データ活用型プロジェクトのマネジメント

データ活用型プロジェクトのマネジメント

  • 日下部 貴彦 阪急阪神HD(株)データアナリシスディレクター 博士(工学)

プロジェクトに関わるすべての人を対象に,ビッグデータの分析・活用に必要な知識を網羅。

ジャンル
発行年月日
2024/03/27
判型
A5
ページ数
192ページ
ISBN
978-4-339-05281-7
データ活用型プロジェクトのマネジメント
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定価

3,190(本体2,900円+税)

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  • 内容紹介
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  • 広告掲載情報

【読者対象】
データを活用するプロジェクトに関わる実務者・研究者・学生

【書籍の特徴】
本書では、データ分析や活用を行うプロジェクトを成功に導くためにプロジェクトメンバーが共通的に持っておくべき基礎知識を網羅的に取り扱うことに主眼をおいた。筆者が、大学での研究や民間企業での『データ分析ラボ』創設の実務で必要となった分野横断的な知識を一冊にまとめ、データ活用を行うために必要な一連のプロセスの実践に必要となる知識を整理した。

【各章について】
1章「序」:データサイエンティストを取り巻く状況とプロジェクトの関係を解説したのち、本書の対象である「データ活用型プロジェクト」を定義し、本書の目的を示す。

2章「データ利用の類型と必要なスキルセット」:データ利用の観点から見たデータの分類を示したうえで、二次利用を中心としたデータを活用するプロジェクトを実施するために求められるスキルセットについて解説する。

3章「データ活用に関連する法令」:マーケティング等の行動分析や人流分析、調査等で関連が深い個人情報保護法やデータ利用に関連する主な法令、契約等について要点をまとめる。

4章「データ活用型プロジェクト」:プロジェクトに関わるステークホルダー、プロジェクトで必要なロールを定義し、プロジェクトの枠組みやそれぞれのロールの役割を中心に解説する。

5章「データ活用型プロジェクトのマネジメント」:データ活用・分析の個々のフェーズでのプロジェクトの管理について、プロジェクト推進者、データラボ、データ提供者をステークホルダーとし、データラボを中心とした立場での解説を行う。

6章「データ分析の実践」:データの蓄積に必要なデータ基盤やデータ分析の手順などを含んだ「データ活用のための環境」で示したうえで、データ処理やデータクレンジング、基礎分析、探索的分析等の「データの取り込みと基礎分析の実施」、検証分析で必要となる手法や評価指標、その解釈等を含んだ「課題解決方法の提案や施策の検証」について必要な基礎知識をまとめる。

7章「集計・可視化の実践例」:データ分析の例によって、読者の理解を助けることを目的として、「Queensland Household Travel Survey—2020-21」のデータを用いて、可視化及び可視化のためのデータ処理に必要なコードと出力結果を紹介する。

【著者からのメッセージ】
データ分析をはじめとしたデータ活用は、論理的に現状を見極め、合理的な説明・議論に基づいた判断等、経営や施策立案、実施に欠かせない要素である。一方で、プロジェクトの視点でみるとデータ分析は、プロジェクトを成功させるための一つの要素に過ぎないというのも重要な事実である。本書は、データの分析の方法論ではなく、データの活用のためのプロジェクトの手順をまとめた新しい試みである。身の回りにあるデータをどのようなタイミングで誰とどうやって用いるとご自身がかかわるプロジェクトがよりよくなるのだろうかという視点や手元のデータを使ってどのようにプロジェクト化すればよいのかとういう視点を持っている方に是非読んでいただきたい一冊です。

【キーワード】
データサイエンス、データ分析、データ活用、プロジェクトマネジメント

本書は,データサイエンティストや研究者等が実施するデータ分析の領域だけでなく,これを包含するプロジェクト全体に焦点を当て,データ分析・活用を行う際に必要な基礎知識を整理したものである。昨今,産官学のさまざまな組織がさまざまなプロジェクトでデータを収集し,蓄積することが活発に行われており,大学での学術研究だけでなく企業等でのデータ活用の機会も一般化しつつある。一方で,データ活用の際に留意すべき個人情報保護法をはじめデータ利用に関わる制度も整備されてきており,データそのものに対する技術的視点以外にもデータ活用に必要な知識の領域が広がってきている。このような知識が不十分である場合には,コンプライアンス違反や手戻り等のプロジェクト遂行上のリスクに直結し,プロジェクトの成功の妨げとなることが想定される。このような背景から本書では,データ分析や活用を行うプロジェクトを成功に導くためにメンバーが共通的に持っておくべき基礎知識を網羅的に取り扱うことに主眼をおいた。

