である。本書の111例題のうち,41例題は移動現象論の教科書に記載のモデルである(ファイル番号は前著の「Excelで気軽に移動現象論」1_†と共通である)。それらに加えて追加した70例題は,二相モデル,3DなどCFD特有のやや高度なモデル解析を取り扱っている。

本書の各例題は独立しているので,ページ順に読む必要はない。流体工学や伝熱工学ですでに習ったことのあるモデルから試すことをおすすめする。コロナ社のホームページ(https://www.coronasha.co.jp/)の本書サポートページに各例題の資料が掲載されているので(目次裏"サポートページの資料"参照),読者自身でモデルを再現しながら解法の操作・設定方法を学習できる。なお,例題集という構成上,本書でのソフトの細かい操作説明は不十分である。この点は付属資料のExcelシートやビデオで補っていただきたい。

本書のもととなった化学工学誌の連載「CFDで気軽に移動現象論」(2021年8号~2022年8号)でお世話になった三角隆太氏(横浜国立大学),本書の出版に際しご協力いただいたアンシス・ジャパン(株),サイバネットシステム(株)に感謝申し上げる。

2023年9月
伊東章,大川原真一

1章 流れ
1.1 境界速度起因の粘性流れ
例題1.1 平行平板間のCouette流れ etp1_01
例題1.2 非定常Couette流れ etp1_20
例題1.3 二層Couette流れ etp1_02
例題1.4 正方形ダクト内Couette流れ etp1_03
例題1.5 二重円筒内Couette流れ etp1_04
1.2 圧力起因の粘性流れ
例題1.6 平行平板間のCouette–Poiseuille流れ etp1_05
例題1.7 円管内流れ etp1_07
例題1.8 矩形ダクト内のPoiseuille流れ etp1_11
例題1.9 オリフィス流れの圧力損失
例題1.10 平膜モジュール流れモデル―多孔質ゾーン― etp1_35
1.3 外力起因の粘性流れ
例題1.11 流下液膜 etp1_12
例題1.12 開水路流れ etp1_14
例題1.13 垂直平板間の自然対流流れ etp1_13
1.4 強制対流
例題1.14 平板に沿う層流境界層 etp1_17
例題1.15 円柱まわりの層流流れ(円柱:etp1_22 ,球:etp1_27)
例題1.16 撹拌槽のフローパターン etp1_24
例題1.17 2次元空気砲 etp1_28
1.5 混相流
例題1.18 ベンチュリーメーター etp1_29
例題1.19 ピトー管 etp1_31
例題1.20 ロータメータ etp1_30
例題1.21 回転容器中の強制渦 etp1_36
例題1.22 二重円筒内の自由渦 etp1_37
例題1.23 水滴および気泡の終末速度 etp1_38
例題1.24 流下液膜流れ(二相モデル)etp1_32
例題1.25 Bostwick粘度計 etp1_34
例題1.26 スラグ流れ(液液系:etp1_33,気液系:etp1_42)
例題1.27 気泡の生成 etp1_39
例題1.28 水の滴下 etp1_45
例題1.29 液滴の終末速度―雨の降る速度― etp1_46
例題1.30 充填層の圧力損失 etp1_44
例題1.31 多孔質材料中の水滴の浸透・透過―気固液三相モデル― etp1_43
例題1.32 流動層―グラニュラーモデル― etp1_40
例題1.33 粒子の沈降分離―DDPMモデル― etp1_41

