腐食抑制剤の基礎と応用 - 高分子化合物を中心に -

腐食抑制剤の基礎と応用 - 高分子化合物を中心に -

環境にやさしい腐食抑制剤(インヒビター)とはどのようなものか,水質との関係から解説!

ジャンル
発行年月日
2023/12/27
判型
A5
ページ数
184ページ
ISBN
978-4-339-06667-8
腐食抑制剤の基礎と応用 - 高分子化合物を中心に -
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定価

3,300(本体3,000円+税)

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本書では冷却水系,ボイラー系のような水誘導装置系で多く用いられている腐食抑制剤(腐食インヒビター)について,高分子化合物類を中心に,その作用機構も含めて解説している。
具体的に
2章では従来からの腐食抑制剤としてモリブデン酸塩,リグニンスルホン酸などについて
3章では天然ポリフェノール系(高分子)腐食抑制剤(タンニン酸,没食子酸など)について,
4章では合成ポリフェノール系高分子腐食抑制剤について,
5章では合成アニオン系高分子腐食抑制剤について,
6章では合成ポリカフェ酸+合成ポリアクリル酸の複合系の高分子腐食抑制剤について,
7章では高分子間コンプレックス系腐食抑制剤について解説している。
また,環境問題の観点から水質と金属腐食の関係についても触れる。

腐食抑制剤(別名,腐食インヒビター)は,従来から,金属の腐食抑制に用いられており,1章の表1.1に示すように,多くの薬剤が検討されている。

ここでは,非常に多用されている冷却水系,ボイラー系などのような水誘導装置系について,下記の1)~6)のように順を追って説明する。
1)従来からの腐食抑制剤(モリブデン酸塩,リグニンスルホン酸など)
2)天然ポリフェノール系(高分子)腐食抑制剤(タンニン酸,没食子酸など)
3)合成ポリフェノール系高分子腐食抑制剤
4)合成アニオン系高分子腐食抑制剤(共重合体も含まれる)
5)合成ポリカフェ酸+合成ポリアクリル酸の複合系の高分子腐食抑制剤(ポリフェノール+ポリアクリル酸,3)+4))
6)高分子間コンプレックス系腐食抑制剤

さらに,それらの興味深い作用機構についても言及する。特に,このような各種水質系において,中性(pH7)環境においては,腐食抑制を行う腐食抑制剤,さらに,アルカリ性(pH11)環境においては,腐食抑制とスケール抑制の相乗的な効果を行う腐食抑制剤が必要となってくる。

また,その腐食抑制剤濃度の低減は,環境問題,資源問題などにおいても,重要な検討課題の一つであり,このためには現状に即した水質と金属腐食の関係を明確にする必要がある。そのためにも,各種の水質因子の影響による水の腐食性の指標である,Langelier指数(飽和指数),Ryznar指数(安定度指数),補正Ryznar指数,Larson指数などが検討されている。そのため,本書では,
7)水の安定度指数と腐食抑制剤との関係
について,一章を設けて説明している。このように,環境問題,資源問題などと非常に密接した「腐食抑制剤(別名,腐食インヒビター)」について,おもに,高分子化合物類を中心に,解説しているので,参考にしていただければ,幸いである。

なお,この分野の書籍は従来ほとんどなく,学協会の総説,解説などばかりであったが,この書籍の重要性を理解し,協力していただいたコロナ社の皆様に心より感謝申し上げる。どうもありがとうございます。

2023年10月
湯浅真

1. はじめに
1.1 水誘導装置とその問題点
1.2 腐食抑制剤の種類と特徴
1.3 水の安定度指数
コラム①安定度指数と安定度定数の違い
コラム②循環水の低濃縮水条件と高濃縮水条件

2. 従来から使用されている腐食抑制剤の効果と問題点
2.1 モリブデン酸塩系腐食抑制剤
 2.1.1 モリブデン酸塩の特徴
 2.1.2 腐食重量減試験
 2.1.3 電気化学測定
 2.1.4 鉄イオンの影響
 2.1.5 鉄イオンに対する対策
コラム③電気化学測定で使用する参照電極
 2.1.6 鉄イオンの影響に対する防止策
2.2 リグニン(リグニンスルホン酸)系腐食抑制剤
コラム④ステンレスが錆さびにくいのは,なぜですか?
 2.2.1 リグニンスルホン酸塩の脱炭素性能
 2.2.2 リグニンスルホン酸塩の腐食重量減試験
コラム⑤リグニンスルホン酸塩の基本構造と構造模型
 2.2.3 腐食抑制機構の解析
 2.2.4 軟鋼の腐食に対するリグニンスルホン酸塩の腐食抑制効果
2.3 そのほかの腐食抑制剤
コラム⑥腐食抑制剤の錯体化学的な見方(その1):HSAB則

