意思決定を助ける 情報可視化技術 - ビッグデータ・機械学習・VR/ARへの応用 -

意思決定を助ける 情報可視化技術 - ビッグデータ・機械学習・VR/ARへの応用 -

あらゆる業務の意思決定や仮説検証を助けるツールである情報可視化技術の基本からIT業界の各種技術分野への応用に至るまでを紹介。

  • 口絵
ジャンル
発行年月日
2018/04/16
判型
A5
ページ数
172ページ
ISBN
978-4-339-02883-6
意思決定を助ける 情報可視化技術 - ビッグデータ・機械学習・VR/ARへの応用 -
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情報可視化技術はCGやGUIによりデータの理解を助ける技術であり,あらゆる業務の意思決定や仮説検証を助けるツールである。本書は,情報可視化の基本からIT業界の各種技術分野への応用に至るまでを紹介する意欲作である。

「可視化」とは読んで字のごとく,現象や知識を目に見えるようにする技術の総称である。情報処理技術の発達,特にコンピュータグラフィックス(computer graphics, CG)とグラフィカルユーザインタフェース(graphical user interface,GUI)の発達により,コンピュータに蓄積される諸般の情報を親しみやすい形で図形描画し,ユーザ自身の対話操作により情報を取捨選択する技術が1990年頃から多数考案されるようになった。そして「情報可視化」という単語が学術的に用いられるようになり,その技術と課題が2000 年頃までに体系化された。情報可視化のための基本的な視覚表現手法,モデルとなる対話操作手法などは,この体系化によっておおむね定着したといえる。

一般的なユーザが情報を親しみやすく理解し操作するツールとして期待された情報可視化は,2000年頃からその位置づけを大きく変える。2001年のアメリカ同時多発テロ事件,2003年のヒトゲノム計画完了などと時期を同じくして,社会性・緊急性の高い大規模情報に潜む重要な知見を探るための専門業務ツールとして情報可視化は再定義された。それと同時に欧米主要国では,科学技術や政治経済などの諸業務における意思決定や仮説検証のための重要なツールとして,情報可視化に大きく投資するようになった。

情報処理業界ではその後も,さまざまな技術的転換期を迎えている。ビッグデータ時代における新しいデータ解析手段の議論,あるいは第3次人工知能ブームやIoT(internet of things)による産業変革。情報可視化の最新の研究はこのような時流の中で情報技術業界への貢献を目指している。またVR(virtual reality)やAR(augmented reality)の普及による新たなユーザインタフェースと情報可視化との融合により,一般消費者層も含めた幅広いユーザ層に情報可視化を展開する可能性も期待される。

有名な視覚表現手法や対話操作手法の多くがすでに1990年代に発表されていることもあり,ともすれば情報可視化には研究課題が残っていないかのように解釈されやすい。しかし現実には,情報可視化の研究者は世界的には順調に増えており,国際会議の参加者数や国際学術雑誌の投稿数は2017年現在でも減少の兆しを見せたことがない。むしろ情報可視化は「学術コミュニティの国際的な拡大に対して日本人の研究開発者が不当に増えていない技術分野」といってもいいかもしれない。

情報可視化が国際的な学術コミュニティを拡大し続ける根底には,意思決定や仮説検証を重視し,ユーザ自ら情報を探索し判断することでそれを達成しよう,という海外主要国の価値観に一因があると考えられる。それに沿って情報可視化の研究開発も,単に視覚表現や対話操作を追求するというよりは,それらを統合することによって現実問題に対してユーザ主体で解決する手段を構築する方向にシフトしている。このような状況において,意思決定や仮説検証といった主体性ある行動を重視する海外主要国の価値観には見習うべきものがあると考えられる。

本書はそのような情報可視化の基本的な視覚表現技術や対話操作技術を学術研究の立場から紹介し,最近の発展と今後の展望について議論するものである。本書の前半(1~5章)では,すでに確立されている情報可視化手法について紹介する。本書の後半(6~9章)では,近年の情報処理技術を代表する各種技術分野(具体的にはビッグデータ・機械学習・VR/AR)に対する情報可視化のアプローチを紹介し,今後の展開を論じる。

情報可視化を独立した学術分野として解説する書籍は海外には旧来から多数あったが,日本語の書籍は少ない6, 7)。情報可視化に特化した日本語の書籍を執筆させて頂く貴重な機会を得たことに心から感謝するとともに,学術分野としての情報可視化を日本国内に広めるために微力ながらも貢献できればと願う次第である。

本書の執筆において多くの方に協力を頂いた。6章の内容についてコンスタンツ大学(ドイツ)Daniel Keim氏から情報を提供して頂いた。7章の内容についてノートルダム大学(アメリカ)Chaoli Wang氏から情報を提供して頂いた。8章の内容についてモナッシュ大学(オーストラリア)Kim Marriott氏から情報を提供して頂いた。東北大学流体科学研究所からは多くの写真を提供して頂き,特に大林茂氏には多くの協力を頂いた。東京大学生産技術研究所の伊藤正彦氏,産業技術総合研究所メディアインタラクション研究グループの濱崎雅弘氏からはソフトウェアキャプチャ画像の掲載許諾を頂いた。お茶の水女子大学伊藤研究室の内田悠美子氏,井元麻衣子氏,五味愛氏,中澤里奈氏,宮城優里氏,魚田知美氏,林亜紀氏,川本真規子氏,鈴木千絵氏,澤田頌子氏,堀辺宏美氏からは研究成果画像の掲載許諾を頂いた。また矢野緑里氏,宮城優里氏,十枝菜穂子氏,澤田頌子氏には本書の閲読をお願いした。出版にあたってはコロナ社に多くの助言を頂いた。また,出版企画時点には当該研究分野に従事する多くの専門家から貴重な助言を頂いた。本書の執筆および出版を支えてくださった以上の方々に心から感謝の意を表したい。
最後に,筆者と情報可視化との出会いを与えて下さった日本アイ・ビー・エム株式会社東京基礎研究所の関係者各位,筆者が毎日快適に研究教育に専念できる環境を提供して下さっている国立大学法人お茶の水女子大学および理学部情報科学科の関係者各位,筆者に代わって幾多の研究成果をあげてくれているお茶の水女子大学理学部情報科学科伊藤研究室の関係者各位,そして筆者の日常生活を支える家族や友人に感謝の意を表したい。