これまで筆者は,東京大学空間情報科学研究センターでの専任講師・准教授の在任中に,人の流れをはじめとした都市・交通に関わるデータの収集やこれらのデータを利用した研究を実施してきた。この際には,都市・交通分野のデータがさまざまな企業や行政組織によって分散的に収集されていることに起因したデータ入手手続きの煩雑さやデータクレンジング等の技術的課題等,多くの課題に直面してきた。その後,2021年4月より,「阪急阪神ホールディングス(株)の本社に『データ分析ラボ』を創設し,DXプロジェクトの推進を支援する。」という企業内のプロジェクトのもと,ラボ組織を立ち上げ,チームをリードし,データ分析を業務として確立することをミッションとしたディレクターとして活動している。このプロジェクトの当初は,筆者の大学でのデータ分析の経験を活かしてデータサイエンティストを育成することが,ディレクターの業務として期待されていた。しかし,このための環境を整えるためには,データの収集や管理の手順書や業務フロー等を整備し,データ基盤の企画・運営,データ分析を用いた事業部門へのコンサルティング等を実施する必要があった。このように,企業内でデータサイエンスの知見を活かす環境を構成するための一連の業務を担ったが,このために必要な知識は既往の資料等では整理されたものが少なく,知識の習得やステークホルダーへの展開のために,自ら体系的な整理を行うことが必要であった。また,実際のプロジェクトを推進する過程では,ラボ内でのデータ分析に費やす時間と比べて,データの契約や実装,ステークホルダーへの説明に必要な時間が多く,プロジェクトの構成上は,データサイエンティストが分析を行う工程と同等にこれらの周辺にあるプロセスが重要なことを改めて実感した。

そこで本書では,筆者の上記のような経験で得た知見を中心に,データ活用を行うために必要な一連のプロセスに着目し,実践に必要となる知識を整理した。特に,データ分析を担当するデータサイエンティストだけでなく,プロジェクトオーナー,プロジェクトマネージャー,チームリーダー等のプロジェクトを統括する方にも読んでいただくことで,データ活用・分析を伴うプロジェクトの特性や進行方法等についての共通的な知識を形成し,プロジェク
トのより効率的な遂行やより確実な成功に寄与したいと考えて執筆を行っている。なお,本書で示しているプロジェクト構成等の例は,企業でのプロジェクトを中心としているが,プロジェクトの進行については筆者が経験した大学での研究室運営からもヒントを得ており,研究室の主宰者の方などにも是非読んでいただきたい。

本書の執筆にあたっては,山本隆弘氏をはじめ阪急阪神ホールディングス(株)グループ開発室DXプロジェクト推進部およびデータ分析ラボのメンバー,関連する事業会社との取り組みを通じて得た知識・経験が大きな糧となっている。また,(株)ソーシャル・デザイナーズ・ベースの山田菊子氏に,執筆にあたってのきめ細やかなアドバイスをいただいた。親愛なる家族,活動を共にした皆様,コロナ社の皆様をはじめ執筆を支えてくださった多くの皆様に謝意を表します。

2023年11月
日下部 貴彦

1章 序
1.1 データサイエンティストを取り巻く状況とプロジェクト
1.2 従来型プロジェクトとデータ活用型プロジェクトの定義
1.3 本書の目的

2章 データ利用の類型と必要なスキルセット
2.1 データ利用
 2.1.1 データの類型
 2.1.2 データの一次利用
 2.1.3 データの二次利用
 2.1.4 新たなデータ活用
 2.1.5 データの二次利用の利点と活用に向けた方策
2.2 データ活用に求められるスキルセット
2.3 プロジェクトチームに必要なスキルセットの定義

3章 データ活用に関連する法令
3.1 個人情報保護法
3.2 仮名加工情報と匿名加工情報
3.3 データ活用・分析目的での個人情報を含むデータ提供・受領者側の留意点
3.4 データ提供・受領に関わる契約
3.5 データの管理