2章 伝熱
2.1 伝導伝熱
例題2.1 多層壁の伝熱 etp2_01
例題2.2 円筒状多層壁の伝熱 etp2_02
例題2.3 矩形材料の温度分布 etp2_03
例題2.4 円柱材料の温度分布 etp2_04
例題2.5 電熱ヒーターの中心温度 etp2_12
2.2 非定常伝導伝熱
例題2.6 板状材料の加熱 etp2_05
例題2.7 円柱材料の加熱 etp2_08
例題2.8 球状材料の加熱 etp2_09
例題2.9 空気中材料の非定常複合伝熱―対流境界条件― etp2_33
例題2.10 皮膚から壁への非定常伝熱 etp2_07
例題2.11 レトルトパウチの非定常伝熱 etp2_06
2.3 対流伝熱
例題2.12 平行平板間Poiseuille流れへの伝熱 etp2_14
例題2.13 円管内層流流れへの伝熱(壁面温度一定) etp2_15
例題2.14 円管内層流流れへの伝熱(壁面熱流束一定) etp2_16
例題2.15 平板上の温度境界層 etp2_17
例題2.16 円柱まわりの強制対流伝熱 etp2_31
例題2.17 球まわりの強制対流伝熱 etp2_32
例題2.18 垂直平板上の自然対流伝熱 etp2_19
2.4 複合伝熱
例題2.19 ハーは暖かくフーは冷たいのはなぜ etp2_34
例題2.20 缶ビールが冷える時間 etp2_21
例題2.21 フィンの伝熱 etp2_22
例題2.22 ヒートシンクの放熱性能 etp2_35>
例題2.23 二重管式熱交換器 etp2_26
2.5 凝縮伝熱・蒸発伝熱
例題2.24 電気ケトルの沸騰・蒸発―Leeモデル― etp2_28
例題2.25 面上の水滴の蒸発―Leeモデル― etp2_36
例題2.26 面上の滴状凝縮―Leeモデル― etp2_37
例題2.27 膜状凝縮―Leeモデル― etp2_30
例題2.28 プール沸騰―物質移動モデル― etp2_38
例題2.29 膜状凝縮・滴状凝縮―物質移動モデル― etp2_39,etp2_40
例題2.30 水平円管上の凝縮―物質移動モデル― etp2_42

3章 物質移動と拡散分離操作
3.1 静止媒体中の成分拡散―定常,非定常―
例題3.1 静止ガス中の定常拡散 etp3_03
例題3.2 板状材料の乾燥―非定常拡散― etp3_04
例題3.3 円柱状材料の乾燥―円筒座標非定常拡散― etp3_09
例題3.4 球状材料の乾燥―球座標非定常拡散― etp3_10
3.2 対流拡散
例題3.5 点源からの拡散 etp3_21
例題3.6 平板上の濃度境界層 etp3_22
例題3.7 流下液膜へのガス吸収 etp3_17
例題3.8 円管内流れへの濃度拡散(Graetz問題) etp3_20
3.3 気液間の物質移動(蒸発,凝縮,ガス吸収)
例題3.9 一方拡散―物質移動モデル― etp3_14
例題3.10 ガス吸収―物質移動モデル― etp3_35
例題3.11 水滴の蒸発―物質移動モデル―etp3_36
例題3.12 滴状凝縮―物質移動モデル― etp3_37
例題3.13 水滴の蒸発・滴状凝縮―熱・物質同時移動モデル― etp3_54
例題3.14 床面上の水の蒸発―物質移動モデル― etp3_46
例題3.15 膜状凝縮―物質移動モデル― etp3_49
3.4 物質移動操作
例題3.16 蒸発:拡散セル―熱・物質移動モデル― etp3_61
例題3.17 乾燥:材料-空気間の減率乾燥モデル etp3_50
例題3.18 ガス吸収:流下液膜へのガス吸収―気液相モデル― etp3_48
例題3.19 ガス交換:人工肺のモデル etp3_44
例題3.20 液液抽出:並流接触 etp3_51
例題3.21 液液抽出:向流接触 etp3_52
例題3.22 透析:ダイアライザー etp3_42
例題3.23 吸着:固定層吸着と破過曲線 etp3_40
例題3.24 クロマトグラフィー etp3_43
例題3.25 調湿:水の蒸発と湿球温度 etp3_45
例題3.26 乾燥:落下水滴の蒸発 etp2_45
例題3.27 蒸留:太陽熱蒸留器 etp3_57
例題3.28 蒸留:二成分系単蒸留 etp3_59

4章 装置の混合特性
例題4.1 石油タンクの換気―流通式混合槽― etp3_47
例題4.2 流通式混合槽の混合特性―ステップ応答とインパルス応答― etp3_39,etp3_53
例題4.3 多段流通式混合槽の混合特性―ステップ応答とインパルス応答― etp3_41
例題4.4 プラグフローの混合特性―ステップ応答とインパルス応答― etp3_16
例題4.5 層流管流れの混合特性―ステップ応答―(LFRモデル)etp3_33
例題4.6 層流管流れの混合特性―インパルス応答―(細管流れのTaylor分散)etp3_32