2018年1月 伊藤貴之

1. 序論:情報可視化の定義・歴史・展開
1.1 可視化の定義
1.2 情報可視化の用途
1.3 情報可視化の定義と歴史
1.4 本書の構成

2. データ構造と情報可視化手法
2.1 チャート:日常生活にみられる情報可視化
2.2 1次元,2次元,3次元データ
2.3 多次元データ
 2.3.1 散布図
 2.3.2 平行座標法
 2.3.3 ヒートマップ
 2.3.4 グリフ
2.4 階層型データ
 2.4.1 ノード・リンク型手法
 2.4.2 空間充填型手法
2.5 ネットワーク
 2.5.1 グラフ描画
 2.5.2 ノード配置問題
 2.5.3 ノードクラスタリング
 2.5.4 エッジ処理
2.6 時系列データ
 2.6.1 狭義の時系列データ:折れ線グラフ,ヒートマップによる可視化
 2.6.2 広義の時系列データ:多次元,階層型,ネットワークデータとの融合
2.7 その他の情報可視化手法

3. 情報可視化の操作と評価
3.1 情報可視化とインタラクション
 3.1.1 情報可視化の操作方法ガイドライン
 3.1.2 システム構築の観点からのインタラクション手法
3.2 情報可視化結果の評価
 3.2.1 評価手法の分類
 3.2.2 学術研究としての評価手法分析
 3.2.3 一般的な実験的評価指標との照合

4. 視覚特性から考える情報可視化デザイン
4.1 視覚要素への変換
4.2 視覚要素を構成する三つの定義
4.3 色を用いた変数表現
4.4 メンタルマップ
4.5 推奨されない視覚表現
4.6 2次元可視化と3次元可視化

5. 情報可視化の適用事例
5.1 ウェブ・ソーシャルメディア
5.2 自然言語処理技術との連携
5.3 計算機リソース管理
5.4 セキュリティ
5.5 生命情報
5.6 地理情報・センシング情報との連携
5.7 マルチメディア
5.8 まとめ:可視化する意義があるアプリケーション分野とは

6. ビッグデータと情報可視化:人間主体型のデータ分析手法の確立に向けて
6.1 ビッグデータの課題と可視化技術
 6.1.1 膨大・高速なデータの可視化
 6.1.2 複合的なデータの可視化
 6.1.3 不確実なデータの可視化
 6.1.4 ここまでのまとめ
6.2 Visual analytics
 6.2.1 分析と可視化の反復によるタスク
 6.2.2 分析と可視化の融合による効果
 6.2.3 Visual analyticsに用いられる分析手法の例
 6.2.4 Visual analyticsと適用分野
 6.2.5 Visual analyticsの課題
6.3 ビッグデータからの意思決定・仮説検証

7. 機械学習と情報可視化:人間と機械の関係を最適化するために
7.1 機械学習のための可視化
 7.1.1 機械学習結果の可視化
 7.1.2 機械学習過程の可視化
 7.1.3 機械学習のための可視化に関する展望
7.2 可視化のための機械学習
 7.2.1 可視化結果生成を支援する機械学習
 7.2.2 可視化結果選択を支援する機械学習
 7.2.3 可視化のための機械学習に関する展望

8. VR/ARと情報可視化:データ分析を現実世界に還元する
8.1 可視化のためのVR/AR環境
8.2 Immersive visualization: VR/AR技術と可視化の融合
 8.2.1 科学系可視化とAR
 8.2.2 情報可視化とVR
 8.2.3 情報可視化とAR
 8.2.4 ここまでのまとめ
8.3 Immersive analytics: 没入的なデータ分析環境の完成形へ

9. 情報可視化の研究開発の展望:「可視化」に続くものはなにか
9.1 「可視化」という学術分野名をリニューアルするとき
9.2 「フレームワーク研究」,「組合せ研究」を重視する
9.3 手段と目的を繰り返し反転させる
9.4 可読化は可視化ではない
9.5 情報可視化の実用事例が可視化されなかった状況を打開する
9.6 人間がデータ理解を先導するために

引用・参考文献
索引

amazonレビュー

伊藤 貴之

伊藤 貴之(イトウ タカユキ)

情報可視化の研究に幅広く従事しています。近年では特に、機械学習やデータサイエンスを支援するための可視化、音楽や絵画の解析のための可視化、人間関係ネットワークの可視化などに取り組んでいます。マルチメディア(音楽情報処理やウェブ関連技術などを含む)、コンピュータビジョン、コンピュータグラフィックスなどの授業も担当し、またインタラクション系の学会の主査も担当するなど、メディアテクノロジー全般に広くかかわっています。

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