3. 天然物ポリフェノール系高分子腐食抑制剤(タンニン酸,(比較として,活性中心の低分子系)没食子酸など)
3.1 タンニン酸などの脱酸素試験
3.2 タンニン酸溶液の紫外・可視吸収スペクトルとpH
コラム⑦腐食抑制剤の錯体化学的な見方(その2):配位子の強さ
3.3 タンニン酸使用時の腐食重量減試験
3.4 タンニン酸の電気化学的測定,物理化学測定,表面分析
 3.4.1 電気化学測定
 3.4.2 表面分析
コラム⑧腐食抑制剤の錯体化学的な見方(その3):配位子による影響
 3.4.3 錯形成試験
 3.4.4 実験ボイラーでの試験
 3.4.5 タンニン酸の腐食抑制機構の可能性とその検討
コラム⑨マルトオリゴ糖による脱酸素反応機構
3.5 タンニン酸の腐食抑制効果

4. 合成ポリフェノール系高分子腐食抑制剤
4.1 脱酸素試験
4.2 腐食重量減試験
 4.2.1 室温常圧における腐食重量減試験
 4.2.2 高温,高圧条件での腐食重量減試験
 4.2.3 ボイラー試験
4.3 物理化学的測定
 4.3.1 分極曲線
 4.3.2 自然電位の経時測定
 4.3.3 交流インピーダンス測定
4.4 全有機炭素測定
4.5 電気化学測定および表面分析
 4.5.1 室温常圧での電気化学測定および表面分析
 4.5.2 高温高圧での電気化学測定および表面分析
4.6 合成ポリフェノールの腐食抑制効果
コラム⑩ポリフェノールといえば,「抗酸化食品因子」

5. 合成高分子腐食抑制剤(カチオン系,共重合体系も含む)
5.1 腐食速度と腐食抑制率
5.2 重合体ごとの検討
 5.2.1 単独重合体の検討
 5.2.2 二元共重合体の検討
 5.2.3 三元共重合体の検討
コラム⑪多用されるポリアクリル酸およびそのナトリウム塩
5.3 ポリアクリル酸系腐食抑制剤の物理化学的測定および表面分析
 5.3.1 LC水条件の場合
 5.3.2 HC水条件の場合
5.4 高分子の分子構造と腐食抑制能
コラム⑫ポリビニルピリジン塩酸塩の腐食抑制剤

6. 合成ポリカフェ酸と合成ポリアクリル酸の複合系腐食抑制剤(ポリフェノール+ポリアクリル酸(4+5)の複合系)
6.1 腐食重量減試験
 6.1.1 LC水条件の場合
 6.1.2 HC水条件の場合
6.2 物理化学的測定および表面分析
 6.2.1 LC水条件の場合
コラム⑬複合的な合成高分子系の腐食抑制剤・
 6.2.2 HC水条件の場合
6.3 アクリル酸/カフェ酸アミド系二元共重合体およびその類縁体の腐食抑制能

7. 高分子間コンプレックス(PPC)系腐食抑制剤
7.1 コンプレックスの形成確認
7.2 腐食重量減試験および吸着試験
 7.2.1 LC水条件の場合
 7.2.2 HC水条件の場合
7.3 電気化学的測定,物理化学的測定および表面分析
 7.3.1 LC水条件の場合
 7.3.2 HC水条件の場合
7.4 高分子間コンプレックス(PPC)系腐食抑制剤の腐食抑制能
コラム⑭合成高分子間コンプレックスの誕生

8. 水の安定度指数と腐食抑制剤との関係
8.1 安定度指数~水質因子(シリカと塩素イオン)~腐食性
 8.1.1 試験溶液
 8.1.2 腐食重量減試験
 8.1.3 安定度指数や腐食速度に及ぼすシリカおよび塩素イオンの影響
8.2 安定度指数の補正
8.3 安定度指数の数値解析
8.4 水の安定度指数と腐食抑制剤との関係
コラム⑮数値解析の思い出

9. おわりに
引用・参考文献
索引

書評掲載 Chem-Station(略称:ケムステ)様HP 化学書籍レビュー(2024/1/23) 掲載日:2024/01/25

上記リンク先にレビュー記事がございます。

掲載日:2024/03/19

『現代化学』2024年4月号

掲載日:2024/03/18

月刊『化学』2024年4月号

掲載日:2024/01/30

日刊工業新聞広告掲載(2024年1月30日)

掲載日:2024/01/17

腐食防食学会誌「材料と環境」第73巻1号

掲載日:2023/11/02

化学工学会誌「化学工学」2023年11月号