5章 反応工学
5.1 回分反応器(BR)
例題5.1 液相BRにおける逐次反応 etp5_01
例題5.2 非等温BR etp5_02 
5.2 流通式槽型反応器(CSTR)
例題5.3 CSTRの非定常挙動 etp5_03
例題5.4 多段CSTRの非定常挙動 etp5_04
5.3 管型反応器(PFR)
例題5.5 液相PFR(一次反応) etp5_05
例題5.6 液相PFRにおける逐次反応 etp5_06
例題5.7 気相等温PFR etp5_07
例題5.8 非等温液相反応PFR etp5_08
例題5.9 非等温気相反応PFR etp5_09
例題5.10 非理想管型反応器―反応を伴う混合拡散― etp5_10
5.4 物質拡散と反応の複合モデル
例題5.11 触媒有効係数―反応を伴う拡散(球座標)― etp5_12
例題5.12 反応吸収―反応を伴う拡散(1次元)― etp5_13
例題5.13 メンブレンリアクター(触媒の不均一反応) etp5_14
例題5.14 メタンの拡散燃焼 etp5_11

引用・参考文献

読者モニターレビュー【 とんすけ 様(業界・専門分野:化学メーカー)】

業務でCFDを扱う予定があるものの、計算の設定方法が分からず二の足を踏んでいた私にはうってつけの本でした。
単純な流れ解析に始まり、業務に役立つ混相流解析や反応計算までもが網羅されており、着実にステップアップできます。
どの計算も軽量ですぐに収束するので、計算スキームやモデルオプション・パラメータを変更した際の計算負荷や計算結果の相違も簡単に確認でき、手を動かしながら流体解析手法の理解を深めることができそうです。
著者サイトには設定手順・計算結果に加えて解析解あるいは文献結果をまとめたExcelファイルがあるので、結果比較までの模擬OJTを通じて一連の解析業務を学べます。

読者モニターレビュー【 かわうそ 様(業界・専門分野:重工メーカー)】

化学工学における代表的な現象論を流体解析対象として構築し、結果を評価する手法が見に付く良書です。
ただし本を読むだけで解析設定を作成して結果を可視化できるかというと難しく、著者の解説動画が用意されている36例題を優先して取り組むことを推奨します。
一般にソフトウェアベンダーの講習は実務に寄ったものが多く、着目したい現象を基礎的なモデルに落とし込む技能はなかなか習得しづらいため、本書はそういった需要に応えられるものと思われます。
裏を返すと実務上必要となる形状作成・メッシュ作成・結果処理に関するスキルの習得には焦点が当てられていません。この点については著者のウェブサイトにある自習資料集を活用すれば補填できます。

伊東 章

伊東 章(イトウ アキラ)

化学工学,分離工学,膜分離を専門とする。「平板型蒸留塔の熱・物質移動」で工学博士を取得。主に蒸気,ガスの膜分離法開発と膜プロセスのモデル計算に関わる。
主な研究テーマは「シリコーンゴム中空糸膜モジュールの除湿,パーベーパレーション,ガス分離の性能とモデル解析」,「アミン液体膜による空気中のCO2分離法」,「イオン液体の液体膜によるVOC分離法」などである。
教育面では化学工学量論,移動現象論,分離工学などの講義を担当し,その講義内容を「ベーシック分離工学」,「Excelで気軽に化学工学」,「Excelで気軽に移動現象論」などの教科書とした。これらの教育資料はホームページでも公開している。

大川原 真一

大川原 真一(オオカワラ シンイチ)

化学工学を軸に、数値流体力学(CFD)、微細加工技術、3Dプリンター、データサイエンス、人工知能などを積極的に取り込み、社会実装が可能な技術の提案を目指している。
触媒充填層反応器、マイクロリアクター、微粒子を分離・分級するためのマイクロ流体デバイス、集光太陽光パネルの冷却装置などにおいて、熱と物質の移動速度と移動が起こるスケールを目的に応じて適切に制御する構造化のコンセプトに基づき、CFDモデリングにより反応器や流体装置の性能を強化する研究をしている。

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