4章 データ活用型プロジェクト
4.1 データ活用型プロジェクトの定義
 4.1.1 ステークホルダーの定義
 4.1.2 ロールの定義と会議体
4.2 研究機関と企業のデータ活用型プロジェクトの違い
4.3 データ活用型プロジェクトの体制
4.4 データ活用型プロジェクトの推進フェーズ
 4.4.1 現状理解・問題把握フェーズ
 4.4.2 課題設定フェーズ
 4.4.3 施策実施・検証フェーズ
4.5 データ活用型プロジェクトの推進フェーズと従来の改善のプロセスとの関係
4.6 データ活用型プロジェクトのナレッジ管理

5章 データ活用型プロジェクトのマネジメント
5.1 各フェーズでのプロジェクト推進方法
5.2 ウォーターフォール型プロジェクトの管理の基礎
 5.2.1 進捗管理
 5.2.2 課題管理
 5.2.3 変更管理
5.3 アジャイル型プロジェクトの管理の基礎
5.4 データラボの運営
 5.4.1 デイリースタンディング
 5.4.2 イタレーションミーティング
 5.4.3 スプリントレビュー
5.5 現状理解・問題把握フェーズの進行例
 5.5.1 プロジェクトのキックオフと進行手順
 5.5.2 データの仕様確認と入手・実装,分析の実施
 5.5.3 事業担当者に対するヒアリングとレポート
 5.5.4 成果物
5.6 課題設定フェーズの進行例
 5.6.1 課題設定フェーズのキックオフ
 5.6.2 課題設定フェーズのレポート
 5.6.3 成果物
5.7 施策実施フェーズの進行例
 5.7.1 施策実施フェーズのレポート
 5.7.2 成果物

6章 データ分析の実践
6.1 データ活用のための環境構築
 6.1.1 データレイク,データウェアハウス
 6.1.2 ETLによるデータマートへのデータ取り込み
 6.1.3 データマートの実装
 6.1.4 データ分析環境
 6.1.5 分析環境の実装
6.2 データの取り込みと基礎分析
 6.2.1 データ受領時のファイルの同一性チェック
 6.2.2 データの変換
 6.2.3 データマートの実装のためのデータベースデザイン
 6.2.4 データの検証
6.3 現状理解・問題把握の分析
6.4 検証・評価のための分析
 6.4.1 課題解決方法の提案時の検証
 6.4.2 モデルの評価
 6.4.3 モデル評価のための指標
6.5 施策の検証
 6.5.1 A/Bテスト
 6.5.2 DID
 6.5.3 Causal Impact

7章 集計・可視化の実践例
7.1 分析データと環境
7.2 ydata-profilingを用いたExploratory Data Analysis
7.3 集計と可視化
 7.3.1 パッケージとファイルの読み込み
 7.3.2 分布の可視化
 7.3.3 出発場所別トリップ数の集計と可視化
 7.3.4 出発場所別旅行時間の集計と可視化
 7.3.5 トリップの遷移と可視化

付録:データ活用に関連した法令に関する条文
付.1 民法
付.2 令和3年改正個人情報保護法(平成十五年法律第五十七号個人情報の保護に関する法律)
付.3 個人情報の保護に関する法律施行令(平成十五年政令第五百七号)
付.4 平成二十八年個人情報保護委員会規則第三号(個人情報の保護に関する法律施行規則)
付.5 不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)
付.6 デジタル社会形成基本法(令和三年法律第三十五号)
付.7 統計法(平成十九年法律第五十三号)

引用・参考文献
索引

日下部 貴彦

日下部 貴彦(クサカベ タカヒコ)

都市や地域での交通システムの計画・設計・評価や情報提供の方法の改善等に資する観測システム、データ解析及び、シミュレーション手法の構築に関わる研究活動の経験を活かし、都市での様々な活動に関わるデータの活用に向けた活動をしています。阪急阪神ホールディングスではデータアナリシスディレクターとして企業内のデータ分析組織を主宰しており、データによるエビデンスに基づいた施策立案や実施、これらに関連するナレッジの育成により、都市・交通に関連する分野でのデータ活用の社会実装を促進し、よりよい都市機能の構築を目指した活動を展開しています。

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